Dream

□弱点
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「研磨、あれ。」
「なに?」



クロの視線の先には、門柱に寄りかかって俯いているなまえがいた。



「俺、先帰るわ」



後ろ手に手を降って先を行くクロを見送ってからなまえに近づくと、彼女はゆっくりと視線をあげた。



「け、研磨」
「何してるの」
「待ってた」
「もう待ったりしないで」



そう口にした後で、少し冷たい物言いだっただろうかと後悔。
なまえもそう感じたようで、目の奥が揺れていた。



「…ちがう…暗くなるの早いし危ないから」
「…」
「寒いし」



俺が歩き始めれば、なまえは後をついてくる。



「研磨、あの」
「…なに?」
「ごめんなさい」
「…。」
「ごめんなさい」



背後から聞こえる消え入りそうな声を聞けば、観念するしかない。
振り向いてみると、これでもかというくらいに俯いて、涙を隠そうとするなまえがいた。
パタリパタリとアスファルトを濡らす水滴にすぐ気が付いたけれど、なんと言葉をかければいよいものか。



「あー…」



しばらく黙っていると、なまえの方が先に口を開いた。



「研磨…嫌いにならないで」
「…」
「研磨、」
「ならないよ」



俺の言葉に、顔を上げる。
頬に残る涙の跡が、俺の目にくっきりと見えた。



「…あんなことで、嫌いになったり、しない」
「だって!」
「…あの時は、ちょっと、腹が立ったけど…でも、なまえのことは…」
「…」



ここまで言って、しまったと思った。
なまえは次の言葉を待っている。



「…なまえのことは……好き」
「研磨ぁ…」



分かってはいたけれど、言った後で恥ずかしさが込み上げてくる。
謝られたのは俺のはずなのに、どうしてこんな罰ゲームみたいな真似をしなきゃいけないんだ。
泣きながら俺の腕にしがみつくなまえを、歩きにくいななんて思ったけれど、それは言わなかった。



「帰ろ」
「うん」
「…」
「わたしも研磨のこと大好きだよ」
「…知ってる」



俺だって、なまえのこと大好きなんだ。
これからしばらくの間は、絶対に言わないけどね。



(2014.01.08.)









「データ、消しちゃってごめんね?」
「もういいよ。セーブしてなかった俺も悪いから…」




研磨のゲームのデータ消したとか、そんなちっちゃな理由で喧嘩しちゃう研磨カップルかわいい。

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