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□桜日和
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シャマルのトライデント・モスキートの活躍…じゃなくて、10代目のお手柄で無事(?)花見の場所を確保。
10代目は楽しそうに桜並木を眺めていらっしゃる。
それはいい。
とても喜ばしいんだけれど。

(…あのバカ、まだこの辺りにいやがるな)



【桜日和】



「10代目」
「ん?なに?獄寺くん」
「…オレ、ちょっと抜けさしてもらいます」
「え……ああ、そっか」

腹をさすって見せれば、納得したような苦笑を浮かべる10代目。
アネキがいるせいでまた腹の具合がよくないと思ってくださったんだろう。
それもあるけれど、今はもうひとつ理由があった。

お優しい10代目に嘘をつくようで心苦しかったけど、正直に言うのも気恥ずかしい。
ぺこっと頭を下げると駆け出した。
どこ行くんだ?と不思議そうな野球バカの声が聞こえたけれど、そんなのは無視だ。



なんとなく。
その程度の、しかし確信めいた勘に従って並木の奥に足を進めて行く。
すると一本の巨木の下に黒色を見つけ、迷わず駆け寄った。

「何やってんだよ恭弥!」
「……隼人こそ、何やってるの?」

花見はどうしたの?と表情だけで問うその顔を覗き込めば、ぐったりとした疲労が浮かんでいた。
明らかに、先刻強制的に発病させられた桜クラ病とかいうけったいな病気のせいだろう。

「桜ないとこまで行けば平気なんだろ?」
「多分ね」
「何でわざわざ桜の側にいんだよ。オレまでクラクラするんだけど」
「あ…そっか…」

双子の神秘、とかいうヤツなのかどうかは知らないが、オレたちはお互いに影響し合う体質らしい。
相手の体調とか、状態とか、時には感情までもが伝わって来る。
そしてそれに同調することもあって、今オレも恭弥ほどじゃないだろうけど頭に靄がかかったような感覚に陥ってる。

「ごめんね」
「…別にいいけど」

文句は言ってみたものの、さほど気にしてるわけじゃない。
外見なんて全然似ていないオレたちだけど、確かに繋がってる。
容姿をはじめDNAまでもが完全一致する一卵性ならまだしも、普通の兄弟がたまたま一緒に産まれたにすぎない二卵性双生児なのに。
逆にそれだけオレたちの絆が強いことの証のようで、嬉しい。

口では謝りつつも、恭弥も微笑んでるから同じ気持ちなんだろう。
これは「感じる」ことじゃなくて、「わかる」こと。
体質とは別の、生まれた時から一緒にいる特別がもたらす証。
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