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こっそりひっそり。
2人だけの秘密。
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02/07(Sun) 05:07
ロビン
気付けば少々焦げ臭い匂い。
目の前にはフライパン。
あぁ、パンケーキを焼いていたのか。
――そうだ、パンケーキを焼いていたんだった。
真っ黒に焦げた片面を持ち上げひっくり返せば、ベチャリと不細工に飛び散りなんとも哀れな造形が焼き固められていく。
火が強すぎた。
あーあ…
( 妊娠してるんだって。彼に“良く似た人”の子を。)
「………なんだよ、もう…」
わからない。
いいや嘘。
嘘っぱち。
あれから用事も無いのですぐに帰宅して。
ゴーストさえ裸足で逃げ出すんじゃあないかってくらい、自分でも心ここにあらずだったのはわかっていた。
3馬鹿オヤジから連絡が来てたけどいつも通り全部無視して。
感情的になった頭で色々考えても間違った仮説に至っては意味も無いし、だとすれば考えごとなんてそれこそしたくなかったし。
列車で寝たからあまり身体は休まらなかったけれど、睡魔も今の僕に用は無いらしく。
帰宅して、シャワーを浴びて、なんとなくそのまま起きていた。
お腹が減り始めて身体が勝手に食事の用意をしていたけれど…少ないな。
こんなんじゃあ足りない癖に、何やってるんだろう。
何やってるんだろう。
彼女は、真実はどれだ?
「…足りない。」
声に出して、だからといって何があるわけじゃあない。
だってね。
彼女の言葉を聞いてすぐに“事態は”理解したんだ。
相手はネエロでは無い。
だったらあんな持って回った言い方なんてしないだろうし第一“彼に似ている人”というのは両者とも僕の知っている人でなければならない。
そうでなければあんな言い方、むしろもっと別の言い回しをしたはずなんだ。
僕と彼女の周辺、ネエロを除外した共通の知人と互いに認識出来ている人で、且つ“よく似ている”と言えば真っ先に思い浮かべたのは勿論フォルテさんとルーク。
見た目以外の話になると他にも数人が候補に挙がるけれど、それが“共通認識”とは思えない。
あの2人は、誰がどう見ても似ていると言うだろう。
それこそ100人中100人が――余程捻くれたヤツでも無い限りは。
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02/07(Sun) 06:01
ロビン
“初恋は実らない”
彼女の言葉には概ね同意。
彼女のお腹の中には多分…フォルテさんの子供が居る。
ルークであるはずが無いし、いつまで経ってもガガさんを迎えに来ないフォルテさんにも納得がいく。
ネエロが何をやってるかなんて興味も無いしどうでもいいというかいっそざまぁみろとさえ思う。
…はぁ。
でもね、やっぱり真実がわからないよ。
現状の“事実”だけを知らされても、あんなツラそうな彼女を見ればそれが果たして望んだことだったのか、その気持ちを利用されて半ば無理矢理な展開になすがままだったのか…はぁ。
サキちゃんには“出来れば誰にも何も聞かないで、胸の内にしまっておいて”なんて先手を打たれてしまったし。
(いずれ君が……巻き込まれるまで、きっとすぐだから――)
あぁ、出来損ないのパンケーキよりもまだ苦い。
今更になってやっと涙が滲んできた。
僕の大好きな彼女は、僕の永遠のライバルに首ったけだっただなんて。
あと20cm背が高くて、笑うとえくぼが出来て、黒髪に青灰色の瞳のハンサムで、…あと20年早く生まれていれば…
酷いよ、あんまりだ。
もうパンケーキなんかいらない。
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確かめようも無い真実は、今目の前にある。
やはり残念なことに知る術は無いけれど。
あれから、生きるために相変わらず仕事をこなす日々を過ごして。
勉強もして。
少しだけ落ち着いた。
この時期は契約本数が増えるからっていうのもあったしね。
それで考えたんだ。
彼女は僕に何を求めたのかって。
ただ吐き出したかっただけかもしれないし、僕をしつこく感じたのかもしれない。
当て馬だったとか、そもそも何も求めてなんかいなかっただとか色々考えられるけどとにかく。
じゃあ僕はどうなんだろう、と。
考えたわけですよ。
そしたら彼女に対して心変わりなんてあるはず無いじゃないかって、そういう結論に至ったから。
好きなモノは好きなんだ。
誰がなんと言おうと。
でも彼女が僕に求めたとすればそれは“変わらぬ関係”だったんじゃないかって。
きっと“友情”とか、そんな。
何が正しいかは正直まだよくわからない。
でもとりあえず、冷えないように彼女の膝に僕の上着を掛けて笑いかけるのは、間違っていませんように、とは思う。
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02/09(Tue) 14:07
時世
ほらね。
フィーネ君は相変わらずアレだ。
心配になるほど、御人好しというか。
アタマ大丈夫かって、思うくらい。
全然大丈夫じゃあない。
大問題。
彼は頭が悪いワケじゃあなく察しもいいハズなのに、思考回路がアレだから。
私とは違うから。
もしか、って思っていたら、これさ。
空調は整っているはずなのに妙に寒々しいこの部屋で。
彼は何も変わらず私に笑いかけてくる。
なんだか、場違いな程に。
それが痛い。
怒ってくれない、誰もね、わかっていても。
そして私はただ温度のない視線を彼に一度だけむけて。
礼もいわずに―――だって何かそれは違うかなって―――ガガさんに向き直った。
「何故、貴方が此所に?」
なんなんですか、仰々しい面子が雁首揃えて?
