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こっそりひっそり。
2人だけの秘密。
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03/25(Wed) 21:12
ロビン
「…………っ、」
息を詰まらせて。
忘れられた呼吸。
ほんの少しだけ止まった時間。
あぁ、いまだかつてこれほど感情を乗せた彼の表情を、僕は見たことがあっただろうか。
「…いつだって、“完璧”を求められるんだ…」
――やっと、泣いたよ。
「“あんな醜態”を晒したのに、未だに…」
…そう、フィレンツェは以前、“壊れた”ことがある。
原因はガガ。
ミランダに捕まり数日間に渡り散々暴行を受けた後、微妙に残しつつ性器を切り取られた彼女は、ダンボールに詰め込まれフィレンツェ宛に送られてきた。
彼がそんなふうになったのは、彼女が生死の境をさまよっていた頃のこと。
食事も睡眠も取れず、部屋はあらゆる物が壊され荒れ放題。
スタンドも不安定で。
酷かったよ。
見ていられなかった。
あの時初めて彼も“ただの人間”だったんだと――笑っちゃうことにね。
誰もが驚き戸惑ったに違いない。
でも、今の方がずっと人間らしい表情をしているよ。
「…起きれる?」
ダメだ、聴いてないや。
まぁいいけど。
苦くなるだろうから、彼を抱き起こして。
ウェイト差がかなりあるから苦労したけどね。
しかし驚いた、もう薬が切れはじめてるよ。
こわ。
「…フィレンツェ?」
離れようとしたら、やだな、僕の服掴んでる。
「僕の肩は女の子のためにあるの。キミのハンカチ代わりにしないでよ。…とかね。」
暗殺者として、彼は確かに完璧に振る舞っていたけれど。
いい男だよ。
僕はキミみたいに振る舞えない。
いつだって完璧な紳士であり、それでいてチャーミングでセクシーだ。
(それがこんな風になるんだもんなぁ…)
雨に濡れて震える子犬みたいに、こりゃあ年上にもモテるわな。
(しょうがないから、貸してあげるよ、今だけね…)
あーあ、これが咲だったら、僕全力で慰めるんだけどな!
…ってのは冗談。
「……あ、あれ?うーわ寝てるよ…」
急に重くなった気がして、覗きこんだらさ。
「…子供かよ。」
ウチでよく見る。
泣きながら寝ちゃう子、こんな風にさ。
「あ、ワイン…そうか、そうだ。すぐ寝ちゃうんだった…」
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03/26(Thu) 12:14
時世
うつら、うつら。
夢現。
つらつら、流れる思考。
夢、なのかなんなのか。
今一はっきりしない。
ただ、なんとなく“寒い”なって感じてた。
目を開けると時計がある。
私の部屋。
それから、何故此所にいるのかを重い頭で思い出す。
……夢だったら良いのに。
しかし私の体すげえ。
目覚ましかけてないのにやっぱりこの時間に一度目が覚めるんだな。
つまりあんまり寝てないってことか。
現にボケて、一瞬携帯を探した。
あるわけねーよ。
手放したのは私。
さて、どれくらい彼らに捕まらずにいけるやら。
非常事態でもない限りあんまりバレなさそうではあるが。
「まず、は……」
身嗜みを整えて。
顔色がアレだからバッチリ化粧をした。
グレイスレッドの口紅。
色っぽい赤いの。
好きなの。
似合わないけど。
それ以前に吐いたら台無しなんだがね。
臭いに弱くなってるからマスクも必須だし。
それから。
パソコンを開いて。
案の定早速仕事用携帯について“上”からお咎めメールが来ていたのに、返信をする。
反省文じゃあない。
『“件のガブリエル”の現在地と本日の予定は?』
送信して、ノーパソを閉じビジネスバッグに詰める。
服はスーツ。
夜は交わされたけど、昼間なら多少強引にいける。
なんだったら正式な手続きだってするし、そこに至るまでに、本位じゃあないが賄賂だってやってやろうじゃあないか?
ガガさんの居場所がわかるまでもう少しある。
きっと、普通に返答がくるよ、そういう子に連絡してるんだから。
『携帯なくしました。
出掛けますが大丈夫です、何か連絡事項があったら上を仲介してください』
そしてそんな紙を書いてセットして小細工をする。
ま、誰もこないとは思うけど。
それからやっと、私は家を出て駅に向かう。
どうせガガさんがいるのは此所より北だろうから場所がわかるまで上がってみようと思って。
で、まあ。
途中で気持ち悪くなりながらも私は彼女に会いに行くんだーーーー何の為に?
