短編

□君のキスはいつも短い
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冷静に装ってるのに
頭の中では彼との甘いキスを
イメージしている。(変態)

柔らかくて温かくて、
心を震わせるものを。


「…何で前野じゃないんだ」


『剣くんも十分かっこいいのに』


「お前だって結構人気だっただろ」


『それでも剣くんがいいの』


こんなやりとりしてても
恋人同士。
私の素直な言葉に
耳を赤くするこの男。
漫画の編集者、
しかも少女漫画の。
そんな人がこんな単純で
素直な言葉に照れるなんて。


「いつもは素直じゃないくせに」


『剣くんはいつも前野と比べてくるね』


「高3とき付き合ってなかったか」


『それただのウワサだから。
 てか前野なんてヤだよ。あんなナルシ』


「姫子の性格からして、確かに
 前野みたいなタイプは苦手だったか」


『よく分かってるじゃん。
 何で分かってるのに一々言ってくるかな』


「アイツ(勝手に)編集者ブログやって
 顔出ししてるだろ。お前、
イケメンには一応食いつく奴なんだから、もしやって思うだろ。多少…心配なんだよ」


俺、太ってるし。

と付け足した剣くん。


『太っててもその目つきは変わらないじゃん。
 私、そういうキリッとした目が好きなんだ』


「見た目(身体)気にしないのか」


『剣くんならなんでも許したい』


突然唇に触れたのに
もう離れた。


『短いよ、いつも』


「…っいんだよ。これで」


『物足りないんだけど』


「女がそんなこと言うな」


言って、また短いキス。
唇だけだからだよ、満たされない。
これだから、もっともっと、と
彼のクールな顔を見ながら
妄想だけが膨らむ。


『剣くんが物足りなくなっても
 知らないんだから』


「そん時は力ずくで」


『卑怯だ。男って卑怯だ』




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