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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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05/06(Wed) 10:46
ロビン





車内は静かだった。

泣くことも怒ることもせず、脚を組んで俯いたまま、何か考えをめぐらせている。

窓枠に肘を引っ掛け、右手はこめかみに添えられて。

僅かに寄せられた眉間は、特に不満を物語るモノではないことを俺は理解していた。



「…………」

「……何?お説教なら後にして。」

「説教なんぞする気は無い。」

「冗談よ。」

「そうか。」



煩わしそうに俺に突っかかるコイツに、俺は特に何を言うわけでもなく。

言いたいことなど何も無い。

あのアホの家を出る直前に言ったからな。

後はそれぞれが考えればいい。

何もしてやれはしないが、何かしてやるつもりは毛頭無い。

いい歳した大の男が、既に首を突っ込まされているだけでとんだ赤っ恥だ。

それくらい俺にだってわかっている。

多分、コイツも。



「ねぇ。」



どこかでコーヒーでも買って来させようか、と薄ぼんやり考え始めた時。

コイツは普段しないような真剣な表情で俺に呼び掛けた。



「何だ。」

「私は、間違っていたかしら。」

「さぁな。俺にはわからん。」

「関係を断ち切れって言ったのは」

「そんな言葉を吐いた覚えは無いが。」

「そんな自傷行為はやめろっ、て。」

「…ほう、お前は存外馬鹿だな。もっと賢いと思っていたが認識違いだったのか。」

「…何よ。」

「言葉を正確に捉えろ。俺は“それぞれ”と言ったんだ。各自、各々。」

「それが何なの、」

「“お前ら”と一纏めにして言ったなら、お前の考えている通りの意味になっただろうな。」



……馬鹿め。

それでも臨床心理士か?

呆れてモノも言えん。

今、お前の目は己自身に向かい過ぎている。

あそこで俺が擁護してやらねばお前の惨敗は確定していただろうな。

察しも頭の回転も早いあの小僧も、今頃さぞ頭を悩ませていることだろう。



アイツは、この先を“今”じっくり熟考すべきだ。



それと、目下の俺の悩みの種は――



「――ねぇ、さっきからその着信、フィーネちゃんじゃあない?」

「……プロント、運転中だ。」



――フィーネをどう扱うべきか。

それが問題だ。





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05/07(Thu) 10:31
時世




ま て よ ?



ん?
落ち着こうか。

待て、感傷に浸る前に思い出せ。

私は、リゾットの女だ。
でも社長を好きになってしまって。
かといって奴とは別れられないし、だとしたら逃げるしかないし。

逃げるなら身一つ残して他は棄てるしかないし、そうなら博打もうってみようって気になって。

………何故かフィレンツェさんにちょっかい出して。



「まずどうしてまた、そんな……頭がイカレてたとしか思えん」



ぼーっとしていて、ふと、気が付いて。

状況を整理しようとしたんだ、私は。
そうして一人頭を抱える。



「……なんでこう…あー……もう…」



ラファエルさん。

ガガさん。

社長。

………くっそ、なんだってんだよ畜生。
一人で勝手やってやるつもりだったのに、一人で終わらせるつもりだったのに、どうしてこうなった。

いや私より先に、フィレンツェさんが“コレ”に気付いたせいだが。

ワケがわからないよ。

だってだよ、今日のこの流れを思い返すと、明らかにおかしいよ。
なんか、最後、社長、出ていく時フィレンツェさんの家の解約どうのとか言ってたし、


……………え?


いや、だからさ?
待って。

え?

ま、まぁガガさんとのことは兎に角、……えぇ…?
ちょ、いや、まさか。

や、ないない。

まさか本気で私に付き合うとかあるわけないない。
ガガさん達の前で立ち回っただけのはず。
大体フィレンツェさん既婚らしいし、別に私だって求めてないし。

そういえばガガさんなんか言ってたな。

でも法的な問題は、いや問題にすらならない。
先進国は精々金だからな、婚姻に関する法の制裁は。
個人的報復のが余程恐ろしいね。

……いや、ほんとに。

フィレンツェさんのはこれで、もう、私のこと放っておいてくれる…よね?
ガガさんとの話に同席したんだから、もういいよね?

