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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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03/30(Mon) 18:15
時世




………卒倒するかと。



でも、随分図太くなってる私の神経は、こんなことじゃあ気絶させてなんかくれない。

自分の血の気が引く音が聞こえた気はしたけど、

ちゃんと、まだ“その時”までは私は、自分の足で立っていた。



「…だが2度目は――“確信犯”だった。」



突然泣き喚いて、掴み掛からんばかりな剣幕の私にさえ、フィレンツェさんは至極落ち着いていた。

なんとなく、わかってた、と言って。


“2度目”


あの傷痕、の。

正直に言って正確に覚えているわけじゃあない。
何を言ったかとか、したかとか。

“マトモ”じゃあなかったーーーー薬のせいで。

だから危惧はしていたけれど、フィレンツェさんはアレ以上何も言ってこなかったから。

“問題ない”のだと、




「君がね、私をリゾルートの代役にしているんだろう…って。」




でも、その言葉に、ほんとに私は、何故かショックを受けたんだ。

フィレンツェさんには“似てる人”と言ったし、勘の良い彼なら察するだろうことはわかってただろう、に。

“リゾルート”って、あの人の名前を、彼の口から聞いて。


……彼のあくまで静かな口調と、声のせいかも。


唇が震えて、余計に涙なんかが無駄に溢れるのを頬で感じる。

彼はまだ何かいっていたけど、愕然とした私には、内容が理解できなかった。

それきりまた、口を閉じてしまったフィレンツェさんがやっぱり静かに、こちらを見ている。

ああ、彼は何を思って、

なんで、

どんな思いで、ソレから、私の近くにいたんだろう。



「だ、だったら…なおさら、…怒ってよ……ッ!!」



うまく吸えない息を必死に繰り返して、それで。

叫んで。

腰が抜ける、っていっていいのかね、こう。

かくん、って。

床にへたりこんで。

自分を奮い立たせて怒鳴ったつもりが、悲鳴みたいな音になった。



「そうだよ!社長が好きで……好きだから、我慢して!
“代役”にしたんだよ、代りなんだよ、所詮!!
身代り!他の男の!!
しかも騙し討ちッ!!!」

「…うん」

「う、んじゃあねェーッ!
畜生、このヘタレ!!
なんか、いうことあるだろ私に!罵れよ、せせら笑えよ、そんなカオして私を見るなーーーー」



実際は、涙で何にも見えちゃあいなかった。

ああ“失望”されたのだと、今更思う。

それだけのことはした。

散々喚いて、それも続かなくなって。

それから、やっと思うんだよ、やっとね。

じゃあ“どうして”フィレンツェさんは、今私の前にいて、あんな話なんかをわざわざ聞かせたんだろう、なんて。

喚き疲れて冷めた頭が、感情でなく情報として、先の言葉を処理し始めて。


“またか”って?


何が、


“仕返し”って?


待って、フィレンツェさんの“理由”って……。


どうして彼が何を“騙している”っていうんだ。

どだい2回目が“確信犯”だったからといって、なんだっていうんだよ。



「……っ……社ちょ…」

「………」



鬱陶しい涙を拭って、フィレンツェさんを見たら。

やっぱり静かにこちらを見ているだけで。

なんだかもう、無性に悲しくなると同時に心底自分が馬鹿らしくなって。

それでもふらつきながら立ち上がって、彼に倒れ込んだけど。

振り払いさえしてくれなくて。



「フィレンツェさんには、何がなくとも、ガガさんがいるじゃあない……私にはなぁんにも、ないのに」



逆怨みにも程があるけど。

怨み言を囁いて、笑う。

フィレンツェさんの何を知っているでもない私が。

此処までしてもキレてくれないなら、もう、御手上げだ。

ガガさんが妬ましいと思うし、彼女を傷付ければ皆怒ってくれるだろうけど。

困ったことに、私ってばガガさんも好きだから、今日だって途中で逃げてしまったんだ。

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03/30(Mon) 19:02
ロビン





私にはガブリエルが居る。

あぁ、確かにそう見えたかもしれない。

過ごした時間もそれなりに長いし実際、家族のように愛しているよ。



「――足るを知れ、満ちると思うな、無知は幸い…だっけ。」



ぼそりと呟いた言葉は。



「…君がアジトで呟いた独り言だったかな…」



私に凭れた彼女。

心当たりがあったらしく、まぁ実際に言っていたからね。



「私には彼女しか居ない。けど彼女はそうでも無いんだよ。わかるだろ?」



この際プロシュートは除外するけれど。



「彼女もね、私をリゾルートの代役にしてるんだ。時には比べられたりしてね。肝心なことはいつもリゾルート。泣きつくのもリゾルート。どうにもならなくて困り果てた末に頼るのも。反論はするが必ず最後言うことをきくのも。…優先順位も何もかも。」



