期待させないでよ──…

□家庭科の授業で
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「雪愛」


すっかり恋色一色な教室の中で、さつきがマフラーを編む手を止めた。
家庭科の先生はゆるくて、全然怒らないから話しても平気だ。


「なに?」

「雪愛って、赤司君のこと、好きなんだよね?」


な、なんでいきなり……?


……ていうか、赤司君が違うクラスでよかった。
さっちゃん、声大きいよ……。



「この間、はぐらかされたから……」


え、い、今、心読まれたの!?

さっちゃんって、実は妖怪サトリ? 腹黒メガネ??


「違うよー、全部声に出てた。
 あと、高校ネタ禁止ね?」



さつきがくすっと笑う。

こういう言動が、大人っぽい。
ちょっと羨ましいし憧れる。


私には無理だし……。





「……で、雪愛」



……なんでだろ。
さっちゃんの笑顔が怖い。



「赤司君のこと、好きなんだよね?」

「……ハイ、ソノトオリデス」


やっぱりさっちゃんには敵わない……。




それから、しばらくさっちゃんにからかわれた。

けど、私も黒子君ネタでからかい返した。

そして、なんだかんだで終わる家庭科の授業。


今日は、全然マフラー進まなかったな、なんて思いつつ、
私は、マフラーが完成した後に思いを馳せていた。



赤司君に、ちゃんと渡せるといいな……。

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