原作設定short

□If the sky falls we shallcatch larks.
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「お前は人をイラつかせる天才だな、エレンよ」
ガタン!ドサッ。窓の閉められた暗く狭い室内に布の擦れ合う音が響いた。押し倒された彼が抵抗のつもりか押し倒した男の肩を叩く。
「…何しやがる。離せリヴァイ」
「あ?」
「まだ皆、寝てんだろ…ここじゃまずい」
押し倒した方のリヴァイの眉間にシワが寄る。ただでさえ目付きが悪いのにこれ以上ないほど睨まれてビビらない人間はそうはいない、だが押し倒されたエレンはその一人だ。彼は古株の兵士達を押さえ15歳の若さで調査兵団兵長に抜擢されたちょっとした有名人。多くの兵士の、また、リヴァイの直属の上官に当たる役職だ。リヴァイとは歳が一回り以上離れているがエレンは決して物怖じしない。年上であろうが柄の悪い人物であろうが部下であれば名前も呼び捨てに呼ぶしタメ語も使う。エレン班の一員であるリヴァイに対しても、その態度は一切変えなかった。
「部屋が汚れるのは、リヴァイは嫌なんだろ…地下室か俺の部屋かで」
「誘ったのはお前だろ」
「………」
「こっちは頭にきてんだ。お前みてぇなクソガキにいいように使われるだけでもイライラすんのに、今日一日あんなツラでしつこい視線を向けられたらな…余計逆撫でされるようなもんだ。はっきり口で言え、他の人間に勘づかれんのは好きじゃねんだろ?」
「…ここじゃ、いくらなんでも…まずい。他のやつらに聞かれでもしたら」
「あいつらならもうここにはいねぇぞ」
「は…?」
「何だ知らなかったのか?あいつらが毎晩ここを抜け出して遊び回ってるのを」
「………」
「………」
あいつら、とは同じエレン班の同僚達だ。原則兵士は夜間外出は禁止されている。もしも夜中に出動命令が下れば従う事が出来ないからだ。中にはお忍びで娼婦街に繰り出す輩もいるが、もちろん見つかれば処罰されることになる。規則を破った本人達だけじゃなく、管理不十分としてその上官も。

――ギッ。安っぽい造りだがよく洗濯されたシーツが敷かれた清潔そうなベッドが軋んだ。
少し目を細めたリヴァイがゆっくりエレンに覆い被さっていく。
「言えよ、エレン…"抱いて下さい"と」
「………」
「そのために来たんだろうが…言え。お前の命令なら聞いてやる…なんたって兵長様だからな」
「好きにしろよ」
「………」
「…リヴァイの好きにしろ。やらねぇなら部屋に戻る」
「………お前は、ほんとに…」
眉をつり上げたエレンに真正面から睨まれる。色素の薄い金色の瞳、まるで満月のようだと思ったのをリヴァイは口にはしない。吸い込まれるように顔を近づけ嘲るようにリヴァイは笑いながら
「…人をイラつかせる天才だな」
「…んっ…」
エレンに唇を落とした。


彼は酷く激しく抱かれるのを好んだ。前戯もなくただほぐして突っ込まれ荒々しい欲の擦りあいのようなセックスを好む。それをリヴァイは理解している。
「あぁッり、ば…!あ、それっんんッん、ひゃふ…!」
内部の一点を抉るように攻めればさっきまで生意気に睨んでいた顔もたまらないというようにとろけて。しかし酸欠気味に顔を赤くしながらも、リヴァイの獣染みたセックスにはしっかりついてくる。慣れとは恐ろしい。先日までエレンはここに指を咥えるのも辛そうだったのに。
「んんッん、ぁ、いッ…!!――――ああぁ…っ!」
「は…そんなにいいか、エレン」
「ひゃッあぁ、ああッあ」
ギシギシと悲鳴を上げるベッドに合わせてエレンの嬌声が上がる。汗を拭いながらリヴァイがエレンの腰を掴み皮膚が突き破られるんじゃないかと言うくらいきつく爪をたてた。痛みにエレンの顔が一瞬歪んだが、好きなように激しく揺さぶってやればそれすらも快感に変わるようで。他に人はいないということがはめをはずしたのかシーツをぐちゃぐちゃに握り直しながら高く甘い声を存分に聞かせる。
「あっんん!リヴァッそこ、ばっか…!やめ…!」
「じゃあどこがいいんだ、口で言え。俺に命令しろ」
「…ッぁ、アァッめ…もッ…!」
「命令しろ、エレン…っ。」
突然リヴァイの視線が部屋のドアに向けられる。
「………」
「…る、せぇ…ょ、ひぅ…!」
「っ!?」
ぐいっ!
突然前髪を掴まれ引き寄せられる。掴まれたリヴァイが目を見開き、嘲笑うエレンを睨んだ。
「てめぇ…」
「はは……リヴァイ…黙って腰振ってろよ…」
「………」
「んだよその目…、怒ッあう、ん!!」
「てめぇは…ただ啼いてろ!クソガキ!」
「んんッ!ふ、てめ…ぁ…んぅッあ、も、もッい…いッ――」
「…は…っ…」
ギシ、ギシ、ギシ―!
「――ああぁ!」
一際、甘い掠れた声で啼いてエレンは達した。よほど波が大きかったのか大きく背中を反らし引きちぎられるんじゃないかというくらいシーツを握り締める。余韻の波が押し寄せその度にエレンの体に細かい痙攣が走り抜け中に埋め込まれるリヴァイ自身をきつく締め付けたが、リヴァイは眉を顰めるだけで何も言わずエレンが全ての精を吐き出し終わるまで耐える。
一際大きく震え全て吐き出し呼吸を整えるように、エレンは長い息を吐いた。疲れたように四肢を投げ、はー…はー…と荒い深呼吸を繰り返す。潤んだ目、細く開かれた唇の奥に蠢く舌が何とも妖しい。
「は…はぁ…はー…っふ…ふあ…は…」
「………」
「…り、ば…何、見…?ドア…」
「……」
"ドアが、どうかしたか?"そうエレンが言おうと口を開けた時