でも実際彼の子であることがバレたら彼が困るから……やっぱり私をどうにかした方が早いんだろう。
ガガさんとの話し合いに同席させる為にああしたと考えるか。

アバッキオと諜報をどうにかして、私が上手く消えられればいいんだが。

日本へ行ってしまえばどうとでもなるような気もしなくもないし。
ラファエルさんにしても、


っつーか。


正気に戻ると、私、ほんとなんてことしでかしたんだろう。
後悔こそせで、悲しくなってきた。
でも、それでもやっぱりいいんだ。



「……私はばかか 」



体内の“異物”は、私でないモノは、自分のスタンドでわかるじゃねーかって話。
実際自分で感じてみて、震えが止まらない。

夜空を見上げて、ああ、

これからどうすればいいかなんて、まだ、わからないけど……きっと、どうにかしてみせる。
その為ならもうどこまでも外道に走ってやるさ。

どうすれば、どう立ち回れば生存率が高いか?
私の妊娠、当然リゾットの子で、そして奴は許さないが、私は産みたい。


…………最低だな。


知ってる、社長を好きになった時点で私は堕ちてる。
問題はいつカミングアウトするか、だ。
メローネは多分既に感付いてる気もするし、私の体的にも時間はそうない。

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05/09(Sat) 12:18
ロビン




あれから一週間ほど。

私は自宅のリビングで、先程までの会話を思い出しては溜め息をついて。


*******



「――で、なんでまた君が?」

「“協力者”は多いに越したことないだろ?」

「“協力者”ねぇ…」

「僕を信じられない、兄さん?」

「信じられるさ、君はラファエルの庇護下だ。聡い君なら滅多なことはしないだろうよ。」



昼間、我が家を訪れた二人の男。

ドラコを連れてやってきたラファエル。

二人をソファへ促し、私は対面に腰を降ろす。



「それよりラファエル、君は何やら企んでいるようだけど、」

「わかる?」

「そりゃあね、いつもより3割増しでニヤケてるから。」

「この顔は元からだよ。すごく真面目な顔してるつもりなんだけど。」

「そうかい、そりゃあ悪かったよ。」

「そうじゃあなくて、あのね、」

「うん。」

「3ヶ月目にも入ったことだし、そろそろ彼女をヤツらから遠ざけたいと思うんだ。」

「その前に、」

「ちゃんと知ってるよ。大丈夫。その上で」

「ドラコ、」

「…ラファエルから聞いたよ。複雑だったけど、僕は決めた。…姉さんの幸せと引き換えに失った物が多すぎた。だから、今度はアナタが自分のために生きる番だ、そう…思えたんだ…」



俯きかけたドラコが私の瞳を見つめて。

そして、笑う。



「今度、兄さんに会ってもらいたい人が居るんだ。」

「…あ、あぁ…いいけど、急に」

「彼女だよ。この間プロポーズした。ずっと手伝ってたパブがあったろ?そこが共同経営になって、そのパブを手伝ってくれてる子なんだけど…」

「……え?」

「え?」

「その時はどうか、僕の“友人”として、その…紹介させて欲しいんだけど…」





――――沈黙。





「…え、なんで黙るの…?」

「い、いやだってそんな急に」

「ちょっと待った、僕に報告無しとかちょっ…えぇ?」

「だ、だからさ…」




*******




(もういい加減、兄さんだって、幸せになって欲しいから――)



