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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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09/27(Sun) 20:43
017
ロビン

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10/05(Mon) 18:40
時世




ぱたん。




「………」

「………」


本を閉じる音は思いの外大きく部屋に響いた。
それから、一気に突き刺さる視線。

まぁ、反応なんてしてあげないけど?

あぁ、疲れたな。



「……何処へ行く?」

「トイレ」

「行くぞ」

「え、ついてくるの。じゃあいいや」

「………」



浮かせた腰を、また椅子に戻して。
もう、ため息が出ちゃう。
面倒くさい。

立つ為に撤収した〈根〉をまた張ろうとして、やっぱりやめる。

くそ、ストレスやばいっつーの。

どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがって。
尤も、一番勝手やったのはこの私ですがね。
そしてこのザマですがね。

頭痛くなってきた。

マジでなんなのコイツらはさ、何故、何のために此処に居るのさ。
なんの得があって。
“動機”さえわからない。



「……私、いつまで此処に居ればいいの」

「会話成立させる気がないなら黙ってろ」

「君たちは私の質問に答えてくれない」

「説明ならされただろう」

「納得出来てない」



“私にとって都合よく”事態は動いているのかもしれない、が。
解せない。
まったくね、勝手にナニやってんだろうね。

どいつもこいつも。

くそ、チートどもめ。
持つ者は持つ者で集まるのは当然とはいえ、ああ畜生フィレンツェさんが、



「おい、痛むのか」

「……ほっといて」



唸ったら、そんな声をかけてくれたプロシュートさんだけど、優しいし大好きだけど、ほんと彼すら、私はもうわからないよ。
みんな、強くて。
其々の思惑を抱いて、意志があり、
私だけがなんにも、持っていないんだ。

“価値”を。

だからね、私は思うんだ?
今回何故こんな大事になってしまったか。
考えるんだ。
そうしたらもうね、いや考えるまでもないことなのだけど。

“フィレンツェさんの子供”だから。

畜生としかいえねぇぜ。
誰がなんといおうとそれしかないだろう。
としたら、私がこれだけガチガチに監視(護衛)されているのも納得だよ。

だからこそ危惧している。

産んだら取り上げられました、だとか。
麻酔やら帝王切開やらで気付いたら、死産だったからーって言いくるめられるとか。
そうしたら私にはもうどうこうできない。
私は“此処”にいて、かつ“リゾットの女”であるから無理融通が利いただけの“普通”の人間だ。
その他多数の人間。



「咲、座ってろ」

「いやです」

「座ってろ」

「触らないで!」



せめて、リゾットが此処に居なければまだ私は冷静でいられただろうに。
彼は、どこまで知っているんだ?
それ以上に、彼が此処に居るなんて彼らが着地店点をどこに定めているのか、私にはまったくわからないよ。

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10/05(Mon) 19:18
ロビン




おーおーおー、相変わらず疑心暗鬼だなぁ、えぇオイ?



…だなんて言葉が聞こえてきそうだ。

プロシュート君とペッシ君が上手くやってくれればいいんだけど。

兄さんはともかくラファエルの人選にちょっと疑問を覚えるよ。

ミスタークージョーまで出張ってくるっていうのがそもそも。

確かに妊婦は彼に任せていいんだろう、彼は子持ちだし。

でもそれだけだ。

ハッキリ言って出番なんて無いだろう、このメンツを見る限りでは。

というか、僕とラファエルで充分だったはず。

知らない人間を入れて彼女がパニックに陥らなきゃいいけど…だからこそのプロシュート君なんだろう。



*****



「頼んだぜ。」

「…?」



別室に向かう前の廊下、ポツリと残された僕ら2人。

彼は僕の腕を掴んでそう言い放った。

プロシュート君の言葉にすぐには反応出来ず、だからって曖昧に濁すには申し訳ない程差し迫ったような表情。



「…全部自分のためだったと、アイツは言うだろう…だが違う。いつだってイカレたモノの考え方しか出来なかった。そんなアイツが初めて“自分のためだけに”勝手やってんだよ…」



アンタなら、わかるだろう?

