book1

□相談
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『はぁ…』


奈々は机に頬杖をつき大きなため息をついている

朝、学校に来てからずっとこんな様子だ


そんな様子が気になっていたのか、手嶋は空いてる前の席を借り、そこに横向きで座り背もたれに肘をつきながら奈々の方へ顔を向ける


「よお明治、ため息なんかついてどうした?」


そう声を掛けた手嶋をちらっと見た奈々はすぐに視線をそらす


『こっち見んな』


そう言う奈々に手嶋は頭にハテナを浮かべ首を傾げる

またため息をつく奈々の様子が気になり顔をのぞき込む


「…大丈夫か?」


パチリと目が合えば、奈々は顔を両手で隠して


『っだから、こっち、見んな!』


と強めの口調に先ほどと同じ言葉を繰り返す


「さっきから見るなってなんでだよー」


笑いながらそう言う手嶋に小さい声で、言いたくないと返す奈々に苦笑を漏らす


「言いたくないなら、無理に聞かないけどさ」


大人しく見るなと言う言葉に従い手嶋は顔をを体と同じ方向に向け教室内を見渡しながら話掛け続ける


「ホントにどうした?明治今日学校来てからずっと様子おかしいぞ?」

『…何でもない』

「そんな状態でか?」


手嶋に指摘されると、自分でも分かっているのか奈々は黙りこくってしまった


「せめてなにがあったかくらい言ってくれよ」


相談くらい乗るぜ?と言う手嶋に奈々は指の間からちらりと見る

ちょうど目が合い、パチンとウインクをする手嶋に奈々はまた顔を隠す


『…じゃあ、言うけど、絶対、絶対こっち見ないって約束して』


じゃないと言わないと言う奈々


「はは、わかったって」


仕方ないと手嶋は完全に視界に入らないように顔を前に向ける

それを確認した奈々が話し出す


『…昨日、考え事してて

そんで、気づいたんだけどさ…』


小さい声で、言葉に詰まりながらそう言ってから少しの沈黙

今声を掛けると話さなくなると手嶋は思いそのまま黙って続きの言葉を待つ


『その…相談しろって手嶋が言うから…それ言うけど…』


奈々の声がどんどん小さくなり、手嶋は耳を澄ます




長い沈黙の後




『それが


手嶋のこと


スキって事で』



消え入りそうな声でそう言う奈々に手嶋は思わず後を向いてしまう

完全に手で顔を覆ってしまっていた奈々は気づいていない

奈々の顔を覆っている手に優しく触れ、手を退かす

その手は意外に力が入っておらずすんなりと退かせ

普段見る事の無い赤い顔をした奈々と目が合い

手嶋はふっと笑った後


「ありがとうな」


奈々の手の平にキスをした




_______


※場所は教室内の休み時間です(笑





 

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