「りーばーいー!いるかー!?」
「っ…はぁ…はぁ…」
「……ああ。何だ」
どんどんどん!ドアを激しく叩き向こうから大声で響いたのは呑気な男の声。その声に二人とも聞き覚えがある、エレン班の一人、リヴァイの同僚だ。鈍い動きの虚ろな目で、エレンが口を閉ざしたのを確認し、リヴァイは普段通りの感情のない声で返事をする。
「おぉ…いるじゃんかーなら飲みにいこうぜぇー、これからもう1軒まわろうってみんなと話してたとこなんだよ、ヒック…あ、やべ飲みすぎた…ははは。今、兵長室確認したけどあの坊っちゃんもいねぇみたいだし、久々に朝まで飲めんぜぇ!!リヴァイも飲もうぜぇ!来いよ!あぁそういえば、…ははっ聞けよリヴァイー!さっきな、俺達が飲んでた店にな、あの××商会の奴らがいたんだけどよー、ほらリヴァイも知っでっだろ?エレンの親んとこのすっげー権力と金のあるさぁー…まぁ、その会長がぁ…なんと…」
「……は……はぁ…」
「………」
××商会…悪どい噂が耐えないが幅広く顔が利き、主に憲兵団との癒着が強い品物の卸問屋だ。金に物を言わせ一般の輩では唯一兵団への発言権を許されている。そして
エレンは××商会会長の一人息子、時期××商会会長でもある。
「ぶふっ何とあのエレンが…会長の愛人だったんだってよー!し、しかもぶふっその会長、今もエレンに気があるらしくてそれであいつ兵長の座に抜擢されたらしいぜー!?ぎゃはは、ひひッゲホッ!!…ぁ、やべぇ…腹いてぇ…ひひ、女みてぇな顔してんなぁとは思ってたけどな、まさかたらしこんでの兵長就任とはなぁ…あぁやべぇ笑えるっぶふー!!」
「…はぁ…は…」
「………」
「は、ひひひ…はぁ…おいリヴァイ聞いてんのかよ?なぁ」
ガチャ!

(っ!)
(しっ…黙ってろ、エレン)

「なぁんだよ、鍵なんかかけやがって…ヒック…なぁー飲もうぜぇ!!お前最近付き合い悪りぃぞー!聞いてんのかよーっ」
「………」
「ああ…聞いてる。俺はもう寝る、一人で勝手に行け」
「ああん?んだその物言いはよ〜誘ってやってんのに
「黙れ」
「うっ…!」

(………)

「さっさと消えろ。俺は眠いんだ」
「…わ、わかったよ…チッ…怖ぇな…」
「………」
「………」

ドスの効いた声て一撃にされぶつくさ言いながら男の足音が遠退いていく。それが聞こえなくなるまでリヴァイとエレンは一言も声を発しない。ちらりとエレンがうかがうような視線をリヴァイに向けたがリヴァイはまだドアの向こうを睨んでいる。
「…なぁ…もう行ったろ…?」
「………」
「…リヴァイ」
リヴァイが顔を向けた。先程のドスの効いた声は嘘のように、無表情でエレンを見る。その柔らかい目に驚いたのか、一瞬エレンの目が泳いだ。
「…愛人なんかじゃない…あれは…あのおっさんの趣味はそうだったけど俺は違う…俺は、関係ない」
「そうか」
「……〜〜っ本当の…息子でもない…」
「そうか」
「…抱かれても…ない」
「知ってる」
「……は、やめッさ、わんなよ!ふぇぶ!」
リヴァイの手がエレンの胸に沿われた。そのいやに優しい手つきに途端にエレンが声を荒らげ激しく抵抗する。
ぼふん。あいた手でリヴァイがエレンの頭を枕に押し付けた。
「――嫌だっリヴァイ!てめッ…」
「………」
「こうされんの、嫌なんだよ!!なぁっ」
「黙れ」
「――ん、だと…!っ……」
「………」
殴ろうとし振り上げた手をそのまま、リヴァイと視線を合わせたエレンの動きが止まる。
「………」
「………」

さっきと変わらない表情のリヴァイが黙ってエレンを見つめていた。振り上げられたエレンの手にも気づいているだろうに彼は視線を体で抑え込むエレンからそらさずただ黙っている。
「………」
「………」
先ほど、さっきの同僚に言い放ったのと同じ言葉をリヴァイはエレンに言ったが、その声に怒気はまったく感じられなかった。子供をあやすかのような優しいトーンで言い、エレンを押さえつけるために額に当てられた手にもさほど力は込められていない。だが、それを振り払うことが、今のエレンには出来ない。
視線に耐えられなかったのか、表情を変えたのはエレンの方だった。呼吸が早まりみるみるうちに両目に涙が溜まっていく。悔しそうに唇を噛みながら
「…く、っそ…なんだよ…いつもみたいに腰振れよ!前戯なんかいらねぇんだよ!ち、くしょ…ふ…」
「………」
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