Dream
□Armistice
1ページ/1ページ
最近、なんだかわたしの周りの様子がおかしい。
昼休みになると月島くんと山口くんがわたしの席までやってきてお弁当を広げているし、自動販売機にジュースを買いに行った帰りであろう影山くんがまたまたわたしの席までやってきて、何か話があるのかと思いきや、月島くんとバトルを繰り広げている。
「王様、何しに来たの?」
「あン?」
「早く自分の教室に戻りなよ」
「うるせえ!」
どうして同じバレー部なのに、仲良くできないんだろう。
「影山くん、お昼食べたの?」
「おー」
「早すぎだよ。ちゃんとゆっくり噛んで食べなきゃ」
「…おー」
月島くんと仲良くなってもらうためにも、今度お昼を一緒に食べようと誘ってみる。
月島くんも影山くんも眉間に皺を寄せて、お互いに睨み合っている。
「なんで、王様と!」
「こっちのセリフだ!」
顔を合わせれば、喧嘩ばかり。
お兄ちゃんもこの2人には手を焼いているらしい。
ここ最近、わたしもそれを実感しているわけだけれど、どうしてだろう。
気づけば月島くん(+山口くん)と影山くんに囲まれている。
180cmかそれ以上の人たちに囲まれて、迫力はあるけれど、基本的にはみんないい人だ。
「今日、練習観に行くね」
「おう」
「別に王様を観に来るわけじゃないよ」
「んだと、コラ!月島」
「な、仲良くして」
あの裏番長もといお兄ちゃんが困らされているだけのことはある。
HRを終え、体育館へ向かえばすでに2人のバトルが勃発していた。
「山口くん、2人ってどうしてこんなに仲悪いの?」
「いやー…」
事情を知っているらしい山口くんは言葉を濁した。
「あれ、なまえ。また来てたのかー」
「お兄ちゃん!」
入口でシューズを履き替えながら、わたしの名前を呼んだのは大好きなお兄ちゃん。
「菅原さん、お疲れ様です」
「オース、山口。なまえ、遅くならないうちに帰れよ?」
「お兄ちゃん待っててもいい?」
「いいけど…」
お兄ちゃんの了承を得て喜んでいると、いつの間にか月島くんと影山くんに挟まれていた。
2人に圧倒され、壁へと追いやられる。
「お兄ちゃんお兄ちゃんって、ブラコンすぎでしょ」
「おまえ、菅原さんのことどう思ってんの?」
「どうって…お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど…」
「そろそろ兄離れしなよ」
「え、と…」
「帰りは俺が送ってやる」
「王様はさっさと一人で帰りなよ。菅原さんは俺が送るからさ」
2人に詰め寄られて困っていると、突然腕を引かれた。
「お前ら、兄の前で妹口説くなよ」
え、くくくく、くど…!
「ちちちち違うよ!別に口説かれてなんか…!」
わたしは気恥ずかしくなり、2人に背を向ける。
「それに、わたし男の人はお兄ちゃんが一番好きだしっ!」
「…」
「…」
お兄ちゃんの腕にぎゅっとしがみついてそう言えば、背後からため息が2つ。
「とりあえず、休戦協定」
「あぁ」
「先に強敵を倒さないとね」
優しいお兄ちゃんの笑顔があれば、わたしは他になにもいらないよ。
「菅原さん、覚悟してくださいね」
「「え?」」
お兄ちゃんとわたしは月島くんの言葉に、クエスチョンマークを浮かべることしかできなかった。
(2015.01.21.)
天然菅原兄妹が書きたかっただけです。