Dream

□主導権は全部キミ
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放課後はいつも体育館へ。
都内でも有数の強豪校である梟谷学園のバレー部の練習を見学するため。
…ではなく、副主将である赤葦京治くんを見るため。



「なまえ〜、また赤葦見に来たの??」
「いいでしょ!」



バレー部のマネージャーにからかわれながら、彼の一挙一動を見つめる。
ボールを追う姿も、主将の世話を焼く姿も全部全部好きだ。



「なまえさん、部活は?」



バレー部の見学にばかり来て、一向に自分の部活へと行く様子のないわたしを心配してくれる赤葦くんも好き。



「もう少ししたら行く…」
「終わるの何時ですか?」
「ギリギリまであるよ」
「そうですか」



それだけ言うと、休憩を終えたのかコートへと戻っていく彼。
こうして普通に会話をするようになるまで少し時間がかかったけれど、この少しの時間がとてつもなく幸せ。
だったのに、



「なまえ!やっぱりここにいた!」



わたしの幸せタイム終了のお知らせ。
体育館へ恐ろしい剣幕で駆け込んできたのは、部活仲間の紗英。
わたしは腕を掴まれ、部室へと連行されるのだった。



「あんたねー赤葦くんが好きなのはわかるけど、部活サボらないでよ!」
「ごめんなさい」
「後輩に示しつかないでしょ」



主将の紗英にこっぴどく説教をされ、その後はしっかりと練習に励んだ。

赤葦くん、部活終わったかな。

赤葦くんを好きになって、常に思考の中心には彼がいて、どんどんとハマる自分が少し怖くなる。



「なまえさん」
「あ、かあしくん!?」
「いっしょに帰りましょう」



部室の扉を開けると、そこには大好きな彼。
いつもと変わらぬ表情で、とんでもない言葉を発するものだからわたしは固まってしまった。



「なまえさん?」
「なんで…??」
「嫌ですか?」



小首をかしげる赤葦くん。
嫌ですか?ってそんなわけない。
そんなわけないけれど、理由が知りたい。



「わたし、こんなことされると期待するよ」
「いいですよ?」



またまた、いつもと変わらぬ表情。
わたしは、その言葉をどう捉えるべきか、必死に考える。



「俺、なまえさんのこと好きなんで」
「うえっ!?」
「うえって…」
「うそだっ!」



わたしは、思わずそんなことを口にしていた。
だって、そんな素振り今まで1度も見せたことないくせに。
赤葦くんがわたしの返事に少しムッとしたのが伝わる。



「じゃあ、嘘でいいですよ」
「え…」
「一緒に帰るのも無しです」
「ま、ま、待って!」



わたしより歩幅の広い彼に追いつくには、駆け足にならざるを得ない。



「あ、赤葦くん!」
「なんですか」
「…さっきの、ほんとに?」
「まだ、疑ってんですか」
「わー!!!信じます!信じます!」



赤葦くんの袖口を掴むと、それに反応して振り返る彼と目が合う。



「帰りますよ」
「うん」



主導権は、全部キミ。



(2015.01.08.)
 

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