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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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10/06(Tue) 04:24
ロビン




「殺さなかったことを、後悔なんてさせないでくれ…」



ラファエルの切実な訴えにも聴く耳なんぞありはしない。

今彼の中で渦巻いているのは裏切りへの制裁か、歪んだ愛の結末か。

どちらにしろ良くないことを考えているのは明白だ。


諦めることなく気長に彼を説き伏せようとするラファエルだけれど、どうやらボスはそろそろ限界と考えているようで。

何せ無駄が嫌いだ、確かにわからなくもない。


だがリゾット君を始末するにはデメリットがありすぎる。

チームの全員を敵に回すようなモノだ、それこそパッショーネにとって痛手でもあり時間も労力もカネも無駄になる。

だからあえて彼は口を挟まないでいるわけだけれど。


普通に考えてわかる、パッショーネなんかより財団の方が遥かに規模はデカく力もある。

その財団の中でも割と地位が高い人間が2人。

その1人が、リゾット君と相対しているのはこの場合当然と言える。

交渉、と呼んでいいかはわからないが…とにかく適任だ。



しかしやはり限界というモノはあるわけで。

ラファエルもリゾット君も私を介して知っているだけ。

説得力があるのは物理的でない力の差のみ。

殺ったモン勝ちの私たちの世界をラファエルはよく理解してはいるけれど、ラファエルの世界をリゾット君は知らない。

だから温度差が生まれ、不信感が生まれる。

少なくとも分かり合えるわけがないと、リゾット君は思っているはずだ。


前のめりだったラファエルは一旦背もたれに体を預ける。

覚悟はしていただろうがこれはそう簡単にはいかない話で。

チラリと私を窺ったボスは、不機嫌を隠しもせずに腕を組んでコメカミを撫でている。

そんなボスを眼球だけで捉えたリゾット君は、次いで私を睨み付けた。



「…………」



何から話そうか。

彼は、私からの言葉を求めている。

片っ端から拒否して叩き落とすのだろうし私に正当性なんてありはしないから。

…ただ、キミと同じ舞台に立ったというだけだ。



「リゾット君、少し…私との会話に付き合ってもらいたい。いいかい。」



無言を都合よく肯定として。

すまないね、そうでもしなけりゃ今度はキミが奈落の底に堕ちてしまうから。





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10/06(Tue) 05:21
ロビン




「きっと今のキミには私がどれだけキミへの情を言葉に乗せて伝えても、聴いて貰えないだろう。だからあえて言葉は選ばない。」



なるだけ順序立てて…なるだけ。

選ばないとは言いつつ、けれどやはり“同族”としては、ね。



「…正直な所、私は彼女をフィオナのようには愛していないよ。」



彼がそれをわかっていたかどうかは問題じゃあない。

事実だけを、淡々と。



「そんな彼女のお腹の中には今、私の子供が居る。3ヶ月だそうだ。」



怒りに青ざめた顔が徐々に色を無くしていく。

今まで震えていた拳が嘘のように止まっていた。



「私は、諦めていた…子供がずっと欲しくてね。こんなこと言うと笑われそうだけれど、小さい頃からの夢だったんだ。何もこの稼業だからじゃない、愛する人が居なくなってしまったから。だから諦めてた。」



数拍の無言に彼は嗤う。



「傑作だな。自分で殺しておいてよくぞ言えたものだ…」

「あぁ笑えないよ。そしてキミもだ。でも今はまだとりあえず私の話を聴いて欲しい。いいね。」



抑揚らしい抑揚などなく、私たちの会話は一旦途切れて。



「最初に求めたのは彼女。それに応えたのは私。一時の過ちで終わるはずだったモノがここまでこじれたのは私と彼女にそれぞれ“理由”があったから。…私たちはね、擦れ違ってるんだよ。同じ速度で、同じ距離だけ。」



キミはこう思った筈だ、子供が欲しかっただけならなにも彼女じゃなくて良かったろうと。



「よりによって。…でもね、彼女だからなんだよ。だって彼女は私を愛していない。私と彼女の温度差は無いんだ。」



彼女は私を利用した。

私も彼女を利用している。

どちらも目的の為には子供が必要で。

労りや思いやる気持ち、感謝や優しさはあれどそこに“男女の愛”は無い。

――結果、引き合う力は五分と五分。

互いにちぐはぐな温度差は無い。



「温度差が生まれればいずれ破綻する。私とフィオナのようにね。…キミはまだ、こちら側に来ちゃあ駄目だ。“生きている彼女”を愛して欲しいと思うよ。」



私と同じ轍を踏ませたくない、勿論それもある。

けれどそれだけじゃあない。



「戯れ言か、高みの見物か。相変わらずだなキミは。」

「なんとでも。」



好きなだけ罵ればいい。

私もまだ、言いたいことの半分も言えていないのだから。





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10/07(Wed) 08:42
時世



具合が悪い、と言ってみようか?

