悪役のチケット 1
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出航まで、あと数分
波はいつも以上に穏やかで
空は泣きたくなるほど清みきっていた
港には、大きな商船が停泊しており
数人の島民が商船の見送りに来ていた
「ティーチ、元気にやるのよ」
「うん」
「寝る時は暖かくしてね、それと外出する時はちゃんと上着を着ること、ネア叔母さんに思いっきり甘えなさいね、あと……」
「母さんもういい、もういいから」
それ以上言われたら
また、泣きたくなる
「ティーチ、出航するぞ!」
「あ、はい!」
「母さん、げん…」
「行ってらっしゃい、ティーチ」
母さんにぎゅう、と抱き締められる
「ぅ、うぅ…」
「お腹、出して寝ちゃダメよ」
「う゛ん!!いっでぎまず!!母さん!!!」
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・
商船はメイブルー島をゆっくり、ゆっくり離れて行く
ロヴァ島はまあまあ平和な島で
海軍駐屯地もない
島の規模も大きめで、実を隠すのにはもってこいの島だ
・
母さんの事は心から心配だ
でも、これからの生活に胸を馳せる自分がいた
ッア―、ア―
カモメが啼(ナ)いた