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こっそりひっそり。

2人だけの秘密。



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05/09(Fri) 13:07
時世


朝から二度目の風呂に入って、おざなりながら手入れもして、髪も結わいて。


なんとなく、化粧なんかしたよ。


別に出かける予定もないけど、なんとなくね。

いつもはしてもアイシャドウと口紅くらいなんだけど……なんとなく。

アイラインもひいてさ。

睫毛も上げて、マスカラなんかつけてみて。

私って、ほら、目付きキツイらしいからさ。

目元いじると却ってアレらしいんだよね、自分じゃあわからないけど、そりゃあバジリスクのごとき効果を目の当たりにしちゃあね。

なんか皆、ビシィ!って音しそうなくらい硬直すんだよね。

次の瞬間にはからかってきやがるがね。



「……リゾットー!」




化けの皮も被ったし、執務室に突撃する。
フィレンツェさんはまだいるのか、それとも帰ってくれたのかは判らないけど。

私の体に“痕”がないうちにやれるだけのことはやっとかないと。

ガガさんが帰ってきたら、彼だって危ないんだから。
こういう恐ろしいこと考えるのは、やっぱり、私も所詮は女なんだろうな。



「リゾット、リゾット、今暇?」

「…さっきの話を聞いていたか?それとも具合……大丈夫なのか」

「体冷えてただけみたい。紅茶のんで風呂入り直したら治った」

「……出かける気か」

「なんで。出掛けないよ」

「?珍しく化粧して」

「なんとなく。やっぱり変かね?あ、お世辞はいらないけど」

「いいや、………」

「いやん。そんなガン見しないでいただける?
そんなことより何か手伝うことない?」



ちゃんと笑おうと思ったのに、多分はにかみになっちゃった。
余計なんとなく恥ずかしくて、目をそらして。



「やっぱ化粧落としてくるわ。そっちの方が君もいいみたいだしね」

「まさか。そのままでいいよ」



ほんと“恥”だよ。

つたないな、ほんと。

私ってば。

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05/10(Sat) 14:50
ロビン




さっきまで止まらなかったあくびは不思議なことにピタリと止まり、今度は小さく溜め息をついて眉間を揉む。

化粧?彼女が?

呆れてモノも言えないよ。

ハナから言う気なんてサラサラ無いのだけど。



(“さぁ疑って下さい”と言わんばかりだな…)



性に奔放な私が思うのもおかしなものだが、いくらなんでもソイツはお粗末過ぎやしないかい?

…いやいいよ、いいのだけどね。

むしろ普段からやるべきだと思うし。

装いはいつだって大事だよ。



(…なんで“今”やるかねェ…)



まぁ、確かにこんなことには慣れていない方がいい。



「………馬鹿馬鹿しい…」



もう考えるだけ無駄なんだな。

そう思ったら、チョコレートを我慢していたことさえ馬鹿らしくなってきた。







******






――数日後。

その修羅場(?)は私の予想以上に予想通り過ぎて。

笑えない。

いや、場違いにも笑いを堪えてソイツらを出迎えたわけだけれども。



「――で?」



のんびりと過ごすアジトの午後。

雨上がりの柔らかく明るい日差しに、気分も和らいできたというのに。



「コイツをどうにかしろ。」

「なぜ?」

「仕事にならん。」

「だろうね。」



アジトにはホルマジオ君、咲ちゃん。

…まぁいつものメンツだ。

それと、



「早く帰るわよ。」

「ガガさん…、フォルテさんも…!!」



フィーネにガブリエル、それから見る影も無くなったリゾルート。



「いいか…俺が“こんな姿”をしてまでわざわざこんな所へ足を運んでやった意味を少しは考えろ…!」

「意味、ねぇ…」



父親の服を着た子供のような出で立ちのリゾルートは、まるで威厳なんかありゃあしない。

そりゃあそうだ、今は“女”なのだからね。



「彼女だって帰りたがっているじゃあないか。」

「お前、」

「そうよ、私はミラノへ帰るんだから。」

「だそうだよ。」



お互い目も合わせない。

…正直目障りだ。

女になった姿まで瓜二つだなんてさ。





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05/11(Sun) 00:52
時世



“いつも通り”時は過ぎたよ、恙無く。


数日。

何事もなく、何も変わらず過ごしたよ。

フィレンツェさんともそれ以後特に何がある訳じゃあなかった。
私は噛み付くし、彼だって相変わらず苦笑なんざ浮かべて日々を過ごして。

まぁ彼の機嫌は基本的にあまりよろしくはないようだったけどその“理由”は皆共通の理解があったことであるし。


――――――あぁ、


なんとなくわかっちゃいたのだけれど。
ああ、ガガさん。
ああ、ああそうだよな、だったらば“彼”だって出てくるだろうよ遥々。

“こんな処”までね。



(今回もヤヤコシイな)

(正直、またか、って話ですよねもはや)



ホルマジオが、苦いような…いや、ニヤニヤも入ってるんだけど、そんな顔をして私を見たから。
私は彼に少しだけ肩を竦めて見せた。

現状、ああガガさんがね、我らがお国に帰ってきたらしいんだが。

フィレンツェさん家じゃなく“彼”の家に“帰る”っつってね。

フィーネ君まで引き連れてね、なんなんだよ。

今まさに目の前にお三方がフィレンツェさん向かいに対峙して修羅場ってやがるんだよな。

なんでうちでやるんだよ。



「………なに」

「なにじゃねーよ」



ホルマジオが今度は、肘でつついてきやがった。
なに、なんだよ。
別に私が口挟むことじゃないじゃん。

そりゃ、私、ガガさん好きだよ?大好きだよ?