いや、余計面倒くさいことになりそうだ。

やめておこう。

かといって、このまま大人しくしていられるかというとそれもまた無理な話で。



「……手、離していただけます?」

「………」



無言で承太郎さんの横の扉に手をかけたら、まぁ当然止められるワケで。
だが彼はこの部屋で一番、それこそ“関係のない人間”だ。

……どこまで、知らされているかは兎に角?

表情の動かない彼からはなにもわからない。
嫌悪も同情もない。
リゾットみたいな鉄扉面だよまったく。



「せめて、部屋を変えていただけません?出来れば違う階に。
これだけだだっ広いんですから何処か開いてるんじゃあありませんか?」

「生憎だがこの部屋を指定されている。……心配せずとも君は“安全”だ」

「そんなの知ったこっちゃないんですよ、私が“嫌”なんです」



リゾットもだがこの人も眉間の皺が……眼力がな。
私は今更ひるまないけど。
すみませんね、こんなことに巻き込まれておかわいそうに、暇じゃないだろうにね。

……まぁしばらく睨み合うというか視線をあわせて。

というか私は力ずくでも開けたかったのだけど、まぁ彼のスタンドの力の強いこと強いこと!
ドアノブのとこで静かに力比べだよ……尤も敵わないがね。
私は植物、コンクリ割る力はあっても金属はどうこうできない。
畜生、



「オイオイオイオイ、喚くのはいいがな、大人しくしてろ」

「喚き疲れたんですよ」



当然のように想定外の力にドアノブが取れて、
くそ、手首がじんじんするじゃないか。
プロシュートさんがなんか言ってるが知らん。

私はもう、私が誰かを、何かを“選ぶ”なんてこと、したくないんだ。

たとえそれが逃げだとしても、ああ私は今こそ逃げたいんだよ。
誰かが、今怪我をしても私は肩代わりすることが出来ないんだ、今この体に物理的負担などかけられない。
私にはわかるし、その術もあるのに見て見ぬふりをしなくては、ならない。

そんなの嫌だ。

だったら最初から気づきたくない、知りたくない。
でもこんな“近く”にいたら嫌でもわかってしまう。

大体、私が此処にいる意味はなんだ。

嫌だよ、リゾットに会いたくないよ、今更。
どの面さげて。
プロシュートさんにだって会いたくなかったのに。

………いけない、あんまり考えるとストレスやべぇ。



「……ほらね、ロクなことにならない」



欲をだすと、いつだってこうさ、ロクなことにならないんだよ。
求めちゃあいけなかった、わかってるそんなこと。
それでもどうにもならなかったから、こうなって、要は自業自得。

“後悔”なんて、する気はないが。

想定外すぎて、もう……
泣きたいくらいに面倒くさいよ、ほんと、なんでこんなに、大事になってるんだよ………

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01/20(Wed) 05:48
ロビン






「は、ははは…――」



乾いた笑い声だった。

リゾット君は、声を上げ笑う。

そして力無くくつくつと。

やがて何か言おうと口を開いたが、緩く首を振って。



「…いい気分だろう。他人の不幸は蜜の味だと聞くが…」

「わかってないね。悪党でも最近はそんなこと言わないよ。」

「そうか。だがどうだっていい。」

「残念ながら私は良くない。」

「さっさと返せ。」

「“返せ”?キミは相変わらずおかしなことを言うね。いつ誰がキミに所有権があると言った?キミが勝手にそう考えていただけのことじゃないか。」

「喧しい…」

「“最初に見つけたから自分の物”だなんて小学生みたいなこと言い出さないでくれよ。」

「喧しいと言ってるだろう…!!」

「キミはとても賢い筈なのに、どうして彼女のことになると脳筋以下に成り下がってしまうんだ?――いいかい、よく聞いて。」



何てことない、怒りも何もかも通り越せば込み上げくる笑い。

狂ってる。

彼をとやかく言えない立場の私だが、私だからこそわかる部分でもある。

“同族嫌悪”

