オリジナルBL小説

□俺は何も知らないのかもしれない
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―――俺は今、好きなやつがいる。







普段は大人しい白石は俺の朗報を聞くとよろこんだ。

「はぁ、初彼女!?」

「…お、おう。」

「よし!俺んち来いよ!祝賀会やろうよ!」

そこまで喜ぶ白石の様子を見て何故か胸が痛む。

「は!?そこまでやる必要あんのか…!?」

「いいだろ、ちょっとくらい彼女の話聞かせろよ。俺すら気づかなかったんだからびっくりだなぁ」
俺らは同じ大学の学科に通っている。2人が出会ったきっかけも、同じ学科だったからだ。

午後の授業を済ますと、白石に連れられてスーパーで一通り食べ物を買い揃えた。

「何買ってんの?」

「鍋。2人でつつこうぜ。あ、大丈夫だよ、長ネギいれないから。」
そういって微笑む。
白石は俺が苦手な食べ物を把握している。
大学でいつもつるむのは白石くらいだから、もうお互い知らないことはないほどだ。

「どうすんの?彼女がもし料理で長ネギとかトマトとかしいたけ入れてきたら」

「勘弁だわ、そんなん。」

俺は苦笑いして、白石をチラリとみる。

少し俯いている気がした。

「なあ、白石調子悪いのか?」

「……え?」

「あ、いや、ちょっと今疲れてそうだったから…」

「何言ってんだよ。元気だって!」

パアッともとの朗らかな笑みを見せる。

この笑顔を見るだけでホッとしてしまう自分がいた。

「そうか?なら、いいんだけど…。」



白石の家につく。
なんだかんだ、白石の家に来たのは玄関先までで中に入ったことはなかった。
家の中は白石のイメージの通り、質素で整った部屋で、机の周りは参考書や本で並んでいた。

「すげぇや。お前こんなに本持ってんだ。」

「図書館で借りるより何度も読み返すの好きだからな。あ、ちょっと座って待ってて!お鍋作るからさ」

「おう、ありがとうな。にしてもすげーよな白石は…料理もできるし、勉強も学科一番じゃねぇか?脳みそがちがうのかもな〜」

「だーかーらーそれいっつもいってるけど、違うっつの。」

少しすると鍋コンロに火をつけ、2人で鍋をつついた。
彼女の話題を終えると、白石は口にする…

「こうやって2人で一緒に飯食べること少なくなるかもね…」

そういって寂しそうに笑った。

「そんな大袈裟な。友達なのは変わんねえだろ?」

「そうだよね。ははっなんか…ごめん」

なんで…なんでそんな寂しそうな顔で笑うのだろうか。

「あ、何か飲み物いる?」

話題を変えるようにして俺に聞いた。

「普通に麦茶でいい」

「わかった。あ、俺は、こっち飲んじゃってもいい?」

「え…」

白石が手にしているものに驚いた。ビールだった。

「お前…あれ、?…」

「ん?なに?あ、駄目?」

「あ、いや、意外というか、…お前どうやって買うんだよ酒…未成年だろ?」

「あれ…?知らなかったっけ?」

「は?」

「僕浪人してるから、坂本より年上」

「……マジか」


知らなかった。

この部屋に本が多いことも、知識の多いことも、…思い出してみれば、そうだった。

俺はコイツのことを知っているようで、知らないのかもしれないと思った。

俺はお前をどれくらい知ってるんだろうな…。

「なぁ、俺も酒飲む。」

「…お前、だってまだ未成年…」

「いいから!」





俺は今、好きなやつがいる。

それは到底思いを伝えられる相手ではなくて…

今はもう別のことで頭いっぱいにしてしまいたくて…
顔くらいしか好みじゃない女と仲良くなった。

そうだ、
思いを伝えて
離れていってしまうくらいなら、
友達のままでいたい…




はず、なのに、
どうしてこれ以上を求めてしまうのだろう。

俺の知らないお前をもっと知りたいと思ってしまう。
知ればもっと好きになることは分かっているのに。


どうしてお前のその寂しい笑顔で胸を痛めるのだろう。
勝手に期待している自分がいる。



どうして

どうして

どうして……






思いが

ぐるぐると駆け上がって

もう

お前との接し方すら

分かんなくなってくる。









続く…かも?
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