Blood will have biood.

□第二話。
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*重度の流血表現あります。苦手な方は注意して下さい!




「リヴァイ、ちょっと来い」
そう呼ばれてリヴァイは振り返った。案の定、人通りが多い真昼の城内で自分を呼んだのは齢15にしてこの国を治めるエレン陛下だ。王族らしい絢爛豪華な召物と重そうな王冠を頭に乗せ彼は面白い物を見つけたかの如くふくふく笑いながら手招きして階段上からリヴァイを見下ろしていた。
1週間前に大臣が皆処刑されてからというもの城内では甚大な人手不足を招き残された官僚たちは常に慌ただしく次の大臣を決めるのに走り回っている。今、その穴埋めとして、本来兵士職であるはずのリヴァイまでが一官僚として会議に駆り出されている緊急事態なわけだが、本来その原因を作ったのはこの青年なのだ。それなにその本人は現状を見ても我関せず、といったような素振りで気軽に声をかけてくるのだから迷惑極まりない事である。
だが一兵士であるリヴァイに拒否権は与えられていない。素直に会議室に向けた足を陛下の立つ階段へ向ければ青年は上機嫌な声で更に言い放った。
「貢物が届いたんだ。きっとリヴァイに似合うと思うよ」
リヴァイの両耳に付いているピアスがジャラリと音を鳴らした。



「うーんこれもいいなぁ。ルビーにアンモライト…ああトルコ石もいいな。リヴァイさんって黒髪に灰色の目だからどんな色を身に付けても似合っちゃいますよね。悩むなー…うーんどれがいいかなー…」
広い城内、数ある各室のうち陛下の個人的な私室として使用されている一室にリヴァイは通され豪華な装飾が施された椅子に座るよう命令された。頬杖をついて退屈そうに青年を見るがリヴァイに後ろを向く青年はその視線に気づかない。大きなテーブルにめいっぱい並べられた宝飾品に目移りしてそれどころではないらしい。
「今リヴァイさん付けてるのはルビーにシルバーにアメトリンにそれから、ええと…何だっけ、まぁいいや赤、銀、紫、黄色、青…ときたら次は緑かなぁ」
「てめぇは俺をどうしたいんだ…これ以上どこにそんな悪趣味なピアス付けるつもりだクソガキ」
「決まってるじゃないですか耳ですよー。まだ上の軟骨部分は余ってるでしょう」
人前ではリヴァイより国王であるエレンのほうが位は上である。しかし他人がいない空間でそれが逆転するのは二人にとって日常くらい当たり前の事のようだ。重そうな緑の宝石が付いたピアスを一つ持ちエレンがリヴァイの元へ戻ってきた。似合うかどうか確かめるようリヴァイの右耳にそのピアスを寄せる。
罪人と大臣を殺しきってしまった後、暇そうにしていたエレンがようやく見つけた趣味がこれだ。リヴァイの耳を飾る事。何かとリヴァイを呼びつけてはこうして豪華なピアスをリヴァイに付けエレンは楽しんでいた。だが『飾る』のは建前で、ホントのところの楽しみは実は別にあるのだが。

「うん、やっぱり似合います。これにしましょう」
「待て、これ女物だろうが…こんな物付けて外出歩けってか」
「え、だめですか?」
雫型にカットされたエメラルドのピアスにリヴァイは不服らしい。エレンは渋々耳に寄せた手を引っ込める。
「ちぇ。似合うと思うのになー。じゃあこれでいいです」
「じゃあって何だ。投げやりに選ぶんじゃねぇ」
「だってリヴァイさん、どのみち国外出る時はピアスしないでしょう?知ってるんですよ俺のいないとこじゃそのピアス全部外してるってこと。今日だって、会議に行く前にそのピアス全部外して出るつもりだったでしょう?そんなに俺のプレゼントが気に入りませんか。せっかくリヴァイさんの為に、こうして選んでるのに」
「お前はセンスが悪い。見せろ、自分で選ぶ」
「え」
驚くエレンを押しのけ、立ち上がりリヴァイは貢物の置かれたテーブルへ寄る。元より金品には何も興味を示さない男だ、それなのにいつになく積極的な姿勢にエレンは違和感を覚えたが、付けさせてくれるなら、と口に出すのは思いとどまり、リヴァイが選び終わるのを待つ。数秒、品定めするようにテーブルの周りを一周歩き、リヴァイは足を止め
「…」
手を伸ばし、一つ取る。選んだのは別名黒玉と呼ばれる宝石、ジェットで出来た一切装飾を施されていない、シンプルなリング状のピアスだ。

「これがいいな」
「…えー地味ですよ。真っ黒の宝石なんて俺ヤですそんな安っぽいの」
「俺は気に入った。…それに軽いしな」
「ますます安っぽい!リヴァイさんにはもっと豪華な物が似合います、これなんかどうですか?」
「俺が選んだ物にするなら、国外でもこれを付けて行ってやる」
唇を尖らせたエレンの目が一瞬揺らいだ。それをリヴァイは見逃さない。
「どうだエレン」
「…お風呂も、ですか?」
「ああ」
「寝る時もですか?部下の前でも、食堂でも、会議室でもですか?俺とセックスする時も?」
「付けてやる」
「…」
そこまで言い切ってくれるのなら仕方ない。何でそんな安っぽい宝石にこだわるのかは理解出来ないがエレンは渋々、リヴァイに椅子に戻るよう手で招いた。妥協したとの意を込めて。
空気を吸うようにリヴァイは当然の如く椅子に戻り、座り、選んだジェットのピアスを横に立つエレンに手渡す。お互いに心得たもので言葉は無くとも意志疎通に問題は無い。椅子に腰を下ろしたリヴァイの上にエレンは乗り上げ、サイドテーブルへと右手を伸ばした。アルコールが入ったグラスに浸けられた、ニードルを取るために。
「こんなのの、どこがいいんですか?輝きも鈍いし、変に軽いし、樹脂みたい」
「それが気に入ったと言ったろう」
「とか言って俺が選んだ物じゃなければ、ホントは何でもいいんでしょう?」
「まあな」
「ひどいですね。そんなんじゃこっちも優しく出来ないな〜」
エレンの左手がリヴァイの右耳を撫でた。右耳と同様既に耳たぶの下部にあたる耳重には所狭しにジャラジャラとピアスが付けられていたが今回はまだ手付かずの耳輪上部に開けるらしい。狙いを定めたのかエレンが目を細め笑んだ。恍惚の色を浮かばせるその目にリヴァイは呆れて