今の私たちにはお誂え向きな言葉だ、なぁそう思うだろリゾット君。



「…私と彼女は財団へ、ラファエルは組織へ。ラファエルの“身内”である私たちに手を出せばキミはオシマイ。ラファエルに直接手を掛けても同じ。」

「……」

「キミはそれでもお構い無しに奪いに来るだろう。私はそう思ってる。」

「……」

「だったら、来ればいいよ。」

「……ハッ、」



全員の動きが止まった。

ボスも、ラファエルもドラコも。

…いち早く反応を示したのはやはりリゾット君で。



「逢いに来ればいい。ただし殺させはしないよ。」

「意図がわからないな。」

「キミも大概人の話を聞いていないね。さっき私は何と言った?――“愛していない”と言ったはずなのだけど。」



敵意もクソもあったもんじゃない。

だが膨れあがった殺意も一瞬で萎む。



「…誰もキミに“彼女を愛してはいけない”だなんて言っていないんだよ。」



言うと、彼は何かを推し量ろうとしている。

しかし困ったことに、証明出来るようなものは持ち合わせてはいなかったから。



「どういうことかって言うとね、」



窮地に追い詰められた人間なんて、案外シンプルなもんさ。

お互いにね。





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01/22(Fri) 10:43
時世




実際疲れた。


それでなんだかまた泣けてきた。

泣く立場にいるワケじゃあないハズなんだがね、泣けてきたよ。
枯れる程泣いても枯れないんだよな、面倒くさい。
待ち続けて、……罪は自覚していても私はもう潔く死ぬってワケにも、もういかない。

出来ない。

部屋の中を落ち着きなくうろうろして、壁際に陣取って。
確かにこの状況、私の身柄は“今は”安全かもしれないが、信じられるか、誰も、こうなったら。
だろ?

“裏切った”のは私の方からだ。

彼らはフィレンツェさんの為に動いている、けど私はフィレンツェさんがまったく読めない。
そもそも彼という人間を私が読み違えていたから、こうなってしまっているワケで。

……このメンツ、ハナから逃れられるとは思わない。
けど、足掻くのを止めたくはない。
諦め、往生際が悪い、頭も悪い、ついでに疑心暗鬼。

何が一番最良か、私にはもうわからない。

しばらくは大人しく待っていた私だけど、いい加減堪えられない。

でも万が一、この場を逃れられても、その先どうなるワケでもないことはよくわかってる。
もはや“先”はない。
あらゆる意味で“逃げられない”んだ、避けては通れない、それでも私は“逃げたい”の。



「……プロシュートさん、フィレンツェさんて頭オカシイですよね」

「は?」

「案外、バカっていうか頭悪いですよね、何度でも言いますけど」

「……落ち着いたんならこっち来て座ってろ、何度も言わせンな」

「それでもってリゾットもバカですよね、私は子供が欲しかっただけなのに」



半分ほんと、半分うそ。
フィレンツェさんを選んだのには二つの理由があった。



「私、リゾットのこと嫌いじゃあないし、寧ろ好きだったよ、ちゃんと」

「……ペッシ、アイツこっち連れてこい」

「えっ、おれ?」

「フィレンツェさんのことが好きなワケでもないし、彼だって私なんか、いや寧ろ嫌いだからこうなんだった畜生マジ外道だわ流石だよ」



どうしてこうなった。



ほんと。

繰り返し思うよ。
散々外面良し男とかからかってたけどさ、それでも誰があんなに歪んでるなんて思うよ。
あのフィレンツェさんが。

“あの日”決定的に歯車がおかしなところに噛んだ、しかもそのまま動き出してしまった。

まぁ、元はといえば私が欲深い人間、強欲に堕ちたのがいけないね。



「まあ私が一番バカなんですけどね、あのままへらへら笑っていたらそれで終えるハナシなのに、すみませんね、堪え性がなくって」

「お前も中々的外れで身勝手だよ。観念しろ」

「その愚かさと思い込みの激しさで私は今まで“其処”にいたんですよ」

「 座 っ て ろ 」

「OK,貝に戻ります」




もう、開き直る気力もないんで。
そういえばやっぱり涙は出なかった。

良かった。

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