le livre

□いいふ〜ふ
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昼休み、オフィスのデスクでサンドイッチを頬張るバーナビーの隣で、やはりホットドッグを頬張る虎徹が何やらカタログを捲っていた。
「何か買いたいものがあるんですか、虎徹さん」
「車、やっぱり欲しいと思って」
「車ですか」
「ヒーロー2部がなくなった時に、手放したからなぁ。でも、1部に復帰したし、家族がこっち来た時は車があった方が便利だと思ってさ」
「良さそうなもの、見つかりそうですか」
「いやー、良いなと思うと値段が…」
「ネットオークションも見てみるといい物があるかもしれませんよ」
「ネット…ううう面倒くさそう…」
項垂れる虎徹を見て、しばらく何やら考えていたバーナビーが顔を上げた。
「手伝いましょうか?」
「え、本当か?バニーに手伝ってもらえるなら助かる!」
「今夜、どうです?僕の部屋に来ませんか」
「おう!行く行く!」


「バニーの部屋ひっさしぶり〜」
虎徹の言う通り、二人がバーナビーの部屋で会うのは数週間ぶりだった。
ここのところ、イベントやら事件やらで忙しかった二人はゆっくり互いの部屋を訪れることもなかったのだ。
「虎徹さん、荷物はこちらへどうぞ」
「おう!バニー何から作る?」
「虎徹さんはゆっくりしていてください。今日は僕が作ります」
「ええ〜。せっかくバニーの部屋来たんだからいっしょに作ろうぜ!」
「作ると言ってもタルティーヌ程度ですよ。すぐ出来ますから椅子に座っていてください」
「そうかぁ?悪いな」
バーナビーから受け取ったグラスを片手に、虎徹は上機嫌でお気に入りの椅子に座った。
バーナビーはメインの魚をグリルしながらオードブルを作っていく。
ある程度出来上がって虎徹を呼びにいくと、彼はテーブルに乗っていた住宅情報誌を捲っていた。
「バニー、引っ越すの?それにしても今より部屋数の多い所チェックしたるみたいだけど」
「あ、あの、これは…!」
虎徹の手から雑誌を取り上げる。
「その、これはですね、えっと」
「うん、どうしたバニー」
いつもと違って歯切れの悪いバーナビーの様子に虎徹は首を傾げる。
「あの…その、虎徹さん!」
「はいっ」
「一緒に暮らしましょう!」
顔を上げたバーナビーの頬は赤かった。
「今回のことで思ったんです。虎徹さんに何かあった時や、悩んでいる時に僕はすぐ側にいたい」
「…」
「もちろん、虎徹さんの助けになれる何て思いません。でも、自分が何も知らない、気づかないなんてもう嫌です。ただ側にいさせて欲しいんです」
「バニー…」
虎徹はバーナビーの髪をくしゃりとなでた。
「俺のことそこまで考えてくれてありがとうな。でも引っ越すことはないよ」
「虎徹さん…」
やはり、とバーナビーは思った。
虎徹は自分と同居することは望んでいない。
眉尻の下がったバーナビーの顔を見て、虎徹の手はますます髪を掻き乱す。
「引っ越さなくてもここで十分だ。俺の荷物を整理すりゃ」
「虎徹さん…!」
バーナビーは思わず椅子に座ったままの虎徹に抱きついた。
「ありがとうございます。虎徹さん!」
「バニーちゃん椅子!椅子壊れる!」
バーナビーをたしなめる虎徹は笑っている。
「ああ嬉しいです!…でも楓ちゃんをこちらに呼び寄せることになったらやっぱりもう一部屋いりますよ」
「それはまだいいよ。俺たちのこともさ…まだ家族には言ってないんだし…楓が来るときはゲストルームがあるだろ。あー…でもな〜」
急に虎徹が頭を抱える。
「何ですか」
「楓が泊まりにきて『バーナビー、バーナビー』っていうのかと思うとムカつく」
「僕はかまいませんよ。僕の大切な人の大切な人になついてもらうのは」
「…やっぱムカつく」
年齢不相応に唇をとがらせる虎徹に、バーナビーはちゅっ、とキスをした。
「さあ、夕食にしましょう。食べながら引っ越しの相談でもしましょうか」
「おう!」
「当然泊まっていきますよね」
「…やっぱそうなる?」
「同棲の話をしたばかりなのに当然でしょう!」
「同棲じゃなくて同居!」
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