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参加者専用。
製作者たちのいろいろ。
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(このスレはこれ以上書き込めません)
05/17(Tue) 17:28
会話スレ2
ロビン
どうしてこうなった(愕然
(・ω・`)
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05/17(Tue) 17:29
【続、お狐様とお月様】
ロビン
“何を馬鹿なことを”
それから、
“私を想ってくれなくていい”
“でも本当は、”
様々な感情が、そこにはある。
確かにあるのだ。
なのに口にしないのは、枷となる存在故。
「フィーネ、」
主様に呼ばれ、視線をやる。
目が合った。
されどそれだけでは僕にはわからない。
頭に血が上りすぎているからか。
主様は常日頃、顔色を早々変えはしない。
「何でしょう、主様…」
すると再び、
「…フィーネ。」
名を呼ばれた。
――あ、…
忍び笑う主様は既に二人を見やっている。
「では最後、これだけお付き合い下さいませ…」
「くどい。」
「お狐様、“名”は何と申されるのですか?」
*****
漸く。
漸く気付いたか。
出くわしてこの方、この男の女狐の呼び方が気になっておった。
“これ”やら“狐”やら。
互いに知る仲であろうに、何故かと考えてはおったのだ。
余程見下しておるならまだしも、――いや、判じかねる所ではあったのだが。
だが可能性は大いにある。
獣には名など無いことが多い。
なれば勝手に押し付けてしまえばよいこと。
それをしなかったということか?
いや一度は試みたに違いない。
しかしそれが上手くいかなかったからこそ今のこの状態なのだとしたら――
狐の嫁入りは、茶番ではあれど嘘ではなかったということだ。
そして今、都合の良いことに二人を繋いだままの勾玉。
“忌み名は誰にも知られてはならぬ”
「――…あぁ、綺麗な名だ…」
「…何と?まさかお前、」
「そんな、違…」
ふっと和らぐフィーネ。
途端に鋭く見竦めた男に青ざめる女狐。
さぁ、フィーネ。
お前の“漢”を見せてみろ。
今宵、お前は“漢”となる。
「――咲(サキ)、」
それは、花開くような、慈しみ愛溢れた温かい“漢”の声色であった。
閉ざされた暗闇の先に、針の先ほどの小さな光。
その光は小さくとも、強く鋭く、何処までも照らしてゆくに違いないのだ。
(続
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05/18(Wed) 16:37
【続、お狐様とお月様】
ロビン
“音”というものは陰陽道にとって欠かせぬもの。
例えば呪などは、声に出し唱えて初めてそれはかなう。
祭事に用いる楽器も然り。
神に祈る際、我らの願いを乗せ、遠く遥か彼方まで運んでくれるものと信じられておった。
「――…咲(サキ)…」
あぁ、なんと美しい。
この混沌の世にてこれほど美しいことがあろうか。
圧倒的な強さ、伴った力、朧気に光り輝く白銀の輪郭は隔絶されたる絶対的な向こう側の世界さえ垣間見える。
その慈愛に満ちた穢れ無き声は、何者をも寄せ付けずしかし何者をも惹き付けるであろう。
穏やかな春の日溜まりのごとく温かく柔らかく微笑む深紅の瞳、鋭き犬歯覗く控え目なる口元はゆるりとほのかに弧を描いて。
これが“神”か――
初めて見た者は打ち振るえるであろう神々しきその姿。
…ふふ、こやつは“我が式神”、“我が友”ぞ。
突然に目の当たりにした二人は呆け、そしていち早く俺の視線に気付いた女狐。
古より“女”というものは勘が良い。
獣であれば尚更のことは言うまでもなし。
この女狐は俺の想像も及ばぬ程の葛藤をし、過去を振り返り、未来を思う。
フィーネを、男を、仲間を想い、自らに問うた。
そこで“思い出した”のだ。
はっ、と、その黒い眼の奥底から揺らめく“意志”。
その“意志”は“叫び”であり、同時に“希望”でもあった。
煌めき溢るるその眼、幾度と打たれようとも起き上がり這い上がらんと足掻く力強き生命力はさながら湧き出づる泉がごとし。
意識無くその手の触れた喉。
水面より手を伸ばし、こちら側へ。
さぁ、思い出せ。
お前は何人たりと支配出来ぬ。
お前の一生は誰が為のものか。
誰が為のその命か。
思い出せ。
思い出したらば、それを欲したならば。
次はもう、“音”と為すのみぞ。
「――、…あい…!」
――呼吸もままならぬ生まれたばかりの子のような、掠れた小さな産声のようであった。
その声に、いくつもの悔いや自責、そして乗せた“願い”。
そうだ、獣は獣らしくあればよい。
お前が申したのだ。
「“咲”、お前はお前のものぞ!!」
「あい!!」
よう申した。