苦笑いしたプロシュート君に、不思議と自分を重ね合わせて。


あぁそうだ。

僕はフィオナを介して彼を兄と慕っているけれど、彼はそれこそ幼い頃からの付き合い、兄弟同然に育ったと聞く。

僕なんかよりずっと近くで見てきたんだ。

そんな彼の言葉が。

切なく揺れた瞳が。

ひっそりと忍ぶように吐き出された小さな溜め息の後、決意をもって引き結ばれた唇が。


…わかるよ、確かに彼は“選択も目的も全て自分のためだった”と言うだろう。

けどそれは逆に客観視出来ていないだけだ。

彼は、人のためにばかり生きてきた。

死者に縛られ、それを幸福と呼んだ。


歪んでる。


彼はもっとシンプルに、幸福というモノを求めて良かったハズなのに。

ストイックなのか自傷癖なのかマゾヒストなのか、時々わからなくなるくらいには歪んでる。



“歪み”は正さねば。

自分で出来ないのなら、せめて僕たちが。

そしてきっと、彼は今に限っては“僕の同志”であることは揺るがない。



「…あぁ、“僕らなら”わかる。任せて。」



そう言うと、プロシュート君は意外にも幼い笑顔で力強く頷いた。




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10/05(Mon) 20:05
ロビン




向こうの部屋が少し騒がしい。

ドラコも顔にこそ出さないが気になってはいるんだろう。

さっきから瞳孔が裂けて瞳の色が変わっているから。

既にスタンドを発現させているというわけだ。


ラファエルとリゾット君のやりとりを眺めながら、私は別室の会話に少なからず満足していた。

ラファエルに頼み込んでプロシュートを配置してもらったのは誰あろうこの私。

アイツなら彼女を気遣い正しく思いやってくれることを私は知っているから。

昔から甘くはないが優しいヤツなんだよ。

情に篤くてね。



…思えば私は昔から誰かに頼ってばかりだった。

今でもそうだ。

率先して話すべきは私だというのに、一番必死になっているのはラファエルで。

結婚が控えているドラコも巻き込んで。

プロシュートとペッシ君も。

空条さんの息子さんまで。



不甲斐ない。

私はリゾット君のようになりふり構わず噛み付くことさえ出来ずに。



「…………」



恥じ入るというのはこういうことなんだろうと、今に関してはどうでもよいことを考えているあたり本格的に頭の悪さが窺える。

けれど――


言いたいことが無いわけじゃあない。

主張したい部分も沢山ある。

譲れないと決めたことも。

じゃあ何故こんなにも胸が苦しいのか。


わかってる、怖いんだ。

大義名分の無い我が儘。

不確定な未来。

他人が自分の人生に深く干渉することも。


遠く目の前に居る彼は眼力ででも人を殺せそうな顔をしているのに。

私はあれから口を噤んだまま。

涼しい顔をしてさぞかし忌々しいことだろうね。


でも、すまないとはこれっぽっちも思ってないよ。

決めたんだ。

私は、一生果たせることの無いはずだったチャンスをみすみす見逃す程、お人好しじゃあ無いんでね。


もう昔の泣き虫な子供は居ない。

自分の無力さに失望するガキでも何でもない。

私はフィレンツェ・フォルテ。

父親という名のヒーローに未だ焦がれ憧れる、目も当てられない程諦めの悪い男さ。





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10/05(Mon) 21:52
時世


無駄に部屋の中をうろうろして、扉横の壁に寄り掛かっている、ほんと何故か居る承太郎さんを睨み付けたまま唸ってみたり。

私の様子を窺い続けるペッシにやっぱりガン飛ばしたり。

さっきまで私が座っていた椅子で長い足を組んで、やっぱりこっちを眺めてるプロシュートさんを無意味にひっぱたきたい衝動にかられたり。


兎に角、私は落ち着きなく部屋の中を歩き回っていたんだ。
実際落ち着かなかったし、あとちょっと周りの様子を調べたくて。
扉は2つ、でもって両方とも人に塞がれてる。
窓はない、畜生くそが。
壁も、御大層な作りで私の力じゃあ破るのにかなりの時間がかかってしまう。

逃げ道なし。

無茶してうっかり攻撃されたら本末転倒だし。
大体、本体の能力的に無茶したところで結果は見えている。
……“子供”のことがあるから攻撃されないだろうか?
なんて、そんな賭けなんぞしないが。
どうにか、是が非でも、無理、不可能だろうと、今の私が第一に守らなければならないのは“この子”で。


じゃあどうするんだ。


彼らに任せておけばいい?
冗談じゃあない。
抜き差しならない状況にすでになってしまってる。
リゾット、リゾットが、隣に居る。
フィレンツェさんもいる。

一体、どういうつもりなんだ、彼は?

他の奴らもだ。
特に、



「……プロシュートさん」

「………」



そういえば、おかしい。
いっぱいいっぱいで、特に今まで気にもしなかったけど、おかしい。

彼、何も言わないかわりに何も聞いてこない。

フィレンツェさんとかから説明されているのだとしても、彼関連ならプロシュートさん、私のこと一つひっぱたいて問い詰めるくらいしてもいいものなのに。
ペッシはどうだろう。
承太郎さんはもうどうでもいい、ってかほんとに彼は何故此処にいるんだ?



「もう限界、此処に居たくない」

「……」

「今の私には何もできないのに、こんな所にいたくない。ねぇ、私親しい人なら少しくらい離れてたって大体わかるんですよ」

「だから?」

「隣、どういうことです?どういうつもりですか、なんで彼が、リゾットは丈夫なんですよね」

「ハナシ聞いてたか?
大体それこそお前はわかるだろうよ、それともなにか、今ヤツはヤバい怪我してるか?」

「いいえ。でも、どういうことなんですか」

「ホントはお前にそう聞きたいね、俺も」



いや、依然かわりなく聞きたいのはこっちの方ですよプロシュートさん。
“このこと”に関しては貴方が私に聞く程のこともないのでしょう。
事実私は問い詰められなかった。

私とフィレンツェさんの間に“他の何か”があるわけもないことは、貴方はよくわかっているでしょうから。

こんな状態でこんな状況でこんな場所で、気のないふりするのも限度がある。
いい加減ヒステリー起こすぞ、畜生。
………起こせたらいい、実際はもう、貧血なのかぶっ倒れそうだよ。

指先ばきばきで、冷たい、……寒いよ。

“こう”なってから、体調不良のたびに、それが嫌な予感でないことを祈って、もう泣きたいくらいさ。
ストレスはよくないってわかってるから、せめて思考くらいは、最後には茶化すけれど。

そう“大丈夫”だからね。

なるようにしかならない、それが“運命”であり、そうならば人は受け入れるしかないんだ。
今回、私は抗う努力をする前に取っ捕まってしまったけれどそれもまた運命なのかもな。

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