「…一度でも、優しく開けた事があったか」
「リヴァイさん、もう黙って」

パツンッ

「――…」
「あは…痛かった、ですかぁ?」
皮肉を吐いたが、遮られた。ニードルは容赦なく皮膚を突き破る。
「は、痛そう…ね、リヴァイさん、ねぇ、痛い?これ痛い?」
「痛くねぇわけねぇだろうが…興奮するのは勝手だが、さっさと終わらせろ、変態」
「あ、そんなこと言っちゃうんですか?そんな酷いこと俺に、は、言っ、たら、」
「ッ――…」
「ほぉら…もっと、はぁ…痛い、ですよぉ?ふくく、」
ワザと傷口を痛めるように☓☓しながらエレンはゆっくしとした動作で作業を進めた。どうやらエレンが熱心なのは『飾る』ことより『穴をあける』方のようで、震える息でほんのり頬を染めてるあたりまるで情事の最中のようだ。標的にされたリヴァイにとってはたまったものじゃないが、今ここで何を言っても無駄なのは両耳に開けられた穴の数だけ場数を踏んできた分、重々わかっている。なのでこれといった抵抗もせずエレンが飽くまで待つことにした。
ニードルを抜き、消毒もそこそこ、エレンはリヴァイの耳に彼が選んだ黒いピアスを付けた。濡れたような鈍い光沢が、リヴァイの白い肌と黒髪に相成って存在感を放つ。
「キレイに、付けられましたよ。はぁ、リヴァイさん…リヴァイさん、ホントに何でも似合っちゃうんですね…ピアスも、痛さを耐えるその表情も…ぁッん、ねえ、リヴァイさん、もう俺、はぁ…」
堪らなくなった雌猫の様にエレンがリヴァイの首に縋り付いた。一頻り満足するまでリヴァイを虐げた後エレンが肌を求めるのはいつもの事、ピアスを開けた後は常にこれだ。ただでさえ今リヴァイは忙しい身なので、ねだるエレンに応じる事もあるが最近は断る事の方が多い。だが今回リヴァイはエレンを払いのけなかった。首に顔を寄せるエレンの髪を梳きながらリヴァイは口を開く。
「抱いてほしいのか?」
「わかってるくせに、何で聞くんですか…リヴァイさん、ねぇ、いいでしょう?それともこれ、何かのプレイのつもりですか?」
「前に言ったなエレン、欲しい物は何でもやると。今それを言っていいか」
「ん、いいよ…俺が、ほしいんなら、あげるよ、だからもう、ちょうだい」
「それは、良かった」
その言葉を待っていた。と言わんばかりに、リヴァイが力を込めてエレンの肩を掴み引きはがした。
「ぅわッ…!なん、何ですか?え?」
そして右手に握られていた物を、エレンに見せる。訳がわからず困惑していたエレンだったが、それを見た瞬間驚きに目を見開く。

「…ピアス、ですか?」
「ああ」
「もう一個、付けるんですか?」
「嫌か?」
「いえ、いいですけど。何か、珍しいなって思って。リヴァイさんピアスあんまり好きそうじゃなかったから、今日は随分と積極的だと」
「お前がいいなら、いい。これが気に入った」
「さっきはその地味なのがいいって仰ってたのに、わかんない人だなぁ…でも、変わったピアスですね。輪っかじゃないなんて」
「耳じゃなく、体に付けるものだからな。俺に付けるんじゃねぇんだ、お前には金が似合うと思うが」
「え」
「一番痛てぇのは初めだけだ」
リヴァイの左手が先ほど自分を貫いたニードルに伸ばされ、それを拾い上げ、流れ作業の様にサイドテーブルに置かれたアルコール入りのグラスにニードルの先端を沈める。それを見ていたエレンが状況を理解し抵抗のつもりか体を捩らせたがリヴァイの目の色が変わったのに気付き動きを止めた。先ほどまで呆れたようないかにもつまらないと言いたげな目をしていたのに、今はどうだ。獲物を仕留めようと狙い定めるオオカミのような目ではないか。エレンの背が、その目に煽られゾクリと震える。
今から自分が、リヴァイの手で体に鋭いニードルを、突き立てられる。
そう考えただけで下半身に熱が集まってくる。
「お前のように、わざと痛みを与える様にはしねぇ。出来るだけ優しくしてやる」
「…」
「エレン」
「、いい、ですよ…リヴァイさん、優しくしてくれるなら、ピアス」
「そうか」
「どこに付けるんですか?唇?瞼?…鼻?」
「顔じゃねぇ、見えねぇ所だ」
リヴァイの右手が下へ。首を下り胸を過ぎ、臍を撫でられたどり着いた先。
リヴァイの指が勃ちあがりはじめたエレンの熱に触れる。
「ここに付ける」
少し大きく開かれたエレンの目に見つめられても、変わらぬ表情で言い放った。
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