頷き、どちらともなく笑う。
それは誰もが幾度と瞬きも出来ぬほど、短き間の出来事であった。
(続
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05/21(Sat) 09:12
【続、お狐様とお月様】
ロビン
それは“瞬く間”の出来事であった。
そして同時に、主様に、――どういうわけかはわからないけれど。
幼き頃の朧気なる記憶の中の父様が見えた気がした。
あぁ、父様――
「おのれリゾルート…ッ!!」
地獄の底でぐらぐらと煮立つ釜の湯よりも更に煮えたぎった男の表情。
僕は誰よりも疾く動き出し雷にて起こした蒸気に紛れ、お狐様をさらう。
主様は未だ捕らわれの身なれば、僕しか彼女を護ることは出来なかったから。
「小賢しい真似を…!!急急如律令、おんまけいしばらやそわか!!」
主様による結界を解かれていた男は、苛立ちの中にありながらも冷静に呪にて蒸気を吹き飛ばす。
瞬時に視界は晴れ、その晴れた視界からこちらを見た男は小さく舌打ちを。
「…それが狙いであったか。」
対峙した男。
「…目的は、いつも一つとは限らない…」
蒸気を突風に吹き飛ばされ、姿を見せた僕は主様の隣に並び、お狐様をそっと降ろす。
今僕は戒めにより縛られてはいない。
そして元々、あの“九字”は護りの呪。
本来の役割でないものに使われた呪を、本来の力を持った僕が破れぬはずが無かった。
「――…さて。」
ぴくりと片眉を上げ、すっと目を細めた男。
両肩に置かれた手にふう、と溜め息を漏らす。
「…そういえば、“そう”であったな。」
「そういうこと。」
男の肩に手を置いたのは、
「して、護法童子。私をどうすると?」
「どうもしねぇさ。」
主様の五芒星の札を拾い上げ、消えたはずであった護法童子が声を発した途端に現れたのだから、男の言い分も尤もだ。
隣からふっと笑う気配。
してやったりと不敵な笑みでも浮かべているであろう主様に僕もつられて笑う。
「“咲”はくれてやる。それが手に入らぬのならもう私は用は無い。煮るなり焼くなり好きにするがよい。」
乙護法に背後を取られ、僕たちと向かい合う男は呆れたような仕草で。
主様にそろりと目配せをすると、主様はきっと口元を引き結んでから、曰わく。
「…………、はは、あぁ…申したいことは山ほどありましたが今は止めておきましょう。ただ、」
「何だ。」
無防備に男の目の前まで進み出た主様。
次の瞬間、
「――ッ!!」
男の横っ面を、渾身の力を込めて握り拳を振るった。
(続
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05/21(Sat) 11:07
【続、お狐様とお月様】
ロビン
殴り抜いた主様の拳は未だ握り締められたまま。
涼しいままの表情は、けれど様々な感情をありありと映し出していた。
一方、そんな主様には目もくれず。
乙護法が冷たく見下ろす先には、あの男が肩を小さく揺らしている。
それからくつくつと嗤っていることに気付き、次の瞬間には山中に響き渡る程の大きな笑い声を上げていた。
「それで“名裁き”のつもりかリゾルート!!」
「……」
「甘いッ!!貴様よもや狂うておるのではなかろうな!?何故殺さなんだ!?始末すればよいものを何故かような生温いことを!!」
殴られた頬など気にも止めず、切れた口内もその血の滴るまま。
嘲り嗤うその姿は、さながら糸の切れた凧にも似ているようであった。
「――テメェ、何か勘違いしてねぇか?」
流石に勘に障ったらしい主様が、目の前の男に地響きのごとく低い低い声で告げる。
「…、裁き?俺が人を裁けるとでも思うておられるのか?これはただの“憂さ晴らし”で御座います。」
「ほう?して、その“憂さ”は晴らせたか?」
「いいえ。」
「では何故畳み掛けぬのだ、リゾルートよ。」
見下した含み笑いを伴う男の顔。
主様の背中はしかし、物語る。
もう、僕にはこの先が見えていた。
「拳を振るう価値もありませぬ故。」
透き通った、どこまでも真っ直ぐな声色。
言葉は突き放してはいたものの、不思議と誠実さが滲み出ていたのだからおかしなものだった。
「誠に愚かな男よ。」
「“人”とはかようなものでございましょう。」
「あぁ、そうだ。」
――それから。
どちらともなく背を向け、僕たちは無言のままあの男と別れた。
お狐様は勾玉を返すとひょいと主様に抱かれ、じたばたともがき主様に度々鼻先を摘ままれつつ僕に跨がり山を降りる。
「主様、」
「そなたの主ではない。何だ。」
狐の姿に戻ったお狐様が、ふと思い出したように口を開く。
「名を知られたのはどちらも同じなのに、何故ニヒト殿は同じようになさらなかったのですか?」
「聡い男であるからだ。」
「それはどういったことで?」
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