私の自己満足。
「ムカつく……じゃねーよ、えっと、」
何を言おうとしているんだろうな、私は。
フィレンツェさんを不利にするのは本位じゃない。
実際“リゾットの女”の私を彼はよくも二度も抱いてくれたもんだよな。
フィレンツェさんの好みでもないだろうに、感謝してもいいわ。
半端に優しいから、色々勘違いしそうになるけど、
……っていうかソレが彼の弱点で、諸悪の根源のような気がw
なんだよあの男、
まぁいい、彼は彼でうまくやるだろう。
“最後”まで巻き込んで彼には申し訳なく思うけど。
ガガさんに、言うんだ。
会ったら、私。
『フィレンツェさんのこと好きなんですよね?』
って、改めて聞くんだ。
素直に好きって答えてくれたら、私は帰るよ。
殺されたって構わない、リゾットに三行半突き付けて“自由”になってやる。
黙秘か、無視されたらスタンド使ってでも足止めして言ってやろう。
私は社長が、好きなんだって、それから。
フィレンツェさんて似てますよね、って。
笑って。
殴られるかもしれないけど多分私はすっきりする。
そこまで言って、ようやく先刻の暴言を謝れる気がするから。
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03/26(Thu) 14:25
ロビン
曖昧な記憶。
珍しい。
「……んん…っ、…はぁ…」
背伸びをして、溜め息。
「…なんだっけ…」
昨夜はラファエルに散々色んなものを壊された。
集めはしたが特に執着は無いし、またコツコツ集めればいい。
無いものは仕方ないしそれが無いなら別に。
その程度。
(アルバムが無事ならね。)
いいんだ。
暗殺者としてはこれ以上無いほど所持している物としてリスキーだけれど、これだけは困る。
私の宝物。
(さて、シャワーを浴びて片付けでも――…ん?)
着信が2件。
急な仕事でも入ったのだろうか。
最近リゾット君は忙しそうだったし、私にも回ってきたのかも知れない。
だなんて、緩慢な動作でケータイを開き、確認してみれば。
(――バカだな、プライベート用だろ。)
まだ寝ぼけているんだろう。
控え目なあくびを一つ。
それから、メッセージに耳を傾けて。
『ハイ。体調はどう?加減したから大丈夫だと思うけど、何かあれば連絡して。あと昨日は色々壊してごめんね。僕の“数日間”をアレでチャラにしたげるよ。…また、話をしたいんだ。今ならまだ間に合うから。僕にもチャンスをくれないか。誓って悪いようにはしないよ。じゃあ…メールちょうだい。バーイ。』
(…………)
少し間をあけて、1件目を確認。
夜中だったから遠慮したのか、メッセージは無言ですぐに切れたけれど。
(やっと掛けてきた…)
ガブリエルからの不在着信。
こちらから掛け直すべきか?
…いや、メッセージも無かったことだし、何かあればまた掛けてくるだろう。
「………寒いな。なんだろう。」
独り言を呟いて、まずは熱いシャワーを浴びることにした。
簡単に食事をして、片付けをして。
それから。
考え事はそれからだ。
こんなに乱雑じゃあ、落ち着いてコーヒーも飲めやしない。
「……、寒いわけだ。」
外は、雨が降り始めていた。
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03/28(Sat) 21:52
時世
「…チッ……!」
“情報”を得て。
舌打ちした私は別におかしくない、いや解っていたことではある。
予想の範囲内、けどやっぱりおもしろくはない。
厄介な……いや私的にはね、処に、いるよ、ガガさん。
どうにか彼女“だけ”に会いたいもんだ。
方法はないわけじゃあないけど、なるべく大事にはしたくない。
……尤も、それこそ今更のことだけどね。
「ま、そのうち出てくるだろう。それからだな」
私をみつけたからって出てこないってことはないだろう、仕事だし。
逆に仕事だからって交わされかねないな。
逃がさないが。
もう大丈夫、私は自分で自分を整理した。
大丈夫。
私にはもう後がない。
私はリゾットの傍に戻る気がないんだから。
愛してる愛してないの話じゃあない。
リゾットは“メンツ”のために私を、どうにかしなきゃあならないんだ。
それは“覚悟”して行動したし、自業自得な部分はいいんだ、別に、うん。
“最悪”を受け入れる覚悟はある。
この期に及んで見苦しい真似はすまいよ、言い訳もしない、私が悪い……堪えられなかった私がね。
身に降りかかる害悪よりも私は、身に過ぎた願いに賭けたんだ。
そして負けた、それだけの話。
「……ガガさァーン!おはようございます、シカトしないでェー!!」
「……ハア、何の用よ?」
