警護課

□夢で逢えたら
1ページ/1ページ




「…え〜と…」
今まで味わった中で一番かもしれない気まずさに、うまく言葉が見つからない。
ベッドの脇ではそらさんが、不機嫌この上ない表情で携帯を握り締めている。このまま握りつぶしてしまうのではないかな?と、心配になる位に。

「…桂木さんから…ですよね?」
そらさんは大きく息を吐き「…何で今かなぁ」恨みがましく呟いた。

確かに…と、言ったら桂木さんに申し訳ないのだけど…(そもそも桂木さんの所為ではないと思うのだけど)ホント、よりによって何で今なのかなぁと言いたくもなるのは、実は私も同じ気持ちだったりする。
何しろ、そらさんは上半身ハダカ。私は…キャミソールと下着だけの状態で、そしてここはベッドルームだ。

それだけではない、今日が、初めての夜だったのに…

「あの…長くなりそうなんですか?」
「よっぽどの事が起こらなければ、そんなにかからないと思うけど」


ごめん、ちょっとアタマ冷やしてくるね。


と、バスルームへ向かったそらさんの表情は、仕事モードに切り替わりつつあった。




……どうしよう…
帰った方がいいかな…
「あ、あの…」
手早く身支度を整えているそらさんを見上げて、声をかけようとした途中の唇に、軽いキスが落とされる。
「待っててくれる?」
「……はい」
ごめんね、寝てて大丈夫だから。
耳元でそう囁くと、そのまま頬にキスをくれた。
「そらさん…」
「ん、綾ちゃんどうしたの?」
「…いってらっしゃい、気をつけてね」
別に愛の言葉を囁いている訳ではないのに、何だか照れてしまう。
「……」
「そらさん?」
変な事言ったかな?首を傾げてそらさんを見上げると、
「…何かすっげ〜嬉しい。てか、いつもより頑張れそう」
少しの間ぎゅっと抱きしめて、「行ってきます、綾ちゃん」と、頭を撫でて部屋を出て行った。

パタン。

ドアの閉まる音。私は「いってらっしゃい。待ってますね」と、もう一度声をかけ、瞳を閉じる。





                                                    
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