悪役のチケット 1

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ドォ…ッ



また、爆発音



地面が揺れ、立っていられなくなり、私は家にしがみつく



メインストリートの状況を見ようと顔をあげ

目に写ったのは











ほぼ半壊の家々



家の壁、道、木に飛び散る赤黒い血



血を流し、もはや肉塊同然の人、人、人











私は何もわからない子供のように



ポカンと口を開けた



頭は、状況を理解している





「島が…襲われた……」





ひゅ、ひゅ、と過呼吸に近い浅い呼吸を繰り返す



肺にまとわりつくような血の臭いに耐えられず



「うっ、ぅぇえっ……」



腹を押さえ、胃からせりあがって来た物を全て吐き出す





わかってる、わかってる



この世界は海賊、山賊の時世



いつ、どこで海賊や山賊が襲って来るのかわからない



わかっていた、知っていた



だが、前世の感覚が頭に染み付いている



虐殺などとはほぼ無関係の生活を送っていた



襲撃、虐殺は世界のどこかの出来事だった



だから今、



目の前の光景を素直に呑む事が出来ない



画面越しにしか見ていななった状況が





受け入れる事が出来ないだけで、状況は理解している脳が



ここにいたらころされる、にげろ、にげろ、にげろ



そう指令して来る



だが私はまだ、逃げられない





「ネア叔母さん……っ」



私はよろ、と体勢を立て直し



ネア叔母さんが働く酒場を目指し、メインストリートを走る





べちゃ、べちゃ





靴が血の水溜まりを踏む度に、不快な音がして

私の着ているワンピースに血が飛び散る



そんな事に構ってはいられない



一刻も早く、ネア叔母さんの元へ行かなければ





メインストリートがY字に分かれる噴水広場にたどり着いた時





「ぎゃははははは!」



下品な男の笑い声が聞こえた



私はとっさに噴水に寄りかかるようにしゃがんで隠れる

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