悪役のチケット 1

□16
1ページ/1ページ












臭い……





何かが焼ける様な





気持ち悪い、嫌な臭い





…パチ、パチ





何かがはぜる音





「ゔっ……」



私は目を開こうとしたが、痛みで開ける事が出来ない



「熱っ……」



突然吹いてきた熱風に体をよじらせる





熱い、はぜる音





「火事…!?」



まだまだ山火事の季節ではない



そうなると



「あいつらッ……!」



あの男達が火を放った……!!



「う…ッ」



はぜる音がすぐそばという事は、火が近くにある

火から逃げなければ



私はなんとか立ち上がり、海に向かい、走り出す



「はっ、はっ」



目が使えない今、感覚を頼りに走る





「あ゙っ!!」





火にそのまま突っ込みそうになりながらも走る





「はぁ、はぁ、はぁ」





靴が邪魔になり、靴を脱ぎ捨てる











体中がピリピリと痛い

おそらく体中に火傷をしたのだろう





私の土地感覚が正しければ、海はもうすぐ











―ガッ

「あっ、」

ズシャ



何かにつまずき、地面に倒れる





「うぐ……」





ぬる……





足元に妙な感覚が





鉄の臭いのする、水解き片栗粉のようなぬるりとした……





……あとは……糸……?ピアノ線……?の感触





「…………」



恐る恐る、足で蹴る





ぬりゅ、わさ……





丸い…………





「ひぐぅッ!!!」





“それ”は……人の、頭……!!!





私は人の頭につまずいて転んで足で触っていた!?





「ゔぇぇっ……!!」





吐きそうになりながらも私は再び走り出す





怖い、怖い、怖い!





ならばさっきから臭う何かが焼ける様な臭いは





人が焼ける臭い…………!!!





「うぐぉぇ………っ」





凄まじい吐き気に耐えながら、走る























―ザザァ……




塩の臭い、波の音






着いた……!





海!





「うぁっ!!」

ザバァンッ





急に足場が無くなり、私は海に落ちる





「ごほぉぁっ!」





水面に顔を出し、泳ごうとするも、





海水が体中の火傷に突き刺さるように染み

麻痺したように体が動かない





私は再び海に沈み、



「がふぁッ」



肺の中の空気を吐き出した





息がッ





………体の力が抜けていく



















[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