le livre

□You are my Valentine.
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2月になればショッピングモールはバレンタイン一色。
バレンタインカード、カップケーキ、贈答用にあつらえたチョコレート、花にラッピング用紙。
虎徹にとってバレンタインは『女性から男性に告白とともにチョコレートを贈る日』だったから、シュテルンビルトに来たばかりのころは『カップルが愛を確認する日』というのがとても珍しかった。
それも年月の経過と共に慣れ、今は『ワイルドタイガーのファンからカードやお菓子が贈られる日』になった。
一時は両手の指に満たない数のプレゼントしかなかったのが、バーナビーとコンビを組んでから段ボール箱一杯のカードやプレゼントがやってくる。
相棒のバーナビーには段ボール箱数十箱分のプレゼントが来るのだが。

で。
バレンタインである。
虎徹が今いる雑貨屋には、カードとラッピング用品とデコレーション用品があふれている。
誕生日パーティーか!?と突っ込みたくなるような風船まであるのには驚いた。
いつも世話になっていて、仕事の相棒兼恋人にカードでも送るか、と軽い気持ちで店に入ったはいいが、どのカードも愛に溢れた文言が並んでいる。

そりゃ、バーナビーのことは愛している。
自分にとって『最愛の恋人』といってもいい(もちろん『最愛の娘』もいるが)。
だが。
改めて言うとなると…こっ恥ずかしい。
バーナビーはよく愛の言葉をくれる。
それに対して「俺も」と返しているが、こんな日くらい、カードに言葉を託しても良いのではないか…。
(ああ、もう!俺も意気地がない!)
思いきって『これ』というカードを選びだした。

バレンタイン当日。
バーナビーは深夜に近い時間に帰宅した。
例年通りファンから送られてきたカードやプレゼントは大量で、さすがに持ち帰れないのでお菓子は社内の人々に配り、カードだけをもらってきた。
それでも取材先で贈られたプレゼントは断わる訳にもいかず、自宅まで持ち帰ってきた。
そんなバーナビーがリビングに入って見たものは。

パソコン用デスクの上に飾られた、スタンド付ハートの風船。
ラッピングに使うモール。
そしてバレンタインカードとカップケーキ。
カードには『I have a crush on you!』と書かれていた。
それを見て、バーナビーは微笑む。
既成のカードだけれど、虎徹がこれに託した想いが嬉しくて。
バーナビーはプレゼントの紙袋の中から一つだけ取り上げ、ベッドルームに向かう。
ベッドの上には不自然に盛り上がった毛布があった。
「……虎徹さん、何してるんですか?」
だが、毛布の山はもぞもぞと動くだけで返事はない。
「こ、て、つ、さんっ」
毛布の端を思い切って捲ると、虎徹が顔をしっかり隠した。
「どうしたんですか?」
「…バニー、怒ってる?」
「は?」
「いやー、おじさんはしゃぎすぎちゃった」
虎徹がデスクに飾った風船等のことだと思い至る。
「僕に愛を伝えるためにテンションが上がるなんて大いに結構です。しかも『貴方に夢中!』なんて嬉しいじゃありませんか」
もぞもぞと虎徹が毛布から這い出してきた。
「こんなおじさんからカードなんてヘンじゃねぇ?」
「とんでもありません!それと、僕からもプレゼントが」
そう言って紙袋のから花束を取り出した。
それには『Life bigan after I fell in with you』と書かれたカードが添えられている。
「『あなたを好きになってから自分の人生が始まった』って…言い過ぎじゃねぇ?」
「いいえ、僕の正直な気持ちです」
「…何か、バニーから貰ってばかりだな」
「いいんです。僕は虎徹さんの全てを貰ったんですから。僕が虎徹さんに返せるのは、こんな愛の言葉しかありませんけど」
「ばか。十分過ぎだよ」
虎徹は腕をバーナビーに向かって伸ばす。
バーナビーも、虎徹の背に腕をまわした。
「虎徹さん、愛しています」
「俺も。いつもバニーのことを想ってるよ」

Happy Valentine's Day!
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