Dream

□closed
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朝起きて窓の外を見れば、一面雪景色。
あぁ、一晩中降ってたのか…。
ブルっと身震いを一つして、隣りで寝息を立てる存在にくっつく。



「…あったかい」



頭上に投げ出された手をわたしの枕と並行に移動させ、頭をのせる。
逞しい腕に以前は違和感があったが、今となってはこの腕枕が無い方が違和感だ。
睫毛長い…。
寝顔をまじまじと観察すれば、うーんと喉を鳴らして、こちらに寝返りを打つ。



「お、重い…」



首に回された腕を何とか胸の下まで下ろして、大きく息を吸う。
わたしを抱きしめてくれるこの腕が好き。
わたしを受け止めてくれるこの胸が好き。
優しく笑いかけてくれる目が、わたしの名前を愛おしそうに呼ぶ声が、彼のすべてが

好き。



「徹…」
「…そんなに見ないでよ」
「お、起きてたの!?」



寝転がったまま、ギュッと抱きしめられる。



「徹、部活は?」
「今日は月曜でしょー…祝日で月曜日。サイコー…」



今度は、徹の足が絡んできた。
わたしは身動きが取れなくなるのが嫌で、モゾモゾと身体を動かす。



「なまえも仕事休みでしょ?」
「ん」
「じゃあ…」



徹の手がスルスルと服の中に侵入してくるのをなんとか制止して、体勢を変え徹の胸に顔を埋める。
そうすれば、彼はいつもわたしの頭を撫でてくれる。



「ね、徹。今日、どうする?」
「いや、だからセッ…」
「それ以外!」
「えー」



昨日あれだけしておいて、と高校生の体力と性欲には驚かされてばかりだ。
だけど、今日はそういうのじゃなくて…。



「まったりしよ」
「別にいいけど…それって具体的に何するの?」



なんだろう。



「…二度寝とか?」
「なに?眠いの?」



徹は小さく笑って、自分の胸元にあるわたしの顔を覗き込んだ。



「それでもいいけどね」
「なんか、こういうの…いいね」



朝目覚めて一番に好きな人の顔が見られる。
結婚したら、こんな毎日が送れるのかな。
…なんて、結婚とか…徹高校生なのに。
言ったら絶対に引かれる。



「結婚したら、こんなの普通だよ」
「え?」
「普通だけど、でも、きっと幸せだね」
「…うん」
「なまえ、もう少しだけ待っててね」



…徹。



「うん」
「将来、絶対になまえのこともらいに行くからさ」



躊躇うことなくサラッとそんなことを言う徹に、わたしの方が恥ずかしくなってしまった。
やっぱり、高校生ってすごいな…。



「お、おやすみ!」
「え、本当に寝るの?」
「ね、寝る!」
「えーじゃあ寝る前に…」



首筋に徹の息がかかり、思わず声が漏れる。



「なんだ、なまえもしたいんじゃん」



こいつ、絶対にわざとだ。
わたしが、首が弱いことを知っているから。
後ろを見れば、質の悪い笑顔を浮かべている大好きな人。



「し、しないから!」
「しようよ」



そんな顔したって、絶対にだめなんだから。



「ね?」



だ、だめだもん。



「なまえ」
「…こ、降参」



わたしの白旗宣言に、やった!なんて無邪気な笑顔。
結婚してこんな朝が続くと身体がもたないかもしれない。
だけど、それでも彼と一緒にいる未来を夢見てしまう。

そう遠くない未来、彼の一番近くにいられますように。



(2014.12.22.)

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