紅薔薇U

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「赤原、よくやってくれた。

やはりお前をこの仕事につけて正解だった」

目の前の男はまるですべて自分の手柄だとでもいうかのような、満足げな表情だった。

「0区の住民の管理も問題なく進んでいる。

......どうした?

日本の新たな歴史を作ったというのに浮かない顔だな。

もっと誇らしく思え」

男は立ち上がり、ぽんぽんと赤原の肩をたたく。

しかし、あ、と思い出したような顔をする。

「お前の....息子の件は、残念だった。

赤原陽太、規則を破ったとはいえ、息子の命は何にも代えられんものだ。

冥福を祈る」

一応、気をつかっているのだろう。

それくらいはできるようだ。

「いえ....息子の件は自業自得。

0本部長である私にとっては、恥さらしです」

「....そうか。

やはりお前はそういう男だったな。

ではなぜ、そう嬉しそうでない?」

また、男は問うた。

「....まだ、すべてうまくいってるという状況ではありません。

これからです。

あの秩序のない場所から放たれた獣たちの行動は未知数」

「まあそうだが、そこは君が心配するようなことではない。

あとは政府の政策に任せることだ。

我々はマニュアル通りに獣たちを管理すればいい。

もう責任は感じるな。

それとも、お前が惜しがってるのはあの、紅薔薇のリーダーの死か?」

「はい」

即答だった。

「あの青年は若いながら、恐ろしい才能がありました。

人をまとめる力、リーダーとしての素質。

生きてこっち側にいれば、確実に今の日本を支える人材になれた」

「君がそこまで評価するとは、一度会ってみたかったな。

でも0区のいい素材は生き残っている。

それもまだまだ若い。

これから何にでも化けるさ」

「はい、そこは私も期待しています」

「それよりもだ、ヘウ゛ンに関しての情報が1つも出てこないのは、予想はしていたがまた振り出しだな」

「はい、報告は受けたと思いますが、

タワーから応酬したものからは何の証拠も出てきませんでした。

1人の男、コードネーム "ブロンズ"の遺体は見つかりましたがそれだけで、リーダーたちの聴取に出てきたシルバー、ゴールドと名乗る者の情報は何1つ出てきませんでした」

「関心する徹底ぶりだな。

まあいい。

お前はまたヘウ゛ンの調査に戻ってくれ。

今後も期待しているよ、赤原」

男はまた赤原の肩を叩いた。

赤原は小さく礼をして部屋を出て行った。













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