LONG

□ep1
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この関係になって、どのくらいの時間が経っただろう。
自分の純粋な気持ちを踏みにじっていることに、すぐに気が付いたのに、後には引けなかった。



「と、おる…!」
「んっ?」
「あっ、だ…ダメ!!」
「ダメなの?やめる?」



自分の背後で律動していた腰が停止する。
薄暗い男子バレー部の部室に2つの上がった息が響く。
この男が手回しを忘れるわけがないとわかっていながらも、誰も来ませんようにと何度も祈った。



「いつもダメダメって、イくのやなの?」
「…や、じゃない」
「じゃあ、大人しくイきなよ」



余計なことを考えるのをやめて、再開された動きに集中すると1分もしないうちにわたしは果て、その少し後に徹もすべてを吐き出した。
立っていることもままならず、床に座り込みそうになるのを徹に支えられ、なんとかパイプ椅子まで移動する。



「大丈夫?」



後処理をしながらかけられた声に、わたしは小さくうんと返事をした。



「ほら、休み時間終わるからちゃんと服着て」



ブラのホックとシャツのボタンを留めてくれる至れり尽くせりの徹に、意地悪を言ってみるのはいつものことで。



「よくこんなことしてバレないよね」
「まあねー」



本当は意地悪にもなんにもならないことは、とっくの昔に知っているのに。



「可愛い子いっぱいいるのに、一人だけなんて選べないでしょ」



徹はウソつきだ。
徹には選んだたった一人の人がいて、わたしは彼女の邪魔をしているだけで、多分何人かいる遊び相手の一人。



「徹…」




好きだよ
何度も伝えようとしたけれど、口からその言葉が出てくることは無かった。



「なに?」
「…なんでもない」
「なにそれ?さ、戻ろうか」



徹に立たせてもらい、部室を後にする。
退出際に耳元で囁かれるのはいつものウソ。



「好きだよ、なまえ」



ウソだとわかっているのに、抗えない自分にも嫌気がさす。
だけど、この一言が、一言だけがわたしと徹を繋いでいてくれる。
最初は純粋に徹のことを好きだったはずなのに。
それなのに、流されていつの間にか徹の部屋にいた。
曖昧な関係のまま身体を許し、今に至る。



「じゃあ、また教室でね」
「うん」



なんてバカな女だろう。



わたしだって、徹の一番になりたかったよ。



(2014.12.11.)

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