フィレンツェさんなら寧ろ連れてって、どうぞ。
反省も後悔もしませんよ?
私に何か用ですか、今更。
建設的なハナシなどもはや出来ようはずもないような事態。
今の私は、たとえガガさんでも……まあ尤もガガさんだし大丈夫だろうけど!
っていうかっていうか、そもそも私と話をしに来たワケじゃあないだろうし。
一言だけ言って顔を背けた先がフィーネ君で、なんとなく流石に居心地が悪くて。
「……ごめん」
よくわからないけど、彼にはそう言った。
それからまた我関せずで目を閉じた。
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02/15(Mon) 22:58
ロビン
そりゃあそうよね。
何故“私”がここに?
彼女の疑問はもっともだし実際奇妙な話よ。
あれだけ――あぁもうどうにでもなればいいわ。
久々にどうだっていいと半ば投げやりに自棄を起こして。
だってあんまりだと思わない?
そりゃ考えてはいたわよあれからずーーーっと。
簡単な話じゃあないんだもの。
ルークはあんなだしフィレンツェもあぁでしょう?
シーナちゃんとジョルノから探るような連絡が入ったかと思えば今度はラファエルがこれだもの。
黙って見てるわけに、いかないじゃない。
「…ただ眺めてるってわけにもいかなくなったって、それだけよ。」
そう、今はあまり言葉を口にしないほうが良い。
この場に居る全員が全員、あの時の話を知って疑心暗鬼になることもあり得るから。
でもどうしようかしらね。
結局この空気を察すると大体のことがバレて、というかお察しってトコよね。
だからフィーネちゃんがついてきてくれたのは、不幸中の幸いということなのかしら。
彼なら最後まで彼女の味方であると、そう思い込んでいるヤツも居るみたいだし。
「とにかく、」
「何が“とにかく”なんです?」
「今は黙ってついてきてくれるかしら。話は後で、私が知り得る範囲内なら全部嘘偽り無く話してあげるから。」
「待って。だからどういうこと?何故私がついて行かなきゃいけないんです?」
「海よりも深い事情があるの。それともアナタ、自分独りで赤ちゃんをどうにか出来ると思ってないわよね?“この国”で、“アナタの立場”で、何をどう出来るかなんて考えなくてもわかるでしょ。」
「好きに言えばいい。」
「確かにアナタの赤ちゃんだし私は口出しなんてあんまりしたくないけど、その子にも既に人権と尊厳が有ることを忘れないであげてね。…アナタなら大丈夫だって、思わせてよ。」
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02/16(Tue) 00:21
ロビン
それから直ぐ後にフィレンツェがあの部屋に入り、ややあって。
今は5人の大所帯で移動中。
とはいえ、向かった先はブォーナがいくつか所有するマンションの一つ。
ラファエルが1人ずつ運んで、出迎えてくれたブォーナに彼女は慳貪な瞳を向ける。
すぐに逸らしたようだったけれど、それでもブォーナは相も変わらず優雅な微笑みを湛えていた。
「チャオ、ブォーナ。急にごめんなさいね。ご協力感謝するわ。」
「いいのよ。何も無い所だけど大丈夫かしら?」
「外に出ればどうにかなるわ。大丈夫。」
「そう。…あ、丁度時間だったからお茶を用意してあるの。忙しくなければいかがかしら?」
「…そうね。あぁでも、」
「大丈夫よ、最近はカフェインレスを頂くようにしているの。丁度良いでしょう?人払いもしてあるし、お茶が終われば出て行くわ。」
「………よくわかったわね。素直に驚いたわ。」
「ふふふ。女の勘よ。」
手の甲にキスをして軽く挨拶を。
生粋のお嬢様だから難しい所もあるけれど、案外気さくでお人好しだし心配は要らないハズだわ。
フィーネちゃんが女の子に生まれて、お嬢様として育ったらこんな感じになるのかしら?
なんとなくだけど、似てる部分は大いにあるような。
野郎共がブォーナへ挨拶を済ませ、リビングへ。
死ぬほど座り心地の良いソファに腰を降ろし、当然のごとくロイヤルコペンハーゲンのティーセットを並べられ、彼女が座って一言。
「さぁ、遠慮せず召し上がって。“今は”静かにお茶の時間を楽しみましょう。」
…まったく、空気が読めてるんだか読めていないんだか…
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