メテオ
□プロローグ
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あの出来事の発端は、三年前に私が両親と共に母の祖父母が住んでいる町に引っ越して来たばかりの事です。
あの頃の私は体が弱く、人に対してもとても臆病でした。
町に引っ越して来た当時の母は何時にも増して上機嫌になっていて、私は母に対して只々頷く事しかできなかったのですが、状況を察してくれた父が祖父母から世話になるうえに早くこの町に慣れる為に自由に回って来なさい、とそう私に言ってくれたので、私は町を散策することにしました。
屋根がパステルカラーで彩られた色鮮やかな住宅街
青々しい葉をたくさん付けた木々が立ち並ぶ公園
商店街やスーパーから聞こえる高いキーと低いキーが飛び交う賑やかで楽しそうな声
小高い丘に建てられた沢山の本があるであろう図書館
駅員が数名しか見掛けない小さくて淋しそうだけど、どこか可愛らしい駅前
川幅が広く水の中が凄く清んでいて小さな川魚も元気に泳いでいる川河
小・中・高と、基本的教育が受けられる学校や塾等…
何処を見ても他の町にもありそうな至って在り来たりな町でしたが、そこに私の人生の中で初めてお気に入りになった場所がありました。
その場所は、図書館がある北の丘から反対側の南の位置に立つ樹齢千年以上の桜の木と、そこから町全体と見渡せないほど広い海が見れる…それは美しく、とても素敵な場所でした。
そこに私は、今までずっと持っていた…これから出会う友へ送る手紙を入れた木彫りの小箱を自身に掛けていた肩掛け鞄から取り出し、その小箱を偶然見付けた桜の木の洞(うろ)中にこっそり置きました……………。
そして、あの不思議な出来事が起きたのです。ですが、私にとってはそれはとても良い思い出でした。
これは、手紙と小箱が結び付けてくれた“彼等”との出会いと、そのやり取りの間で起きた出来事をそっと見せてくれる……
周りからすれば小さく見えるかも知れませんが…
私からすれば人生を変えるほどの大きな物語なのです…………
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