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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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03/31(Tue) 09:14
ロビン






「そうだな……私が思うに、君の好きにしたらいいよ。」

「――…は、…」



脚を組んで、膝の前で手を組み直して。

ガブリエルは何時に仕事を終えるだろう。

早く来ないかな。



「…あぁ、でも生きていてくれると助かるよ。ガブリエルは君に物申したいだろうから。」

「下衆が…」

「大丈夫、ちゃんと守ってあげるよ。」

「あ、アンタになんか」

「じゃあ君は自分を守りきれるのかい?どうせ逃げ切れない。まして“身重”だ。そんな身体でどうこう出来るなら暗殺稼業も楽なものだよ。」



口が滑った?

いいや、これも“確信犯”

人は希望に縋るもの。

その希望のためになら、底知れぬ力を発揮出来るものだ。



「そうなれば…ラファエルから貰った薬は飲まない方がいい、あれは“堕胎薬”だから。」



投げた視線の先。

彼女は一瞬フリーズして。

恐る恐る。

そんな表情で私と瞳をかち合わせた。

小首を傾げ、笑う。



「良かったね。」



愛する人に気持ちも伝えられたし、都合よくソイツに似る予定の子供も君の中に居る。

優秀な医者も身近に居るし、君を守れる人間だって居る。

良かったね、ハッピーエンドはもうすぐそこまで来ているよ。

…そう言って、私は破顔一笑。

彼女も少しつられたらしく、歪に片側の口角を釣り上げ、俯いた。

轍を通って、雫を落とす。



「知らなければうまくいく?そうかな。私は知ってなお無知なふりを出来るからこそ上手くいくのだと思うんだ。」



立ち上がり、静かに進めた歩は彼女の目の前へ。


立ち止まり、屈み込んで彼女の俯いた顔を覗き見る。



「産みたい?」

「………――」



震えながら上げた顔。

まるで化け物でも見るかのように。

でもいいんだ。

だって――



「…じゃあ、“共犯”だね。」



私たちは、嵐の中で踊るカイトさ。





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03/31(Tue) 16:09
時世



くだらない。


何かが決壊したように、もう出しきったと思った涙が……ぼうだのごとく、ってのはこういうのをいうんだろうって、そんな。

くだらないことを、くだらない私はぼんやり考えた。


“共犯者”


何を思って、彼がその言葉を吐いたのかは知らない。
今更、なんだっていうのかな。

もう、何を信じれば、

信じていいのか、


“堕胎薬”?


ラファエルさんが、
フィレンツェさんは、

私、

……言葉にはならない。
彼がほんとに真実を言っているのか、否か。
希望を持たせて、これ以上落とそうとでも?

わかってる、期待なんかしちゃいけない。

最低だ、

今、言われてわかる。
最初から、望んじゃあいけないことだった。
いや、わかっていた。

でもやったのは私。

希望なんて、そう持ったって仕方ないだろ。

仕方ない、



「……ほんと、きらい」



また俯いて、呟いて。

途中、言いたいことはあったはずなのに。
馬鹿にするな、と。
守るもなにも、最悪は覚悟の上で行動したんだと。

“結果”はどうあれ。

でも、もう、最後の一言で全てが萎えた。

彼にそんな言葉を吐かせたということが、

なんだか、




「ごめんなさい……ごめ、…ごめんなさい、」




気が違ったのかと、自分でも思った。

えづきながら必死に、しかしどの口が。

目の前のフィレンツェさんの首に、弾かれたように急に、腕を回してかじりついて、馬鹿馬鹿しい謝罪。

許してほしくなんてない。

私はただ責めてくれればそれで、楽になれたのに。

よりにもよって、かけられた言葉が“共犯者”

馬鹿馬鹿しくて、

でも、だから。

早く、此処を出なくちゃあ。

やっぱり誤解してるもの、もしまだほんとに“ここ”に居たとしてそれは。
フィレンツェさんの子供じゃあない。

だから、彼に護ってもらういわれも、彼が護る筋合いも、ない。

彼が何を考えているのかはわからないけれど、

“共犯者”なんて言葉を吐くような彼は、きっと、

フィレンツェさん、も。

……疲れていたんだ。

疲れてるんだろう、

だって彼も、自分を騙すどころか、
“偽り続けて”きた人だ。

たぶん、

私、思っていた以上に、思っている以上に、

たぶん。

彼を傷付けたのかもしれないな、なんて。

今更、思ってさ。

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04/01(Wed) 12:30
ロビン






ほんの僅かに生まれた罪悪感が、私を思いとどまらせているのか。

それとも。

“切り札”を残しておこうという私の稚拙な狡猾さからか。

自分でも、もうよくわからない。



いや――



本当は怒っている。

寂しくもあるしツラくもある。

失望もしたし絶望もした。



――だが。



「“1人より2人”…お互い利用すればいい。もうこの際隠すことなんて何も無い。」



彼女の謝罪など聞く耳持たず。

今の私にそんな言葉なんて要らないから。

赦しなど、求めていないのさ。



「…………」



抱き付かれた私は、子供をあやすように彼女の頭を一撫で。

それから背中をゆっくり叩く。



「…何も心配しなくていい。ほら、寒いだろう。今何か暖かいものを持ってきてあげるから。」



力無い腕をすり抜けて。

唐突な思い付き。

まだ死んでいなくて本当に良かった。



いつでも殺せる。



気が変わるかもしれない。



私は、子供が欲しかったのは間違いないことではあるのだし。



誰にとっての“希望”だろうか。



彼女か、…私か。



わからない。



「…………」



日に日に主張を強めるその鼓動。

レモンの輪切りを見て核分裂を連想した私はいよいよどうかしてる、なんて。



ハニーレモンに、ジンジャーをひとかけら。



「はい。…おかしなモノは入ってないから。」



手渡して。

ゆっくりお飲み。

また頭を一撫で。



“今度は守れる”



