期待させないでよ──…
□毛糸の色は……
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「雪愛、毛糸何色にするの?」
手芸用品店の毛糸コーナーで、親友のさっちゃんこと桃井さつきがこっちを振り返った。
綺麗な桃色の髪がふわっと舞う。
目の前の棚には、様々な色の毛糸でカラフルに彩られている。
ここは、隣の駅の大きなお店だから、
品揃えも豊富だし、質の良い毛糸もたくさん売ってる。
まあ、なんで私とさっちゃんがこんなとこにいるのかというと……
それは、家庭科の授業でマフラーを編むことになったから。
ただ編むだけなら、徒歩5分のとこにあるヨーカ◯ーでもよかったんだけど。
「私、マフラー完成したら彼氏に渡そうかなぁ……」
というクラスメイトの発言により、いつの間にか、
好きな人にマフラーを渡すと、両想いになれる
というジンクスが生まれていた。
始めてそれを聞いた時はびっくりした。
なんていうか……、最初のクラスメイトの発言から、内容が変わりすぎて。
まあ、とりあえず、そんなわけで、今の帝光中は、バレンタインかってほど、恋愛に染まっていた。
……ていうか、渡すものがマフラーなのと、男の子から渡すのもアリっていうのを除けば、バレンタインそのものだけど。
それで、さっちゃんが黒子君にマフラー渡す気マンマンで。
ちょっとでもいい毛糸を使いたくて、わざわざ電車でここまで来たのだ。
私は、毛糸の玉を5、6個手に取ると、さっちゃんに聞いてみた。
「さっちゃんは、毛糸、何色にするの?」