LONG
□ep15
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なまえに気持ちを告げたその日、部活帰りに近所の公園で彼女を見つけた。
ベンチに腰掛けて、俯き加減の彼女に声をかけることはできなかった。
俺がエリカではなく、なまえを選んでいれば、飛雄に取られずに済んだのだろうか。
最後まで自分の気持ちを誤魔化して、結果両方を傷つけて失った。
寒空の下、1人でいる彼女を抱きしめたかったが、グズグズと悩んでいる間に飛雄が現れる。
飛雄に手を引かれて家路に就くなまえの後姿が見えなくなるまで、その場から足を進めることができなかった。
なまえはもう飛雄と…。
ついこの間まで、手の届くところにいたのに。
「おい、及川」
「あれ、岩ちゃん」
「お前、先に帰ったんじゃなかったのかよ。こんなとこで何してんだ?」
「うん…なまえと飛雄がいてさ。なんか、通りづらくて」
岩ちゃんは辺りをキョロキョロと見渡して2人の姿がないことを確認すると、行くぞと俺に声をかけて歩き出した。
岩ちゃんも俺のことをバカだと思ってい、
「おまえはバカだ」
「岩ちゃん!?」
俺のモノローグに食い気味に返ってきた岩ちゃんの言葉に、思わず後ずさる。
「田所さんとみょうじの間で中途半端なことしてっから、こんなことになるんだ」
「…わかってるよ」
「なんで、みょうじのこと選んでやらなかった。おまえ、そんなに田所さんのこと好きだったか?」
「そんなの…」
あたりまえだよ。
そう言おうとしたが、言葉が続かない。
本当に俺はエリカのこと、好きだったのか?
エリカはとある雑誌編集部で働いていて、駅前で声をかけられたのが最初だった。
スナップを取らせてくれないかと訪ねてきた彼女に、連絡先教えてくれるならいいですよ、なんて軽い返事をして、そうして始まった。
少しずつ連絡を取り合うようになると、社会人ということもあり俺の周りにいる女の子たちとはやっぱり違って。
綺麗だし、優しいし、大人だし、いっか。
そう思った矢先の、エリカからの告白だった。
「今のお前と付き合っても、みょうじは幸せになれないだろうな。影山と付き合うのが正解だ。」
いつにも増して意地悪な岩ちゃん。
俺の親友は、今回ばかりは俺の味方にはなってくれないようだ。
「でも、俺…なまえに告白しちゃった」
「は?」
「避けられてるけど」
小さな希望を持って、気持ちを告げた。
あわよくば飛雄を捨てて、俺のところに来ればいいのに…なんて。
「…ずっと、気持ち誤魔化してたんだよね」
「あ?」
「自分からなまえにあんな関係持ち出したくせに、好きだなんて今更言えないって思ってた」
まったく。
あの頃の自分には、怒りを通り越して呆れる。
そのせいで、彼女がどれだけ泣いていたかも知らずに。
「でも、やっぱり頑張ってみるよ」
「…」
「なまえのこと好きだからさ」
こんな自分勝手な俺を、なまえは選んではくれないかもしれない。
許してはくれないかもしれない。
それでも、やっぱり、俺は、
なまえといたい。
なまえと笑いたい。
なまえと―。
(2015.01.24.)