悪役のチケット 1
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臭い……
何かが焼ける様な
気持ち悪い、嫌な臭い
…パチ、パチ
何かがはぜる音
「ゔっ……」
私は目を開こうとしたが、痛みで開ける事が出来ない
「熱っ……」
突然吹いてきた熱風に体をよじらせる
熱い、はぜる音
「火事…!?」
まだまだ山火事の季節ではない
そうなると
「あいつらッ……!」
あの男達が火を放った……!!
「う…ッ」
はぜる音がすぐそばという事は、火が近くにある
火から逃げなければ
私はなんとか立ち上がり、海に向かい、走り出す
「はっ、はっ」
目が使えない今、感覚を頼りに走る
「あ゙っ!!」
火にそのまま突っ込みそうになりながらも走る
「はぁ、はぁ、はぁ」
靴が邪魔になり、靴を脱ぎ捨てる
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体中がピリピリと痛い
おそらく体中に火傷をしたのだろう
私の土地感覚が正しければ、海はもうすぐ
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―ガッ
「あっ、」
ズシャ
何かにつまずき、地面に倒れる
「うぐ……」
ぬる……
足元に妙な感覚が
鉄の臭いのする、水解き片栗粉のようなぬるりとした……
……あとは……糸……?ピアノ線……?の感触
「…………」
恐る恐る、足で蹴る
ぬりゅ、わさ……
丸い…………
「ひぐぅッ!!!」
“それ”は……人の、頭……!!!
私は人の頭につまずいて転んで足で触っていた!?
「ゔぇぇっ……!!」
吐きそうになりながらも私は再び走り出す
怖い、怖い、怖い!
ならばさっきから臭う何かが焼ける様な臭いは
人が焼ける臭い…………!!!
「うぐぉぇ………っ」
凄まじい吐き気に耐えながら、走る
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―ザザァ……
塩の臭い、波の音
着いた……!
海!
「うぁっ!!」
ザバァンッ
急に足場が無くなり、私は海に落ちる
「ごほぉぁっ!」
水面に顔を出し、泳ごうとするも、
海水が体中の火傷に突き刺さるように染み
麻痺したように体が動かない
私は再び海に沈み、
「がふぁッ」
肺の中の空気を吐き出した
息がッ
………体の力が抜けていく
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