「……………ハァ。」



幸せ、ねぇ…

果たしてこれが幸せへと続く道なのか、甚だ疑わしいモンではあるけれど。

あんな幸せそうな顔されちゃあ、大きなお世話とは言えなくなってしまうよ。

まったく、物好きなやつらさ。





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05/11(Mon) 16:19
時世



あれから。


私の妊娠が発覚して色々あって、勝手に絶望したり自己嫌悪に陥ったり。

でも最終的には自覚して。

気分的にアジトにいきずらくなって。

ホルマジオからメールもらったり、プロシュートさんがわざわざ家までやってきたり。



「開、け、ろ」

「い、や、で、す!
太ったんです60kg越えちゃったんです、元に戻るまで出ません!」

「ああ?お前の都合なんか聞いてねーよ、とっとと出てこい」

「お断ります」

「てめぇ……」



ドアのチェーンを挟んでのやり取り。
まぁ彼が本気になれば簡単に破れるから気休めでしかないのだけれど。

スタンド使わず腕の力だけでドア一枚の攻防をやってくれているということは、

まだ、“大丈夫”なんだ。



「お前、前から体調おかしかったろ。結局病院はには行ったのか?」

「大丈夫大丈夫、心配してくださるのは有り難いのですが、大丈夫です」

「医者いけ。お前はあくまで普通の“一般人”で処理されてるんだから何も心配するこたねーよ。
勝手にしてなにか危惧して遠慮してるなら」

「違います。……っ、言って、るそばか…ら……」



慢性的なだるさと突発的かつ頻繁な吐き気と。

“原因”がわかってしまえばなんてことはない。

たしかに苦痛、つらい、死ぬんじゃあないかと思う。
でも、理解し“納得”したならそれはさしたる“問題”ではなく、いや問題にもなりえない。

無知の“恐れ”に比べたら今はなんて、幸せなんだろうとすら、



「…ぅ……なんなんすか……ほっといて…お兄ちゃんか何かですか……」

「流石にそこまで薄情じゃあないんでな」



吐き気にトイレでくたばりかけた私に、結局ドア破ってプロシュートさんは入ってきて。
なんかもう腕払ってもお節介してくるし“気付かれやしないか”と気がきでない。

私は。

こちらに永住権をもっているワケじゃあない。
長期滞在のビザ?とやらをなんかやって、詳しくないので上に全投げだけど。

だから公的機関にいきたくない、と思われている節がある。

実際は書類捌いてんだからそれなりなんだがね、面倒くさいから言わないが。
……病院いくいかないでしばらくプロシュートさんとポツポツ問答して。

手遅れになる前に、とか言われて実はバレてんじゃあないかとびくびくしながら病院にいく“約束”をして。

なんとか彼を帰して。



「……やばい…“時間”がたりねー体もたねー」



妊娠て、こんなつらいモノなのか…個人差はあるだろうが予想以上だ。
仕事なく好きな時にごろごろ出来る分恵まれてはいるが、

……フィレンツェさんは今のところ直接攻撃なし。
ラファエルさんはほっといてもいいんじゃあないかと思ってる。
リゾット達は……もう少しだけ誤魔化せる、あと少し。



「……エゴ、かなぁ」



こんな状況。

お腹を撫でて、今更、もう何度めかの呟き。
子供は産んでくれとは頼まない、親を選べない。

それでも私は、エゴでもいいから“生きたい”んだ。

だからもう時間がない。
悩んでいたけど、もう懺悔する猶予もないし。

……そろそろジョルノに、会いに行こうかね。

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06/21(Sun) 13:24
ロビン






「何も訊かないんだね。」

「大体察しはつくからな。」

「そう、それは何よりだよ。でもうっかり勘違いなんてされてたらたまらないからね。まずは正確に事実を理解して欲しい。僕らの目的と、お互いの利害関係と損得勘定をね。」



広い室内。

久々にこの場所を借りたよ。

支部長に昇格してから初じゃあないかな。

なんて、財団管理下のだだっ広い会議室でぼんやりと掠めては流していく思考。



随分向こうにはリゾット・ネエロが人殺しみたいな怖い顔してコチラを凝視している。

でも大丈夫、射程距離外だから。



「まず僕らの目的は彼女の解放だ。それには君が大層邪魔でね。他は案外話せばわかる連中だったから助かったんだけど、君は流石に前科が有りすぎちゃって。」

「…………」



マイクもコードもこの部屋には、少なくともあちら側には無い。

声を張り上げなきゃならないのが少しツラいけど、まぁなんとかなるだろう。



「それで――」

「長話に付き合ってやる気は無い。簡潔に話せ。」

「結構大事な下りなんだけどな。」

「邪魔なら消せたはずだ。捕まるような間抜けな男など“お前たち”が隙をついて束になってかかってくればどうとでも出来ただろうに。」



瞬きも忘れてしまったんだろうか。

ネエロは俯くこともせずに。



「話を聞け。キミのこれからに関わる話でもあるんだから。」

「ドラコ、いいよ。彼の気持ちもわかるでしょ?」

「…一生わかりたくはないけどね。」



溜め息と共に口を噤んだ彼は、隣に座して腕を組むフィレンツェをチラリと盗み見た。



「でね。まず彼女をキミから取り上げた理由はさて置き僕らはパッショーネと取引したわけ。彼女とフィレンツェを譲って下さいって。」

「………それで。」

「僕らの懐には悲しいくらいの大打撃だったんだけど、こちらにいらっしゃるキミのボス、ジョルノ・ジョバァーナとの話はついたよ。」

「ヘッドハンティングか。聞こえはいいがただの人身売買だろう。」

「でも本人たちの同意は得ているし。彼らの意志でもある。そこで、だよ。外部の人間ならさっさと殺しちゃえばいいって思ったろ?組織の裏切りにはならないって。だから考えたんだ。」



僕は正直そんなに頭は良くないからね。

3人寄ればなんとやらさ。

良かったよ、ヒーロー面して良い子ぶらずに済んで。





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