鬼灯の冷徹

□愛情
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月明かりの下



白澤は鬼灯を待っている









「―…では、何時もの桜の木の下で。」





「分かったよ。遅れるなよ?」





「貴方こそ遅れないで下さいね」







約束の時間から30分が経過した






「((鬼灯のやつ遅いなぁ…何かあったのかな…))」








約束はちゃんと守る鬼灯の事だ







これだけ遅れていると心配になる









「…そういえば、此処で待ち合わせする理由、教えてくれなかったな…」











そんなことを考えていると

聞き覚えのある声がした






「っ…は、白澤さん…遅れて申し訳ないです」



走って来たのだろうか、息切れしていた






「遅いよ!!何かあったかと思った…」








「心配して下さったんですか?」

くすりと笑って白澤をからかう








「…べ、別に心配した訳じゃないから。普段遅れないから…変だな、って。」




「それを心配っていうんでしょうが」


少し顔を紅くし、あたふたと口答えをする白澤を見て

鬼灯から自然と笑みが零れた









「…笑った。」


鬼灯が普段表情を表に出さない為

珍しいとされる笑顔








その笑顔を見られたことが嬉しかったのか





白澤は、へにゃり、と頬を緩めた









「…ところでさ、何の用事なの?」










「…特にはありません」









「じゃあ何で呼んだの?」










「…少し、顔が見たくなっただけです。…嫌でしたら帰りますよ、」




「嫌じゃないよ!」




白澤は慌てて声を上げた









「…どうしましたか、そんな大きな声上げて、」

驚いた鬼灯は目を丸くして白澤を見つめる







「…ううん、何でも。……嫌じゃないから、さ…、もう少し…此処で話していたいな。」



白澤は恥ずかしくなって顔を逸らす。








「…今日はやけに素直ですね。」

そう言いながら、鬼灯は白澤の隣に座り、頭をポン、と撫でた










「…そういう鬼灯も、今日は優しいよね」



そう言い終わると、白澤は鬼灯の肩にもたれ掛かる








「…2人きりの時間くらいは、貴方に優しくしてやってもいいか、と思ったのでね」




2人きり、という言葉が擽ったい。


少し嬉しくなった白澤は







静かに、そっと








鬼灯の唇に自分の唇を重ねた











「っ…はぁ…、…白澤さん?」







不意をつかれて

少し顔を紅くした鬼灯









「…僕の愛情、ちゃんと受け止めてね…?」





耳まで紅くした白澤は、顔を見せまい、と、鬼灯の胸元に顔をうずめた









「…受け止めますよ、貴方だから。」







鬼灯は、くすり、と笑って
白澤の耳に軽く口付けした










いつも喧嘩ばかりだけど









僕はコイツに恋をして










僕の愛情に宛先が出来たんだ














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