短編

□線香花火
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夏の風物詩、花火。
私は同じ学校の後輩、若松くんに
線香花火があるので一緒にしませんか、
と誘われ2人だけの花火大会。


「あの、知ってますか?線香花火が落ちる瞬間に願い事を唱えると叶うって話」

『聞いたことはあるけど…?』

「あ、姫子先輩は願い事ってありますか?」

『んー、あるにはあるけど、
 人に教えると叶わないんだって事も知ってる?』

「…! ご、ごめんなさい!」

『あはは、謝らなくていいよ』


中学の時親しくなった若松くん。
野崎くんを慕っているという
可愛い可愛いバスケ部の後輩だ。
もちろん私はマネージャーだった。


「でも、よかったです。姫子先輩がOKしてくれて…。あの時断られてたら瀬尾先輩に無理やり…」

『結月ってば本当に若松くんのこと気に入ってるよね』

「嫌ですよ!何で俺はあんな人に好かれちゃってるんでしょうか!!?俺あの人ちょーー苦手です!」

『結月嫌われてるねー、結月も悪気は(多分)無いから。でも結月って可愛いと思うよ?』

「…俺からすれば…姫子先輩の方が可愛い……あ、」

『?』


みるみる内に赤くなる顔に
可愛さを感じた。

項垂れた頭に手を伸ばす。
思ったよりもさらさらとした
髪にくすぐったい気持ちになった。


「先輩…?」

『可愛いなって思って』

「おっ、男が可愛いなんて嬉しくないですよ!?」

『若松くんは私の可愛い後輩だよ』

「あの、俺は、後輩ってポジションじゃ
 もう満足できません……俺……」


線香花火が焼け落ちて
辺りは薄暗くなった。
それでも若松くんの目はしっかりと見える。


「俺!姫子先輩が好きです!
 もちろん、ちゃんと女性としてです!」

『……っ!』

「…あぁあ…やっと言えた…」

『若松くん、』

「あ!姫子先輩、嫌なら断ってくれていいです。俺、覚悟できてます…っと!」


ネガティブだなぁ、可愛い後輩は。

こんなかわいい事言う後輩の
胸に思い切り飛び込んだ。


「せ、先輩!?」

『私も好きだよ、博隆くん』

「っ!」


私より1つ下なのに
体格は全然彼の方が上だ。
バスケをしている大きな手も
程よい筋肉のついた体も、
すべて男の人を思わせる。
私を包む優しい博隆くんの
腕がとても心地よくて目を瞑る。



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