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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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03/21(Sat) 10:41
ロビン




(――…眠い…)



珍しく一睡も出来なかった私は、友人の病院へ車を走らせていた。

まぁ、本人はようやく気付いたらしく昨夜私に連絡を寄越してきたわけだ。

やっと気付いた。

自分の身体、まして内診までしてようやく。

気付いていたのかもしれないが、それならばよくぞ今まで我慢したと褒めてやりたい所だね。



「プロント?そちらにアラヤマサキは居る?もう終わった?――グラッツェ。」



処方箋待ち、らしい。

気付いた彼女は今、どんな気持ちで私を待っているんだろう。

憎しみ?

安直すぎるだろうか。

憐れみ、蔑み?

いずれにせよ心証は良くないだろうね。



「…………」



思うんだ。

彼女が、ほんの少しでも私に気持ちがあってくれたなら。

あらゆるコネクションを使って。



「…ハッ……」



こちらにもあちらにも、問題は山積みだけれど。

“フォルテの血筋”は、正直どうなんだろう。

あの母親のことだ、本当に父さんの子でないとしてもそれはそれ。

戸籍上は“フォルテ”を残せる。

けじめとして入れた籍だってもはやどうなろうと構わない。

ミランダにはカルマがついているし、アイツにとって私が消えることはむしろ望ましいはずで。



「馬鹿馬鹿しい…」



何をつらつら考えているんだか。

現実味がまるで無い。

馬鹿か、まったくイカレてる。



「……………、」



彼女が、ほんの少しでも私に気持ちがあったなら。

リゾルートの替え玉なんかじゃあなく、

“フィレンツェ・フォルテ”を、



気の迷いでもいい、あの一瞬でも愛してくれていたのなら――



(――…またか。電話してこいよ…)



思考を遮った無遠慮な着信。

ディスプレイにはガブリエル。

ここ数日メールがちらほらと届いていた。

が、あえて無視している。

大事なことは電話で。

電話魔の彼女が言い出したことだ。

また自分から言い出した約束を自分から破って。

まったく、こっちはそれどころじゃあないんだよ。



「チャオ。迎えに来たんだが、彼女はどこに?」




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03/21(Sat) 12:55
時世


まぁ、


ーーーーーー結果。


ラファエルさんがいうには妊娠はしていたようだけどどうやら駄目っぽいと。

“流産”というやつだね。

妊娠初期はさらっとよくあることらしい。
馬鹿みたい、私。
一喜一憂、
なんか、もう、ほんと。

疲れた。



「……あ、こんにちは」

「具合は?」

「ハァ、良いような悪いような」



もはや何のために飲むんだか解らない薬を受け取って戻れば、フィレンツェさんが来ていた。

そうだ、呼んだの私だ。

交わした会話はやる気なくそれだけで、私は早々彼の車に乗り込む。
あーあ、話すこと、何処から何処まで話すか決めてたのにぜーんぶトんじゃったあぁー……



「………」

「………」



諦めて、覚悟決めたつもりになって、

葛藤して、

希望を持ちかけたら、

急落して、……

疲れたよ、もう。
涙も出やしない。



「……ああ、心配かけたようですが“安心”して良いですよ、流れましたから」

「残念だったね」

「どのクチが」

「……それで、用件は?
私に嫌味を言うためだけかい?」

「まさか。でもだって流れたの知ったの、たった今、ついさっきですよ」



淡々と。

交わす言葉は多分どちらもよそよそしい。
車内は静かで、窓の外では人々の生活が流れて。



「……何から話そうかな。
まず、私はフィレンツェさんに謝らなきゃあならないってことかな」

「咲ちゃん、今となっ「なるべくしてなる、ってこういうことですよね」……」



纏まらないので、ちょっと黙って聞いてっていうか、私が話したいだけなのかもしれない。

こうなってしまった今となっては、私はもう、



「最初ね、狙ったんです、でも駄目で諦めたのに、今回“リゾットの子”を、結局それも駄目だったし、」


子は授かり物だ、

やっぱりこういう風にしかならない“運命”

ーーーだったんだろう。


「あ、……で、フィレンツェさんに言わなきゃならないのがね、うん。
あわよくば欲しいなって、まあ、ダメだったワケだけど私は貴方を嵌めようとしたワケで、だから。
それは、謝ります」

「……どうして、私を選んだ?」

「どうしてって……いいじゃないですか、結局ダメだったんだから」

「そんなことを話す為にわざわざ、こんな時に呼びつけたのかい?」

「まぁ、嫌がらせですよ。どうせ何も変わらない。
あ、嫌がらせついでに言っちゃおっかな、
ぶっちゃけ“似てる”からなんですけどね、フィレンツェさんが、
私の初恋の人に!」



