あいをおしえて

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“私達ってなんか似てるよね?”


真子と初めて出会ったのは
小学校の入学式の日。



いきなり話しかけてきた彼女は


太陽みたいな笑顔で嬉しそうに



自分の机で小さくしてた私にそう言った…





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あいをおしえて

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『友達の付き添いでサッカー部の応援行っただけって何度も言ってるのに!!!
英二ったら浮気だ!浮気だ〜!ってうるさいの!!!

私にも付き合いってもんがあるっつーのーーーーっ!!!』


部屋中…いや、家中に響く

彼女の雄叫び…


「………。声…大きいって…」


もう恒例になっているお泊まり会。

大きな喧嘩をした日の夜、
真子は必ずうちに来る。


あれだけ学校で言い争ってたのに…
彼女の怒りは全く勢いを失っていない。


毎回思うんだけど、
このカップルのスタミナってすごい…



『それにね!岡本くんとちょっ〜と話しただけなのに…もう二度とあいつと口きくな〜!なんて言うのよ!!?岡本くんがかっこいいからダメなんだって!
無茶苦茶だと思わない⁉︎』


菊丸くんの無茶苦茶はいつものこと。


かっこよかろうが悪かろうが…
きっと彼は、出来ることなら自分以外の全ての男性と関わることを禁じたいはず…。


『あの、、ばかねこーーーっ!!!』

愚痴るだけじゃ収まらず…
今度はそばに置いてあった猫のぬいぐるみの首をつかんで、怒りの叫びをぶつけだす。



そのにゃーさん…
不二くんからもらったやつなんだけど……。



「ええ、そうね。本当に酷いわ。だからもう少し静かにしてちょうだい…」



『…………ハィ……ごめんなさい』


普段と違う威圧的な私の口調に、やばいって顔をして静かになる。
だけどまだまだ愚痴り足りなくて、真子は小さく唇をとがらせた。


小さい頃から自分の気持ちに嘘のつけない真子。
思ったことをなんでもそのまま口にしてしまう彼女に、昔は何度もヒヤヒヤさせられた。
最近は真子も成長して、少し考えてから言葉にするようにはなってくれたけど…。


表情まではまだコントロール出来ないらしい。

だいたい顔に書いてある。


菊丸くんもそうだけど…
何故こんなにも分かりやすい者同士が、何度も衝突してしまうのか…


私には不思議。



菊丸くんの顔にも…

真子の顔にも…


“大好き”の文字がはっきり見えてるのに。




「菊丸くんがヤキモチ妬きなのは真子も分かってることじゃない。
男子と接する機会を減らすとか出来ないの?」

『無理…。だってみんな友達だし…』


この会話も何度目だろう…
真子の答えが分かっていても、私にはこれ以上良い考えが見つからなくて毎回同じことを言っている。


『これでも気を付けてるもん…』

「まあ、確かに…。あんまり自分から男子に話しかけなくなったよね」



明るくて人懐っこい性格の真子。


男女関係なく誰とでも仲良くなれるのは彼女の長所のひとつ。

初めて会った人にも自分から積極的に話しかけるし、知らない人に話しかけられても拒んだりしないでニコニコと接することが出来る。


私にはない…
彼女のすごいところ。



菊丸くんがヤキモチ妬きたくなる気持ちも分かるけど…
真子がこうゆう性格じゃなかったら…2人は付き合ってなかったと思う。



だって、私だったら絶対無理だもの。


あんな賑やかな人に関わりたいなんて…
かけらも思わない。

だいいち…
明らかに女子にモテそうな男子なんて…
敵を作るようなものじゃない!

たとえ自分からじゃなくても、
話しかけられた側だとしても…

私なら会話は最小限!
当たり障りのない程度に、早めに切り上げる。


人と関わるのは正直苦手。
知らない人や華やかな人は特に。
私は自分の心のテリトリーを乱されるのが、何よりも嫌い。


こんな性格の私だから…

真子の社交性には本当に感謝してる。

もし、真子が菊丸くんと仲良くなってなかったら…


私は不二くんと出会えてなかった…。


出会えてたとしても、不二くんに名前を呼んでもらえる日なんて一生来なかったと思う。



……だけど…。


「やっぱり私には分からないかな。彼氏が嫌がってるのに、友達の付き合いを優先するなんて…」

『またその話?』

ぶうっと膨れる彼女…



正反対って言ってもいいくらい
私達の性格は全く違う。

お互い持ってるものが違うから
一緒にいて楽しいし尊敬もしてる。

彼女みたいになりたいって
うらやましく思うこともたくさんある…。


けれど…その分どうしても

理解出来ないこともある……。


「私なら…好きな人を優先するよ」

『私にはわからないよ。彼氏か友達かなんて…!みんな大事だもん。私は英二のことも、みんなのことも…同じくらい大事に思ってる』

「そうかもしれないけど…。
好きな人を失うかもしれないようなこと、私なら絶対にしないわ」

『私だって……。英二を怒らせたくてわざとしてる訳じゃないもん。せっかく友達になってくれた人に、こっちの都合で傷つけるようなことしたくないの!

だけど……
英二を傷つけるのも嫌……』


ぬいぐるみを強く抱きしめて、唇を噛み締める。
苦しそうなその表情は、今にも崩れて泣き出してしまいそう。

見てる私まで胸が苦しくなる。



真子が優しい子だって
私が一番よく知っている。

それに、本当はすごく臆病だってことも…


真子は怖いんだよね?

誰かを傷つけて自分も傷つくことが…。


だけどね……



「自分が本当に大切なもの、ちゃんと選んでいかないと……。全部を大事にするなんて無理なのよ?」







守りたいものがあるなら



何かを捨てなきゃ…



諦めなきゃ…



たとえそれが

自分に嘘をつくことだとしても……















あいをおしえて*2*

〜 パジャマパーティー 〜

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