青春学園中等部
□なぜってきみが好きだから
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ぽかぽかのお日様
のどかな昼休み
木漏れ日の光にうとうとすれば
ほら…
聞こえてくる…
大好きな声……
*-*-*-*-*-*-*-*-*
なぜってきみが好きだから
*-*-*-*-*-*-*-*-*
『桜井さん、5時間目遅刻するぞ』
瞼を上げれば見えてくる…
私を見下ろす大石くんの真面目な顔。
彼の表情を確認してから、私はまた瞼を閉じる。
「べつにいいよ〜。どうせ英語だし…」
『良くないだろ?苦手だからってサボりはダメだ』
「英語勉強しなくても生きていけるもーん」
『そうかもしれないけど、授業は出なきゃ』
「やだやだやだ。眠いもん」
微かに聞こえてくるため息。
瞼を上げれば見えてくる…
私を見下ろす大石くんの困った顔。
彼のこの表情がたまらなく好き。
『頼むから起きてくれよ?』
「いや〜」
『早くしないと授業遅れちゃうからさ…』
「大石くん1人で教室戻っていーよ?」
『そんなこと出来るわけないだろ…』
綺麗な形の頭を抱え込んで…
更に困った顔をする大石くん。
だけど…
けっして私をほって行かない大石くん。
彼の人の良さと優しさにつけ込んで…
私はよくこうやって彼を独り占めしてる。
腕時計を確認して、そわそわしだす大石くん。
ああ…
そろそろ時間切れかな…
私は全然構わないのだけど、彼を遅刻させるのは絶対嫌だ…。
だけど最後にもう一度…
「じゃぁ…、
大石くんがキスしてくれたら起きるよ」
首まで真っ赤に染まる彼の顔…
『なななな、ななな、なな、なにいっ…』
ありゃりゃりゃ…?
ちょっとイジメ過ぎちゃったかな?
言葉も変だけど、
動きも変な大石くん…。
可哀想だから、今日はこのくらいで…
「ふふ、冗談だよ!」
起き上がって伸びをする。
いたずらっぽく笑って見せたら、ホッとした表情の大石くん。
そんな彼を見て…ちょっと傷つく私…。
教室までの道のりを…
並んで歩く。
2人きりの時間が終わってしまう
この廊下が嫌い。
「大石くんも大変だね?私みたいなクラスメイトがいて…」
『そう思うなら、昼寝は程々にしてくれな?』
「わざわざ探しに来なくていいのに。昼休みなくなっちゃうし、探すの大変でしょ?」
廊下の向こうに見えて来た…
3年2組のプレート。
ああ…
ほんとにもうすぐ終わりだ。
『いや。桜井さんを探すのに苦労したことはないかな』
「…え?」
だって…、
わざと毎回場所変えて………
『なぜだが分からないけど、
いつも分かるんだよ…………』
ほんのり淡い桃色の頬で…
穏やかに微笑む大石くん。
『今日はここにいるって…ね……』
真面目な顔の大石くん。
困った顔の大石くん。
照れた顔の大石くん。
優しく微笑む大石くん。
どんどん増える大好きな顔…
なんでかな…
全部独り占めしたくてたまらないの…。
(さーて!今日はどこでお昼寝しようかな〜)
(……《大石のテリトリー発動》……)