青春学園中等部

□恋する乙女心はヘビー級
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めんどくさいんだよね…


なんで分かんないかな…





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恋する乙女心はヘビー級

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「私のこと好きじゃないの?」



はぁ…

また始まった…



「ねぇ、こっち向いてよ!」



何でいつもいつも…

ほんとめんどくさい…



「リョーマの馬鹿!!!」



眉間にたっぷりのシワを寄せて
瞳には溢れんばかりの涙…。


『今日はテニスの試合見るって言ったじゃん』


そんな彼女を無視して、
テレビから視線を外さない俺って…

傍から見たら、冷たい奴なんだろうね…

でもさ…


『それでもいいって家に来たのは真子だろ…?』



俺は悪くないっしょ?



「でも、でも…、せっかく来てるのに!
さっきからリョーマ、テレビばっかり見て!!私の方少しも見てくれないんだもん!!!」
『だから?今日は試合見るって言ってただろ』
「それでも少しは私のこと見てくれたりとか、手繋いだりとか…」



は?

わけがわからない…

何でテレビ見ながらいちゃつかなきゃいけないわけ?



「リョーマは私のこと好きじゃないの?」



だから…

何でそうなるんだよ…



『そんなことないから…』
「嘘!!!だったらこっち向いてよ!」
『…………』



こうなるって分かってたから嫌だったんだ。

だから、ちゃんと確認したのに…。



「もういい!!!リョーマの馬鹿!!!」
『痛っ…』


黙り込む俺に、そばにあった雑誌を投げつけて部屋を出て行く真子…。


『勝手にすれば?』


乱暴に閉められた扉に、ため息混じりにつぶやく。

追いかけたりなんてしない。

再び視線をテレビに戻す。



女ってめんどくさい…



態度に示さなきゃ不安がるし…

何でもかんでも聞きたがるくせに

言葉にするとまた疑う…。



なら、聞かなきゃいいのに…



いちゃついてなきゃ好きってことにはならないわけ?


いつでも好きって囁かなきゃいけないわけ?


俺にも俺の時間があるんだけど?


全部が全部、自分のものにならなきゃ不安なわけ?


女って…


『ほんと…、わけ分かんない…』



さっさと別れてしまえばいいのに…


めんどくさいめんどくさいと言いながら…

でも、

そうしない自分が1番…



『わけ分かんないんだよね…』



部屋の隅に置きっ放しのあいつのショルダーバッグを横目に、小さくこぼれる溜息と…

それに混じる笑み。



『まだまだだね』



数十分もすれば、真子は戻って来る…。


何で追い掛けて来てくれないの!?


って、泣いてるのか怒ってるのか分からない顔で…。


あまりに不細工な顔で睨むから…


仕方なく俺は言ってやる。


ただ一言。



“真子、おいで…”



ってね…。




そうすれば…

あいつはむくれながらも、

俺の胡座の前に背を向けて、大人しくちょこんと座るんだ…。


素直に抱き付いてくればいいのに…


まったく…

意地っ張りなんだよね。



だから最後は俺が折れてあげる。



小さな背中を

後ろからぎゅっと抱きしめて…

真子の可愛い耳にそっと甘い言葉を囁く。


すると、

首まで真っ赤にした真子が

俺のことをまた嘘つき呼ばわりするから…


素直じゃないその口を

乱暴に塞いでやる…。





ーートン、トン、トン、トン…



階段を駆け上がる足音が、俺のドアの前で止まる。


勢いよく開いたドアと共に聞こえて来たのは…


ほらね…

やっぱり。



「何で追い掛けて来てくれないの!?」




そうやって…

いつもいつも俺を試して…

疑って…。


ほんと真子ってめんどくさい。





「……っん…、はっ…」



息苦しそうな唇をそっと離すと…

トロンとした表情で


「もう一回…」


って、キスをねだる。





ねぇ…

真子…。


ほんと全然分かってないよね…。


俺がどんだけ真子のことが好きなのか…



どんなにめんどくさくたって

どんなにイライラしたって…



キスをした後の

嬉しそうなそのふにゃっとした笑みを見ると…



一瞬にして…
今までのモヤモヤは

どうでもいいことに変わる…。




「私ばっかり好きみたいで悔しいな…」



ぎゅっと控えめに抱きつきながら、俺の胸の中で呟く真子…。




ねぇ…


悔しいとか…余裕とか…
どっちが大きいとか小さいとか…
勝ってるとか負けてるとか…


テニスじゃないんだからさ…。


比べるものじゃないだろ?


あんたしか見えてないから…

ちゃんと好きだから…


言葉が足りなかったり、望み通りの態度じゃない時が多いのかもしれかいけど…。



腕の中の小さな身体を強く抱きしめる…。


自分でもわかる…

駆け足する鼓動…。



ちゃんと聞こえてるんでしょ…?



だから、そんな不安になるなよ。


小さなことで、泣いたり拗ねたりしないで…





これからも

俺の隣で…


ずっと笑っててよ…。

















(ぐぅ〜…)
(リョーマ、お腹鳴ってるよ?)
(………にゃろう…)
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