黒子
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ひらり
ひらり
桜が落とした花びらが硬くて冷たい無機質なコンクリートを覆う春。
朝日が反射してキラキラと輝く銀色の髪が人の間をするりと通り抜けて行った。
その髪の持ち主は整った顔立ちをしており、どこか妖艶な雰囲気のある少年だった。
その様子を教室の窓から赤色の少年が笑みを浮かべて見ていた。そしてその少年の手には一枚の紙きれが握られていた。
銀髪の少年椎名 豹
はいつものように仲のいい友達と会話を楽しんでいたが、ふと視界の端に黄色が写ったのでそちらの方を見た。
そこにいたのはモデルで有名な黄瀬 涼太だった。
「椎名 豹君ちょっと時間いいっスか?」
「別にいいけど…」
豹はいきなり声をかけられて戸惑っていた。黄瀬とはクラスも違うし勿論一度も話した事などない。
周りにいた友達は気を利かせたのかそっと離れて行った。
「じゃあちょっと場所変えてもいいっスか?」
豹は少しうつ向いて考えいた…
しかし豹の顔は笑っていた。しかもその笑みは先程まで友達に向けていたような無邪気な笑顔ではない。
まるで先程までの彼とは別人のようだった。
表情は勿論のこと纏う雰囲気すらも変わっていた。
だが、それは一瞬のことで誰も気づく者はいなかった。
目の前に居た黄瀬でさえも…
暫くして豹は顔を上げ
「分かった。」
それはすでにいつもの椎名 豹だった。
その後黄瀬に連れられ汗の匂い染み付いたロッカーが綺麗に整列している部屋に連れてこられた。
どうやらここは部室のようだ。
中にはすでに数人の生徒がいて豹が入ると一斉に全員の視線が入り口の方に向いた。
その真ん中にいた赤い髪の少年が豹に近づき右と左で色の違う目が豹を射ぬく。
豹はピクリとして少し後ろへ後ずさった。
「直接会うのは初めてだね椎名 豹君」
赤司は一歩前へ出る。
コツン
豹もそれに合わせて一歩下がるがあまり広くない部屋だしかも入り口の近くに立っていたのもありすぐに背がドアにあたった。
「バスケ部に入る気はないかい?」
もう豹との距離は目と鼻の先だった。
豹は何も言えずコクリとうなずいた。
その様子を見て赤司は満足したのか豹から離れていった。
「それは良かった。なら明日から練習に参加してくれ。」
「わ、わかった。話はこれだけかな?」
「そうだね。今日ははこれで終わりだ。」