LONG

□ep13
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ずっとなまえのことが好きだった



徹の突然の告白に、わかりやすく動揺してしまった。
シャーペンが手から床に滑り落ち、カツンと小さな音が教室内に響く。
その音と同時に我に返ると、椅子からすぐさま立ち上がり教室を後にしようと駆け出す。



「なまえ!」



机の間を縫うように走り、扉まで辿り着いたところで腕を掴まれ、徹から離れることは叶わなかったけれど。
今更、何を言い出すの?



「なまえがいなくなって気付くなんて、ほんとどうしようもないけど、でも!」
「やめてよ…」
「好きなんだ」



腕の中に抱き寄せられ、そこから伝わる鼓動のスピードが徹の気持ちが嘘ではないことを告げていた。



「わたしトビオくんと付き合ってるんだよ…?」



わたしがどんな思いで、徹から離れたか知ってるの?
徹といる間も、どんなに…。
頬を暖かいものが伝う。



「わたしだって、ずっと好きだったのに…徹はわたしを選んでくれなかった!」
「…」
「今更遅いよ!」



空は既にオレンジ色で、他の教室は明かりも消えているが外からは生徒の声が聞こえる。
こんなところを誰かに見られたら、また学校中の噂の的だ。



「徹…離して…」



徹の胸を両手でおせば、彼の身体はアッサリと離れた。



「仕事、しなきゃ…徹は部活に行って」
「でも…」
「お願い。1人にして…」



わたしの拒絶の言葉に、徹は諦めて部活へ向かった。
徹に好きになってもらうことをあんなに望んでいたときには叶わなかったのに、どうして今頃…。
気付けば自宅近くの公園にいた。
無意識のうちにここまで歩いて来たようだ。
握りしめた携帯画面にはトビオくんの名前が映し出されている。
わたしトビオくんのこと呼び出した…?



「なまえさん!」
「トビオくん…」



ジャージ姿のトビオくんは少しだけ息を切らせていて、わたしのために慌てて来てくれたのだと悟る。



「ごめんね、ワガママ言って…」
「大丈夫です。送ります」



わたしの手を握って歩き出す彼の背中を見つめる。
徹とのことを知っても、トビオくんはわたしを思って傍にいてくれた。
いつの間にかそんな彼に惹かれて、告白の返事をした。



「ねえ、トビオくん」



わたしはトビオくんが好きだよ。



「なんですか?」
「今日、家誰もいないんだ…」



目の前の男の子がわかりやすく困惑しているのがわかったけれど、止められなかった。



「寄って行って」



(2014.12.27.)

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