「昨日に引き続きひどい」
昨日みたいに完全にラリラリ出来ずに苦笑したら、まあ、多少は思うところもあるのかな。
表情は変わらないけど、やがて出てきたガガさんは一応立ち止まった。
っていうか車のドア私のスタンドで押さえてるしw
まあイヤになったらガガさん、車はさくっと諦めてタクシーでもとか歩き出すだろうし。
まあ、きいてくれる気はあるんだろうな。
「私これから仕事なの。
暇じゃあないのよ、あなたと違って」
「知ってます、だから流れとか気にせず単刀直入に聞きますよ。ガガさん、
“フィレンツェさんのこと好きなんですよね?”」
相変わらず。
ガガさんはやる気のないカオをしていたけれど。
きっと色んなことをかんがえているんだろうな。
色々。
なにせかなりの間二人は仲違いしたままで、そうしたら私と彼女は接点なんてないし、なのに私は此所にいるし、やっぱり私の態度がオカシイし。
この人、手強いから。
人のことは読むくせに相性なのか私、彼女の思考は読めないんだよね。
ただ、ある意味恐ろしい人だとは理解している。
こちらが思う以上に情報を読み取る能力があることは判っているから。
「……一体どうしたっていうの」
「どうもしません」
私は卑怯だから、自分で選択したくないから。
こんな馬鹿なやりとりを、
他人の反応見て、それで自分の行く先を決めようなんて、
「無回答、そうですか」
「咲ちゃん、あなた変よ」
「そりゃあ、おかしくもなりますよ。ガガさんなら、気付いてたかもしれないけれど」
「リゾット・ネエロとのことかしら」
「いや、まぁ、無関係じゃあないけど。
……私、社長のことが好きなんです」
言おうと決めていた言葉はあったハズだけど、私が言えたのはそこまでだった。
結局表情を変えなかったガガさんに何故か、急に泣きそうになって、
なんだかスゴクマヌケな気はしたけど。
昨夜は暴言吐いてごめんなさい、とだけは言って。
逃げたんだ、私。
私は、誰かに怒って欲しかったのかもしれない。
多分私は、“後悔”したかったのだと思う。
そして逃げた先がフィレンツェさんだなんて、私の頭はいよいよどうかしてきたのだろう。
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03/29(Sun) 10:22
ロビン
午前中、仕事に出掛ける前にふと気になったの。
(掛け直してこないわね…)
私も意地を張りすぎたけど、メール、何回も送っているのに無反応ってちょっと酷くない?
「………」
車のキーにビジネスバッグ。
今日は学会だから、グレーのスーツにグッチのタイ。
先に出てるわよとルークに呼び掛けて、私は久々に履いた黒の革靴をコツコツ響かせてアパルトの駐車場へ。
すると。
急に呼び止められた声に更に脱力したのは言うまでもないわ。
だってそうでしょ、構ってる暇は無いもの。
そもそも接点が無い今、アポ無しってどういう神経してるのかしら。
昨日の今日で。
やれやれだわ。
でもね、
「私これから仕事なの。暇じゃあないのよ、あなたと違って。」
“何か”が引っかかった。
昨日といい今日といい。
彼に何かあれば要件だけ一方的に伝えればいい、彼女にはその術があるし第一。
他のメンツやラファエルだって。
そして彼女は言ったわ。
「ガガさん、“フィレンツェさんのこと好きなんですよね?”」
…“フィレンツェ”が、どうしたって?
あぁ、今の私はさぞ冷たい顔をしてることでしょうね。
昨日の今日で彼に何かあったのか、でなければこの長期間に私とコンタクトを取る機会はいくらでもあったはず。
それにその物言い、半端に隠した警戒の色。
勘ぐれと言われているようなモノだわ。
「……一体どうしたっていうの。」
「どうもしません。」
私から目をそらさない。
観察されていることは一目瞭然。
ここは彼女の言動からヒントを引き出すために曖昧な会話をして引き伸ばすのがベター。
…まずは無言でね。
そうすれば彼女は動かざるを得なくなる。
「無回答、そうですか。」
「咲ちゃん、あなた変よ。」
「そりゃあ、おかしくもなりますよ。ガガさんなら、気付いてたかもしれないけれど。」
私が気付く?
さして興味は無かったけど、フィレンツェと彼女、私が知る接点はあの男。
「リゾット・ネエロとのことかしら。」
「いや、まぁ、無関係じゃあないけど。……私、社長のことが好きなんです」
“無関係ではない”
いやそれより――
「――良かったわね、若い子から熱烈な愛の告白よ。」
「…喧しい。」
これは下らない妄想、そうあることを心から望むわ
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