悪役のチケット 1

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季節は雨季から夏への変わり目


波は穏やか


風は西


日差しは暖か


綿雲が点々と浮かぶ穏やかな日




約束の1年などとうに過ぎ、9歳になったばかりの私





私はその日





地獄を見た











「おぅいティーチ」

「うんー?」



いつものように裏庭で洗濯物を干していた時

ネア叔母さんが私に声を掛けた



「どうしたの?ネア叔母さん」

「アタシさ、島の表の町に仕事行ってくるから留守番できる?」

「おっ、ついに仕事見つけたんだ」

「ふふん、この島で1番儲かる酒場よ」

「おぉ〜〜!」



ネア叔母さんはついこの間、島の裏の町の魚屋で働いていたのだが

魚屋の店長が気に入らなかったらしく

5年間も勤めた魚屋を辞めたらしい



「夜には帰るからさ、棚のクッキー食べて待ってて」

「やった!お土産よろしく!」

「抜かり無いわねぇ、アンタ誰に似たの?」

「絶対ネア叔母さん」

「うーん、25点」

「(ビクッ)」

「ジョーダンよ、いい子にしててね」

「うん!」



ネア叔母さんは手を降り

裏庭に繋がる扉を閉めた





「ふぅ、」



あらかた洗濯物を干し終わり

崖に足を投げ出し

クッキーを頬張っていた



「……………」

ザゴォォォ…



足の下で波が岩場に当たり、砕ける音を聴く



………そうだ、洗濯物干したら山に果物でももぎにいこう


リンゴとみかんがもうなかったはず



よし、そうしよ、そうしましょ



手に持っていた残りのクッキーを口に放り込み


お尻を払いながら立ち上がり、腕をまくった

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