噂話

□嫌な噂を聞いてね
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牛鬼も目が覚め、リクオは一緒に来ていた友達の元へ帰って行った。

私はと言うと牛頭丸と馬頭丸の様子を見に来ていた。

馬頭丸の方は怪我も少なく動き回ることができるが牛頭丸の方は傷が深くなかったとはいえ安静にしなければならないらしい。

ということで話し相手にでもなってやろうと思って二人がいる部屋に来ていた。


「二人とも調子はどうだい?」

「ボクは全然大丈夫だけど牛頭丸は、」

「こんなの全然大丈夫だ」

「ああっ、動いちゃダメだよう!」

「うるせえ!」

「それだけ元気なら心配いらないか」


馬頭丸もいることだし無理することもないだろう。


「さあて、私は行くとするかな」

「え〜、もう帰っちゃうの?」

「ああ。でも奴良組の本家にお世話になろうかと思ってはいるよ。牛鬼がどう裁かれるのか気になるし、それに、」


嫌な噂を聞いたからねえ。


『ボクは兄貴たちと違う。その違いを今こそ見せてやる。奴良リクオ…会えるのが楽しみだ』


また一騒動起こりそうなんだ。


「サツキ?」

「ああ、いや、なんでもない」











奴良組本家に着いた。
以前来たときは警戒されたが今回はだいたいの妖怪が快く迎えてくれた。

どうやら総大将の友人として奴良組全体に名前だけは知れ渡っているようだ。
そう、名前だけ。鯉伴が死んでからはなかなかこの地に足が向かなかった。無意識に避けていたのだ。

一度会っただけなのにこんなにも鯉伴に惹かれていたのだと気づかされ自分でも呆れた。

だから私を見たことのある妖怪の方が少ないのだ。

私自身も噂しか聞いたことのない妖怪もたくさんいる。

その中で私は見知った妖怪を見つけた。


「ちょいとそこのお兄さん」

「はい、なんでしょu…」


私の顔を見るなり驚いて手に持っていた桶を落とす。
かこーんといい音が聞こえた。


「サツキ、」

「久しぶりだねえ首無」

「驚いたよ」

「だろうねえ」


じゃなきゃふわふわと浮いた驚いた顔は見れなかっただろう。
首無とは彼が奴良組に入る前からの知り合いだ。もちろん紀乃とも。

なぜ私が彼に話しかけたのかというと手っ取り早くぬらりひょんのところに連れて行ってもらおうと思ったからだ。


「ぬらりひょんに用事があるんだけど連れて行ってもらえるかい?」

「用事?」

「奴良組に少し置いてもらえないかと思ってねえ」

「そりゃあ、毛女郎も喜ぶよ」


毛女郎とは紀乃のこと。昔から紀乃とはうまが合う。

すぐに首無は私のことをぬらりひょんの元へ連れて行ってくれた。


「総大将、少々よろしいでしょうか」

「首無かい?構わんよ」

「失礼します」


首無がふすまを開けるとぬらりひょんが座布団に座ってお茶を飲んでいた。


「おお、サツキか、久しぶりじゃのう」

「ああ、久しぶりだねえ」

「今日は何しに?」

「少し話をしにね、」

「まあた、すぐ帰るのか」

「それなんですがねえ、少しここに置いてもらえないかい?」

「そうかそうか、帰るのか…ん?お前さん、今なんと」

「少しの間ここに置いてはくれませんかねえ」


私がもう一度言うと驚いた顔をするぬらりひょん。


「…珍しいこともあるもんだ」

「ふふ、そんなに驚かなくても」


ぬらりひょんがあまりにも驚いた顔をするから思わず笑いが込み上げて来た。
クスクスと笑っているとまたぬらりひょんは驚いた顔をする。気づくと首無も驚いた表情をしていた。


「なんだい?」

「お前さん、笑うと女じゃなあ」

「おや、酷い」

「いつもが男らしすぎるんじゃ」


まあ、仕方が無いことだ。
けれど笑い方が女らしいとは初めて言われた。


「ところで今は学校にいていないがリクオには会ったのかい?」

「ああ、捩目山でね。成長したねえ」

「妖怪の姿はワシらそっくりじゃろう?」

「…ああ、」

「じゃが、まだまだだ。ワシには到底及ばん」

「そりゃあそうさ、ところで私をここに置いてくれるのかい?」

「ああ、そうじゃった。もちろんかまわん。むしろ組に…」

「それは遠慮しとくよ」

「なんじゃ残念だ」


それから私は空いてる部屋を借りてしばらく奴良組にいることになった。





20140213

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