泣けないと、なんだか笑えてくるもんだね。

凄く失礼なことを言ってる気はしたけど、妙にハイになってるのか、私はそのまま、馬鹿笑いした。

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03/21(Sat) 13:53
ロビン






「――…そう…」



やり場のない怒りだとか、身を切るような切なさだとか。

どの時点から、とか。

悲しい、ツラい、憎い、…色々な感情は、そりゃああるよ。

けれど。

口に出来たのは、それこそ月並みな言葉だけ。





失望。





あぁ、最悪なことに彼女は“彼女”と同じ言葉を口にしたんだ。

震えそうになる手。

気付かれないよう唇をそっと噛んで。



――彼女の初恋の人。

十中八九、アイツだ。



わかってはいた。

ただ、ハッキリ言葉にされるとこんなにも、身じろぎさえ出来なくなる程――

…私は、いつも通りの私を演じられただろうか。

地雷ドストライク。

どんな銃器より確実に私を抉った。



「……私が似ていたのか。ふむ、興味あるね。どんなヤツ?どこが似てるって?」

「やだコノヒト、乗ってくると思わなかったよ。これ以上は言えませーん。」

「そう。じゃあ気晴らしにドライブにでも付き合って貰おうかな。じっくり考えてみよう。」

「え、1人でどうぞ。」

「そう冷たいこと言うなよ。迎えに行ってやったろ。」

「リゾットがうるさいですよ?」

「リゾット君に言えるのかい?」

「………ずるい。」

「グラッツェ子猫ちゃん。最高のほめ言葉さ。」

「こンの髭…!!」

「なんとでも。」



そっと一呼吸。

それから会話を少々。

大丈夫、この期に及んで騙されているだなどと思うまい。

ましてすぐに突き返すわけでもなく、程よく共有した情報と時間。



…堕胎薬は、1週間〜10日で役割を果たすはずだ。

私が指定した。

身体に負担を掛けず、けれど可能な限り早い段階で。

ラファエルが裏切っていなければ、私のプランはあと少しで達成される。

薬を見て感づかれないようメローネ君は遠ざけたい所だが、それさえどうにかなれば。

大丈夫だろう。



「誰だろうねぇ。えーと、超絶イケメンで紳士でベッドのエスコートも最高のベリッシモだろ?」

「自分で言ってて恥ずかしくないんですか。」

「事実だからね。」

「うわ。仕上がってるコイツ。こうばしい。」



…今なら、カルマに心の底から謝れそうだよ。

やっとお前の気持ちがわかった、って。





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03/22(Sun) 01:25
時世



しばらく、ほんとにドライブしたよ。


多分フィレンツェさんは本気で追及する気はないんだろうけど、そんな話。

それこそ彼にとってどうでも良いことだろうし。



「自分がどんだけのモンだと思ってるんですか?
イケメンイケボでイイ体してるのは認めますけど」

「やっぱり?」

「うざっ。
っていうかフィレンツェさんはフィレンツェさんなんだから、どんなモテ男だろうが私には関係ないね!」



あるいは。

このやり取りと時間は、私を憐れんでのことなんだろうか、なんて。

まさかね。



「……あーあ、全敗だァー」



会話も少なくなって、っていうか私が「寝みぃ」とか言い出したからなのかも知れないけど。

窓の外の景色を眺めながらなんとなく、呟いた。



「結局、私一人がスッカラカンですねー」

「………」

「ねえフィレンツェさん」

「なんだい咲ちゃん」

「フィレンツェさんにもしか子供が、なんかの間違いでーーーあ、みなまで答えないでねわかってるから」



子供、………。

可愛いですよね。

そうだね、なんて会話にもならない会話をして。

しばらく外を眺めていたらそれからやっぱり、見知った景色になってきて。



「これでも考えたんですよねー、“傷付く人”が一番少ないように、って」

「私は甚だしい迷惑を被っているワケだけれど」

「あぁん?どーせ無駄射ちしてんだからいいじゃん、
実は日本行き抑えてあるんですよー、もう使わないけどー」

「無駄う……流石に少し言葉を選びなよ」



思いっきり伸びをした。

今、終わってみて、なんて馬鹿なことをしたもんだと思う。

……おわっちゃったんだ。



「じゃあ………」

「気を付けて帰ってくださいねー」



何も思わなかった。

送って貰って、私は笑顔で見送って。
彼の車が消えても、しばらくつったってた。

此処まで、何も、真っ白で外から自分を見ているような、強いていうなら心の真ん中に穴が空いたような。

…………誰もいない。

ごろごろしながら時間を潰して、頃合い見て、貰ってきた薬を口に含む。

のみ込もうとして、



……ぶちまけた。



盛大に、そりゃあもう。

幸い流しだからいいものの。

折角胃にいれたものも戻して生理的な涙が滲んで、


ーーーどうせ、誰もいない 。


いないんだ、誰もね。

知ってたよ。

“味方”なんていないし、ヒーローなんて端から期待してない。



「ぉグ…ぇっ、……えっ…ふ、は、ハハッ……」



多分、


さみしいんだ。


ずうずうしいことにはね。



「……すきだったよ、」



今はもう、辛いだけ、だ。

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03/23(Mon) 11:17
ロビン






帰宅した。



キー片手に数段の階段を上り、ドアを開けて。



ガチャリ、やけに大きく響いたドアの音。



それから一度、大きく息を吐いて。



「………落ち着こう…」



独りきりの我が家。

わざわざ声に出した所で、応えてくれる誰かが居るわけもない。



「――…あぁ、そうか……」



“初恋の人に似ている”

“傷付く人が一番少なく”



「……“たかが言葉”じゃあないか…」



物理的に傷付けられたわけじゃあない。

言葉の受け取り方、気の持ちよう。

誰にでも魔が差すことくらいある。



数度繰り返し自分に言い聞かせて――



「…………ッ、」



――…諦めた。



一筋流れ出してしまえば、それは簡単に溢れ出していく。



仕方ない、何も知らなかったのだから。



私の事など、彼女に知る術も。



興味さえ無い、きっと。



誰かが悪かったのか?



私が、選択を間違えただけのこと。



たかが言葉ごとき。



たかが今。



この先の、おそらく長い人生のほんの一瞬。



そう思えば、今、この一瞬なんぞ取るに足らない。



一々傷付くな。



悪意が有ろうと無かろうと、それらは時間と共に確実に過ぎ去るのだから――





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