弟はおとなりさん

□弟はおとなりさん*3*
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何気ない

彩の言葉が

耳から離れない…





*-*-*-*-*-*

弟はおとなりさん

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「来るなら来るってメールしてよ!」

桃「ま、会えたんだから別にいーだろ?」

「そういう問題じゃなくて……」


揺れるバスの中、
私の声はエンジンと雨の音に消える。


バスは雨のせいでいつもより混んでいて、少し蒸し暑い。
吊革につかまる身体が揺れるたびに、隣にいる武や他の人に肩がぶつかる。


桃「カバン持ってやろうか?」
「へいき、大丈夫」
桃「そっか?無理すんなよ」



結露した窓の外には、ずぶ濡れの通学路…。

交差点の信号でバスが停止する。
遠くに、武の好きなファーストフード店の看板が見えた………


中学の頃は、タケの自転車でよくニケツして帰ってたっけ…

遅くまで部活してるタケを待って、それから帰り道に一緒に買い食いするのが楽しみだったな…。



なんだか遠い昔のことみたい…





桃「おいっ!!!」



ぐわっと傾く視界…

急発進して大きく揺れるバス。

強い力に耐えられず、吊革から手が滑った!



「ーーっ!!!!」


やば…こけるっ!!!


ぎゅっと目をつぶって
次の衝撃にかまえる……




ぽすっ……。



「……???」


効果音をつけるならそんな感じ。


強い力で腕を引かれたと思ったら
目の前に感じる、ちょっと汗臭い馴染みのある匂い…


桃「なにボーっとしてんだよ!?」


そっと目を開けて見えたのは…

冷たいバスの床じゃなくて…武の制服。


桃「あぶねぇなぁ〜、あぶねぇよ…」


すっぽりと武の腕の中に収まってる私…

利き手は吊革につかまったまま、左腕でしっかり私を支えてる武…


背中に回された太い腕の感触に
身体がかーっと熱くなる。


「〜〜っひゃあ!!!!」

桃「うぉっ⁉︎っと、と、、ば、ばか!!!」


両腕を伸ばして武から身体を離すけど、直ぐにまたあの強い力で引き戻された。


桃「あっぶねぇだろ⁉︎何やってんだよ⁉︎」
「ご、ごめ…つぃ…」
桃「もうちょいだから、俺につかまってろ」
「う…ん……。ありがと…」


大人しくなった私を確認してから
武は抱きしめていた腕をそっと下げて、私の腰をぐっと支える……。


ごつごつした大きな手…

背中に感じる力強い腕…

いつもの武の匂いに混じる…



…………男の……香り…?




あれ……?
タケって、こんなだったっけ?


背だってこんなに高かったかな…?
力だってこんなに強かったっけ…?


私の知ってるタケは…
もっと、子どもっぽくて…可愛くて…




桃「は〜、腹減ったなぁ〜!!」


隣のお腹から聞こえる、ぐぅ〜っという派手な音…
近くにいた乗客がクスクスと笑う。
あ、どうもスンマセン、って少しおちゃらけて答える武…


「ぷぷっ。…ばか…」


ホッとして笑いがこぼれる…。


うん、やっぱりタケはタケだ!

昔と変わらない…私がよく知ってるタケ。

しばらく会ってなかったし…
しかも彩が変なこと言うから…



なかなか馴染めない高校生活。

忙しく余裕のない毎日に、
楽しかった中学時代が恋しくて…

きっと気持ちが弱ってるだけだ……














弟はおとなりさん*3*

〜 帰り道の家族 〜

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