ばらかもんたんぺん

□彼女の絵
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「レイ姉ー! 遊びにきてやっちょっと!」

玄関から美和の声が聞こえた。この調子だとタマもいるだろう。

今日は機嫌がいいので自ら率先して二人を迎え入れた。

「あれ、どがんしたと? いつもはガン無視か『時間を巻き戻せる方のみお入りください』とかいうくせに」

「なんだか機嫌いいね」

いつもはイラつく美和の発言だが、今日の私は一味違う。大人の余裕を見せて、腕を組んだ。

「ふふん、ついさっき油絵が完成したんだよ」

おおー、と二人から歓声があがった。

「見せち!」

「私も見たーい!」

遠慮なく家に上がって奥に突き進んで行く二人。これにはちょっと真顔になった。

「どれ? どこ?」

なんて辺りを物色し始めるものだから、すっかり私の上機嫌も息をひそめてしまった。

「それ。絶対に触っちゃダメね」

私が指差したところは、窓際。そこに一つのカンバスが、窓に向かって台に置かれていた。

はしゃぎながら絵のほうへ回り込んだ二人は、私の絵を見るなり「おおおお……」と感嘆の声をもらす。

「綺麗な色……」

「私絵とか全然わからんちだけどこれがすごいことはわかる」

そんな二人の感想は嬉しかったが、なんだか素直に喜べなかった。

「ん? レイ姉どうしたの? 褒められたにしてはレイ姉らしさが出てないよ?」

タマが心配そうにこちらを見てきた。

いや、褒められた時の私ってそんな特徴的なの。

「なんでもないよ」

首を緩く横に振った。タマは首を傾げる。

「そーだ! これ先生たちにも見せよ!」

突然叫んだ美和が、乾いたばかりの私の絵を引っつかんで窓から飛び出した。

「蚊が入って来るでしょうが美和ぁ!」

「そこ?!」

タマの的確なツッコミのあと、私たちは飛び出して行った泥棒美和を追う。

走り回るほどのものじゃないんだけどなあ。
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