自分でも驚く程穏やかな声色。

ただ、地声になってしまっている。

いつもは高めの声を心掛けているけれど。

多分、ヤケになっているんだ。



「仕返しはね、そんな彼女にも向けたモノなんだ。」



弱く泣いていた彼女だったが、ゆっくりと、怪訝そうに私を見上げる。

私も、ゆっくりと彼女を見下ろした。



「彼女に対し、都合よくリゾルートを演じることはやめた。そして君と寝た私を、彼女はどう思うだろう。」



自分に都合よく作り上げて縛り上げた男が、自分の知る女に手を出す。

彼女は少なからず“裏切り”という仕返しにあったわけだ。



「そして君は同意無しに私に抱かれたわけだよ。薬でイカレてなし崩しに。私をリゾルートと勘違いして自ら求めるサマは傑作だった。ざまぁみろって、本気で思ったよ。」



あの時の君といったら…



「…失望したかい?私の仕返しはね、君と彼女が事実を知ってこそ終わるんだよ…」



そう、そして今となればタイミングよく切り札となった彼女の妊娠。

流れたことになってはいるが…



「“どちらにせよ”どう転んでも私の勝ちだ。」



…そう思ったら、なぜか自然と微笑んでいたんだ。





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03/30(Mon) 22:01
時世




それは、微笑んだ、

というには躊躇いを覚える表情だったけれども。



フィレンツェさんは、相変わらず静かに、いっそ穏やかに、信じられないくらい心地好い声で語って。

仕舞いにそんな表情を浮かべて。

見下ろす瞳の色は冷たくはなくて?



「……ふ…っうぇっへ、…うふふ、ふ、」



……我ながら気持ちの悪い声で、笑ってしまった。

なんだ。

ーーーなんだ、そうか。

私、フィレンツェさんがどうして苦手なのか、わかったかもしれない。



「相変わらず、お優しく、御立派ですね。大好きですよ私、…そういうの」



いきなり、何だと思うだろうか?
わからないだろうか、彼に……私はわからない?

それならそれでいい。

“失望”だなんて、とんでもないよフィレンツェさん。
しばらく、私は彼に体を預けたままくつくつ笑い続けた……別に楽しくはない。
なんとなく、笑えた。



「足るを知れ、満ちると思うな、無知は幸い。
正にですよ、ばーかばーかやっぱりフィレンツェさんがばーか」

「この期に及んでよくもそんなことが言えるよ」

「…何事も知らなければ幸せでいられる。けれど人は無知ではいられない。
知れば欲が出る、満ちるを望む、欲は足ることを知らない!」



そして目を曇らせる。

その欲を抑えるものこそが“知識”であり“理性”
身を起こして、フィレンツェさんを見下ろせば。

今度はフィレンツェさんが少し、目を眇めた。



「“ベクトル”が違うじゃあないですか。社長とフィレンツェさんは、アレは代りにしてるって言わないんですよ、あぁばっかじゃあないの!」



散々喚いて後で、声は掠れてしまっていた。
まだ力が入らない下半身を根性、いやE・スケイプの根で支えて貰う。
……うわ、弱ってると思ったのに一過性のハイかな、超ブワッて出た。



「以前のことは知りませんよ、でも彼女は、ガガさんは“違う”んですよ」

「 何がわかると?
君に何がわかると思っているんだか」

「わかるんですよ、私が社長を“好き”だから!」



ガガさんが“このこと”をどう思うか?
まぁ“裏切り”だろう、私もフィレンツェさんも彼女を裏切ったんだ。

“仕返し”だなんて、フィレンツェさん、ほんと、何を寝ぼけたことを。

違うのに、

『私には彼女しか居ない。けど彼女はそうでも無いんだよ。わかるだろ?』

わかるよ、わかるがそこで足るを知るべきだった。
彼は“持たざる者”ではないのだから!


私にしてもッ!!


同意無しに抱かれた?
薬のせいで?
社長と勘違させてくれたっというんなら、ざまあみろって言われたって、私からすれば、

“ありがとう”だ。



「勝手に思い込んで、自分でそうと決めたとも気付かずに心に線引きして、頑として譲れないで!
勝手に一人で!自分に言い訳しながら!!
ああくそ!」



ほんとやになっちゃう!

自分のことは見えないよ。

見えないけど、今、私、目の前にすっごく覚えのある
ような気がするムカっっっつくのが、いるッ!!



「なんだよ、はいはい、何が“勝ち”だよ“仕返し”だって!私はこれっぽっちも堪えないし、寧ろ言ってやるわ“ディ・モールト グラッツェ!!”」



ガガさんは、確かに傷付くだろう……が、それは諸刃じゃあないか。

フィレンツェさんは、もっと上手く立ち回れるハズなのに、



「誤解だろ、ガガさんには黙ってろよ!!私でさえ言わなかったんだ、言わなきゃあ限りなく黒に近いグレーで済むんだから!
私は“負けた”けど、
“勝者”の存在なんて、認めないからなッ!!
いいから、私に怒れよおぉおおおッ!!!」