フィレンツェさんと一緒にいるの見るの、好きだよ。

…………好きだよ……。



「ホレ、フィーネも困ってんじゃねェか」(ヒソヒソ)

「なに、まさか私に馬鹿やってこの空気壊せってゆーの?」(ヒソヒソ)



でも今の私はひどく醜いから、多分、これが嫉妬というヤツなんだろう。
消極的不満ってヤツ。
身勝手。
今口開いたら寧ろガガさんを傷つけてしまいそう。

私って、どんなヤツだっけこういう時どうやって動いてどんなこと言ってたっけどうしろっていうんだ。

幸いというべきか不幸と嘆くべきなのか。
“彼”は女体化してたから………畜生くそったれ。

全く“同じ”で頭が痛くなってきたよ。

泣きたいくらいだわ。
ああ、折角フィーネ君も来てるっていうのに。
ガガさんとフィレンツェさんが大変だってのに。

……私ってば、ナニ考えてんだろうな。

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05/11(Sun) 10:39
ロビン






彼女はね、リゾルートが居ると急に気が大きくなったり本気で甘えたりするんだ。

そこに私が混ざろものなら。

おそらく意識はしていないと思う。

意図しているようには思えないから。

――あれで故意にそう振る舞っているなら尚更。

“私”と“奴”

上下関係は勿論ある、年上へは敬意を払おう。

当然だ。

しかしそういった“上下”じゃあない。

“彼女を基準に”上か下か。

…つまりはそういうこと。



「…………」

「…………」



クソ、早く“帰れ”よ。

気まずいだろうな、2人とも。

いや、3人か。

フィーネも何が楽しくてノコノコ付いてきたんだか。

まったく、いい加減にしてくれ。

親切も過ぎれば余計なお世話だ。



「お前ら、いい加減――」

「早く帰りましょう。居るだけ無駄よ。」

「…………」



だからさっさと帰れよ。



「…居るだけ無駄って、それはいくらなんでもあんまりじゃあ――」

「フィーネ、黙れ。」

「――ありませんか?いいえ黙りません。」

「黙れ。」

「黙りませんよ。」

「勝手にノコノコ付いてきただけの分際で、」

「それは社長も同じでしょう。放っておけないからこそわざわざアジトへ、ここへ来たんでしょう。フォルテさんの目の前まで。」

「黙らないなら減俸だ。」

「お好きになさって下さい。」

「…怒らせるな。」

「僕の知ったことではありませんしとにかく、」

「ガキは黙ってろッ!!」



…喧嘩は余所でやってくれ。

とは言いずらい、流石に。

フィーネのことだ、リゾルートのお節介さえ無碍にするような彼女の発言に苛立ったんだろう。

だが、こういう時こそ言わせておくに限る。

いくら首を傾げるような言葉でもだ。



(埒があかない…)



コーヒーでも淹れるか。

そう思いたってソファから立ち上がる。

なぜかみんなが私を見ていたけれど、なんだよ。



「まだ話の途中だ。」

「へぇ、終わったと思っていたし終わらせて構わないのだけど。」

「…ルーク、」

「ガガさん…!!」



うんざりだ。

緩く首を振って、私はキッチンのドアを閉めた。





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05/11(Sun) 14:36
時世

キッチンに籠りやがったフィレンツェさん、なんてこと、ああ。


色々と、複雑ではある。


私は感情的ではあるけれどこれでも論理的思考は捨てちゃいないと思う。

……頭に血が昇ると暴走してしまうのは別として。

っていうか私、誰かが自分より感情的になると却って冷めるしな。



「………(くそ、)
っていうかそもそも原因、何なんですかね……」



私が知ってる限りのことだけだったらキレるぞ、それ以上の理由がないと。

ボソリと呟いたら、ガガさんがチラリとこちらを見たけど、まぁどうでもいい。全く参っちゃうよね。
皆してさ。
フィーネ君も正論言ったって駄目だよ無駄無駄。

結局どっちも、フィレンツェさんもガガさんも意固地になってるだけなんだろ?

意固地になったが最後頭じゃどうにもならないなんてよくあることだ。

私もよくやる。

表向きガガさんが折衝して受け入れているようで、でもこういう大事になると、いつもはフィレンツェさん歩みよって、今回だってどうせそうなるんだろ全く痴話喧嘩はいはい御馳走様。

………なんて。

自衛したところで、仕方ない、フィレンツェさんは、私の“痕”を持ってる。
私に都合が悪いんだよ“このまま”ガガさんがフィレンツェさんの処に“帰る”なんて。
でも“彼”のところに留まってるのも気に入らない。

好きなのに。



「私、紅茶飲みたいな。
ホルマジオ、いる?」

「フィレンツェがコーヒー淹れてるんじゃねぇの」

「寧ろあっちで淹れて自分で飲んでこっち帰ってこないんじゃない」



呑気な会話だ。
非難めいた視線を感じるけど、フィーネ君かな?
ああ、いつもなら私もそっち側の人間だ。



「あ――――ガガさん」

「なによ」

「お仕事お疲れ様でした。取り敢えずお帰りなさい」



一応本心ではある。
でも嫌味に聞こえるかな。
それはそれで仕方ない。



「紅茶のがいい人他にもいます?いませんね」



淡々と、いや苦笑して私はその場を離れてキッチンの扉に手をかけて。



「“あとは私でやる”からさっさと来客捌いて下さいよ」



“痕”は数日で消える訳もなく、でもやっぱり私が自分でどうにかするからさ、フィレンツェさん。

いつもみたいに、
貴方が折れてあげれば?

“そういうことじゃない”のはなんとなく、わかってたから、相対するのは嫌だから、扉越しに言って。
それから私は、後はシカトする気でキッチンに踏み込んで茶葉を漁った。

あれ、でもこれやっぱり。

“いつものこと”じゃね?

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