鬼灯の冷徹 長編小説

□第六地獄
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白澤「美優ちゃ〜ん!」


「またですか…」


美優が花街で働くようになって一週間が経とうとしていた


それに伴い、白澤が花街に来る回数も以前より多くなっていた。天国の漢方薬局、うさぎ漢方極楽満月には今日も桃太郎の泣き言が響く


白澤「ねぇ今日仕事終わったら飲みに行こうよ」


「ダメです。また鬼灯様にしばかれますよ」


白澤「大丈夫だって、ちょっとだけだから!ちょっとお話するだけだから!」


「話ならもうしてるじゃないですか。こうして向き合って」


白澤「そうじゃなくてさぁ〜」


「それより天国のお店の方は大丈夫なんですか?ここのところ、毎日数回はここに来てますよね?」


白澤「あぁ、それなら大丈夫だよ。桃タロー君に全部仕事押し付けてきたから」


「それ大丈夫じゃないですよね!?」


白澤「その分お給料はずむよ〜」


相変わらずヘラヘラと喋る白澤


「はぁ…桃太郎さんお気の毒です」


白澤「美優ちゃん桃タロー君の心配ばかりするね、僕の欲求不満度も心配して欲しいな」


「当たり前です!元々桃太郎さんは芝刈りや仙桃のお世話で忙しいのに、更にお店の事も任せるなんて酷いですよ!あとそれセクハラです!」


白澤「アハハ、美優ちゃん結構思い出してきたね〜」


「え?そうですか?」


美優は日を跨ぐ度に色々と知っている事や分かる事が増え、あの頭痛も違和感も無く最近は会ったり話を聞くだけで思い出せる様にもなった


前は知らなかった過去も、今は元々知っていたかの様にさらっと口に出すことも多くなった


それにあの夢、地獄に来てから毎回見るそれは不思議と思い出せないままで、いつももうちょっとの所で消えてしまう


白澤「美優ちゃん?」


「え?あ、なんでもないです」


白澤「なんか悩み事?相談のるよ?」


そう言ってさり気なく手を握ってくる所が女性慣れしてるなぁ、と美優は思った


「結構です」


パッと手を払いのけ、顔を覗き込んでくる白澤から視線を反らす


白澤「ちぇ、美優ちゃんだんだん鬼灯に似てきてるよねぇ」


「えっ?本当ですか?」


白澤「なんで嬉しそうなの…」


「だって鬼灯様って何でも出来るし…私もあんな風に強くなりたいです」


白澤「やめときなよ!あんな冷徹朴念仁!」


「って言うか白澤様、いつまでここにいるつもりですか。私も白澤様がいると仕事にならないんですけど…」


白澤「え〜、もっと美優ちゃんとお話したい〜」


「ダメですってば」


白澤「じゃあ今夜付き合ってよ」


「それもダメです」


白澤「お願い!ちょっとだけだから!ちょっとだけ2人きりでいたいんだ、今日付き合ってくれたら仕事もちゃんとする!」


「……本当に仕事しますか?」


白澤「するする!明日からここに来るの3回だけにするから!」


「1回でもダメです!1日ちゃんと仕事して下さい」


白澤「う…わ、わかった。ここに来るの1日おきにする…!」


「……分かりました。本当に今日だけですよ?」


白澤「やった!」


「でも夜はダメです。あとお酒もダメですよ」


白澤「え?」


「もう少しで休憩なので、待ってて下さい。一緒にお昼行きませんか?」


白澤「うん!わかった!」


白澤は両腕を上げ、全身で喜びを表現しながらお店から離れていった


「なんであんなに私にこだわるんだろう…?」


その様子を見ながら美優は人差し指を口に当て、小首を傾げた
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