一頻り怒鳴って、

ぷっつん。

何かが切れて、私はまた元通り床にへたりこんだ。
なんかもう、どうでもよくなってきた。

どうせ、私には、もう関係のないことだ。

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03/31(Tue) 02:03
ロビン





ちぐはぐで矛盾だらけ。



「“わかるんですよ、私が社長を《好き》だから”…だから?」

「“だから?”じゃねーよ」

「結局それは君の主観だろ。」

「この、」

「君が私たちの何を知っているんだ?リゾルートにしてもそう。もっと言えばフィーネやラファエルだってね。」

「今在る彼らが」

「つくづくおめでたいご都合主義者だよ、君は。」



あのラファエルでさえ、人の命を奪ったことがあるというのに。

フィーネも、リゾルートも。

自ら手を汚さなかっただけで、ガブリエルだって。



「まぁいい、君に零す程みんなは君を信用に足る人物だとは思っていなかったってことさ。知れるはずもない。」

「知らないから何だって言うんだ!!」

「…自分で考えろよ、鬱陶しい。」



無知は罪だ。

相手にとって迷惑。

そこに感情なんぞ乗っかった日には。



「そうそう、ガブリエルはもう知ってるよ。」



実は、ね。

タイミング、逃しちゃったから言わなかったけれど。



「自分から掛けたくせに、“忙しいから切る”だって。可笑しなヤツさ。」



ふっと苦笑い。



「で――あぁ君、告白してきたんだって?出るに出られなかっただけでリゾルートは聞いていたようだよ。良かったね、気持ちが伝わって。」



強張った表情。

動揺に定まらない眼球。



「リゾルートは堅いからね。…あぁ、ヤツの過去を知らない君に教えてあげるよ。アイツは間抜けにも女に騙されて他人の子供を身ごもった女と結婚する予定だったんだ。勿論堕胎に至った。ヤツの判断でね。ヤツの母親も――」

「やめろよ…」



――酷い女だった。周囲の意見を無視し勝手に妊娠して、旦那に逃げられあまりの恨みに付けた名前がルキフェロ。行き過ぎた教育方針、ネグレクト、虐待、いじめ。祖父母は見てみぬふり…寄ってくる女は外見と将来のステータス、資産しか見ていなかった。人のことはあまり言えないがヤツも大概な女運だったなぁ…



「…そう。あぁやっぱりね。」

「何がだよ…!!」

「知るチャンスはあるのに、君は知ろうとしない。都合のいいことしか耳に入らないように。結局君が作り上げたリゾルートは都合のいい虚像だ。」





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03/31(Tue) 07:15
時世




……何が…


何が悪いっていうんだ。



ご都合主義、虚像、
そんなモノだろ、そもそも“恋愛”なんて?

“ばか”になることだろう

だから私はナナメに構えて今まで馬鹿にしてきたよ。
だのに、

それでもいい、なんて。

思ってしまったから、私は、実際こうして馬鹿やった訳だよ。
最初っから知ってたよ。



「知らなければ、上手くいくじゃあないか。
いいんだよ、知ってるよ私は“それだけ”しかない人間なんだ、求めていい部ってのがあるんだから…っ」

「つくづく…いや、もうやめとこうか」

「な、に勝手に、……喋って…嘘だ……」

「全部本当、よかったね」



ガガさんが、社長が、

……ガガさんが知って、社長にも、

そんな、

社長に、私、……。

私にしたって、ああ機会があったからって、知っていいことか?
私が?
誰だって、私にすら知られたくない過去があるし、話す必要性も感じないで今まできていて。

だのに、



「知らなくていいことなのに、知らせなくていいことなのに……っ」

「君のソレは自分の身を守っているにすぎないね。こわいんだろう、知って虚像が崩れるのが」

「ちがう…私じゃあない……どうでもいい…」



私が“こわい”のは。
恐れるのは、私の愛する“世界”が変わること。
其処に私の姿はあってもなくてもいい。

大事なのは、



「じゃあやっぱり、それこそ私が死ぬしか…“正しい道”はなかったんじゃあないか……」



感情は自由にならない。
放棄することは出来るけど、どうにも出来ない。

ああ、多分。

おかしくなった時に溢したとかいう“死にたくない”は、此所からきているんだろうな。



「こんなことなら、後先考えず、社長にいいかっこしいしてから……殺されてやればよかった…」

「そもそも、君は傲慢なんだよ。殺されて“やれば”?死んだらそこでお仕舞いさ」

「でも、私はリゾットに“だけは”殺されたくなかったんだ…」



今となっては、もう、それこそどうでもいい。
逃げてやろうと思ってたけど、なんだか、もう。
ほんと、



「どうすりゃあよかったんだ……」



誰かに、相談するべきだったとでもいうのか?
無茶いうなよ、



「……フィレンツェさん、」

「なにか?」

「あなたは、それでどうするんです。これから、ガガさんを裏切って」

「どうもしないさ」

「……こうなった今、私はどうしたら“都合が良い”ですか?」



逃げることも。
死ぬことーーー殺されることも。
全部、……全部諦めて、今まで通りに笑う覚悟をするくらい、……諦めなくちゃあ、いけませんか…?

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