紅薔薇T


□第四章 A
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「あのミサキって男、何もんだよ。

確かにあのルナって女も強いことは認めるがあの男は半端じゃねぇ。

大人しそうな顔してあの動きと殺気。

恐ろしいぜ」

戦いをみていた、獅子の一人が小声で言った。

「たった10人って聞いてなめてたけどあんな輩がいるとなると、紅薔薇もかなりやばい奴らだな.....」








「ミサキ、あんなにやるやつだとは思わなかったよ。

俺が知ってるミサキはあんなんじゃなかった。

危ねーなあいつ」

そう言ってる割には面白そうなアキト。

「あいつは変わった。

あいつは強い」

それに対して、ケイイチはそう返すだけだった。










「見事だった」

そう言って、ミサキに酒を勧めたのはキシだった。

今は、獅子のリーダーアキトのはからいで、宴会を開いてるところ。

ミサキはどうもと言って酒を受け取り、一口飲んだ。

「気性が荒い奴らばかりですまない。

だけどみんな言い奴なんだ」

キシはそこらを見わたしながら言った。

みんな笑いながら酒を楽しんでいた。

ルナはもう輪の中心にいて、セイラとも仲が良さそうに見える。

「ぜんぜん気にしてないよ。

僕の方がやりすぎちゃったから」

いつもの口調で答えるミサキ。

「....君は、紅薔薇ではどんな立場なんだ?

主要戦力は今日来てないと聞いたが」

「ただの偵察班でただの一組員。

たしかにbQと主要戦力の2人は今はホームにいるよ」

「お前ほどの男がなぜ下にとどまる?」

キシが低い声で言った。

それにミサキはハハっと笑った。

「僕なんかまだまだだよ。

主要戦力の2人は僕より年下だけど化け物並みに強い」

キシは顔を顰めた。

「お前も紅薔薇創立時のメンバーの1人と聞いたが」

「もうそこまで知ってるのか、驚いたな」

相変わらず穏やかなミサキ。

「詮索が好きな性格だからな」

「それは怖い。

でもキシさんこそかなりやるでしょ?」

すこし、ミサキの目が真剣になった気がした。

見透かしたようなその目。

「なんでそんなに低姿勢なの?」

「.....誰かが、こいつらを束ねなきゃいけないんだ。

みんなリーダーであるアキトを尊敬してる。

だからアキトの言うことには絶対に従う。

だけど、こいつらみんな、リーダーの見てないところでは好き勝手やっているのが実情だ。

こんなんじゃこの先.....」

キシの言葉が途切れる。

「リーダーがもし、いなくなるようなことがあれば....とか?」

「え...」

「だってキシの言葉、そういうことでしょ」

冷静にミサキは返す。

「フっ...お前、遠慮ってもんを知らねぇな」

「ごめんなさい、でもそう聞こえたから」

「.....まーな。

そういうことだよ。

俺にとって居場所は緑の獅子、ここだけだ。

俺は緑の獅子に誇りをもってる。

なんとしてでも緑の獅子を守りたい。

...お前らのとこは、もしものことがあっても大丈夫そうだな」

ほんの少し悲しそうな目をして、キシは言った。

「....そんなこと、ない。

紅薔薇だって、ケイイチを失えば崩壊すると思うよ。

どんなに性能のいいエンジンでも、操作するものがいなければ、ただ暴走するだけ。

....みんな弱くて迷うんだ。

その心をうまく束ねる、支えや指標になる存在がなくなれば、みんな壊れる....」

「...そうか」

キシが何か思いつめたように俯いた。

「でも、キシさんならできるよ。

自分のことだけじゃなく、組織の存続のこと、メンバー一人一人のことちゃんと考えれる人だから。

....それに比べて僕は.....。

いや、何でもない。

少ししゃべりすぎたかもね」

その笑みには少し悲しみが見えたように、キシは思った。








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