それは復讐の続きか、贖罪か。

都合のいい道連れか、希望になりうる光なのか――



「――…あぁ、一応言っとくがその子供は私の子だよ。8週目。もうすぐ3ヶ月目だそうだ。」

「………は?」

「納得いかない?なぜ私がラファエルからの処方箋が堕胎薬と知っているか、考えなくてもわかるだろ。何せ私は耳がいいから。君がどんなに他の男と寝ようが“可能性”がある以上調べないわけにはいかなかった。」

「……知って…――ずっと、」

「DNA検査。何せ彼の実家の部屋はすごいからね。まるでプレイルームだよ。」

「い、いつ気づい――」

「君が私の車で吐いた時。――あぁ、吐いちゃった…」



掃除したばかりだというのに。





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04/02(Thu) 11:56
時世



私は、とんでもない人を怒らせたのかも、しれない。


……なんて。

吐きながら思った。
それこそ今更だろうに。
あぁそういや結局あれから水分しかとってないから片付けは楽だけど、……



「………」



いや、ほんとうは知ってたよ、フィレンツェさんが実際はヤバい人だってのはそりゃあ知ってた。
ずっと、年単位で“苦手”に思ってたんだから、この私が。
寧ろ、時間を重ねただけ違和感を溜め込んでいったんだ、そして多分私はもうその正体を見つけたよ。

さっきね。

だから、そりゃあ、やっぱりフィレンツェさんが苦手だったワケだ。
好きじゃあないわけじゃあないんだ、
彼自体は好きだし、でもきらいなんだな、って。

ただ彼は私と違ってちゃんと“合理的”だから。

だからね、

いや、舐めてたワケじゃあないんだ、
いや、ほんとに。
大丈夫だと思ったんだ。
彼は“私より強い”人だから、って。
実際、ああ実に彼は理に叶ってるよ恐ろしいね、

おぞましいよ、いっそ。


“誰の子供”で“

いつから”

そして“どうして”


アタマがオカシイんじゃあないかね、とっくに狂ってるんだろうが。
仮面どころの話じゃねぇよ、どんな精神してりゃあ、ああ、やっぱ精神病んでるわ、異常者だわ。

これも今更だ。

フィレンツェさんに限ったことじゃあないね、私の周りの男なんて皆こんなもんだ。
そして私もそんな女だ。

だから私は、



「ああ、別にいいよ。そのままで」



……少し、意識が飛んでいたらしい。
ふと気付いたらフィレンツェさんがまた近くに来ていたので、そう言われたって、慌てて自分で処理をする。
不思議と何も感じなかった。

“こわい”くらい思っていい気もするのに。

とんでもない男だ、まぁ私もとんでもない女だからな。
朦朧としてたのもあるだろうけど、散々泣いて、喚いて、挙げ句に吐いて、で。

頭で情況を整理出来ない。

放心、
それに。
もう、フィレンツェさんには何を言っても無駄な気がしたんだ。



「……優しい悪魔ですね」

「なんとでも」

「帰りたいです」

「一応聞くけど何処へ?」

「日本へ………」

「だから君は短絡的で、考えナシだというんだよ」



いや、そもそも。



「いいんです、もういいです、かえります」

「だから……」

「よ、汚しちゃうから…もう、寝る……かえる…」

「今度の帰れるはソッチ?」



彼は怒っているんだろうか。

これは、怒っているんだろうか?

だとしても、これは私がのぞんだ“怒り”ではないのだろうな。

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04/02(Thu) 15:25
ロビン






いつか、ふと思った。



“早く堕ちておいで”



まだ足りない。

もっとずっと深い所で、私はひっそりと息を潜めて待っているというのに。



手緩いのはわかってる。

けれど今壊しては元も子もない。

壊す気などさらさら無いけれど。

壊れる直前を、ひたすら怯えて生きるんだよ。

針の上のアンバランスな天秤みたいに。

気まぐれに希望を見せて。

壊れる直前まで重しを乗せて。

そして私は片時も目を離さず眺めていよう。



“大丈夫かい?”



そんな風に声を掛けつつ。





「眠いのなら寝ればいい。…彼女のベッドか、ここか。どちらにしろ動けないだろう。もう“君だけの身体じゃあないんだから”」



言えば、彼女は数瞬考える素振りを。

あぁ、これはやはり帰ると言い出しそうだったから。



「寝ろ。」



そう一言。

私の言葉に、彼女は私を見る事無く僅かに俯いたままゆっくりと頷いた。

床にぺったりと座り込む彼女を抱き上げソファに降ろす。



「毛布とクッションを持ってきてあげよう。」



横たえて。

彼女の部屋から持ってきた毛布を掛け、クッションを肩口へ。



――Ninna nanna a sette e venti,
(7時20分の子守歌)

il bambino s'addormenti.
(赤ん坊は夢の世界へ)

s'addormenta e fa un bel sonno
(夢を見ながら安らかに)

e si sveglia domani a giorno.
(明日、お日様が顔を出したら目を覚まそう)



ソファの前、床に座り、彼女の下腹に手を置いて。

ニンナ・ナンナを静かに歌う。

ゆっくり、静かに溢れ出すメロディーは懐かしき日の記憶と同じ。



「Nanna ieri, nanna ieri...もう少し、静かな方が良かったかい?」

「………」



身動ぎ、私を見つめた彼女。

首を小さく横に振って。



何を思ったのだろう、私の髪をすくい上げ、さっき私が彼女にしたように弱く撫でられて。



「…今はゆっくりお休み。」





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