噂話
□傍観しとくさ
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あれから数年後。
私は再び奴良組の地にやってきていた。
なんでもリクオが三代目を継ぐと宣言したらしい。しかし残念ながら本人は憶えてないという話も聞こえた。
最近奴良組もすっかり弱体化している。鯉半がいなくなってからだ。
これからの運命はリクオにかかっているだろう。
どれほど成長したのか見てやろうじゃないか。
『奴良くんたち今度の休みに捻目山に行くんだって』
噂が聞こえる。
そうか捻目山。確か牛鬼が統轄するとこだったか。
そういえば近頃奴良組に裏切り者がいるかも知れないという噂も聞いたなあ。
これは一波乱起きそうな。
とりあえず久しぶりに牛鬼にでも会いに行くか。そうすればリクオにも会えるだろう。
▽
捻目山はなんとなく緊張に包まれていた。
やっぱりこれは何かあるな。
いつもは元気に走り回る馬頭丸の姿も見えない。
牛鬼とは一度会ったことがある。だからこれは私の記憶。
牛鬼たちの住まう家に辿り着くと誰かいる気配がようやくした。
「ごめんくださいな」
そう言って誰かいるような気配がする部屋に入った。
「サツキ!?」
「やあ、牛頭丸、馬頭丸。そして牛鬼」
「うわあ!サツキだ!久しぶりだね!」
驚く牛頭丸と、嬉しそうに駆け寄る馬頭丸。
二人は私の方が背が高いからか彼らの方がかなり年上なはずなのに弟のような存在である。
「…何故ここへ来た?何か噂でも聞いたか?」
牛鬼が何かを察したように聞く。
「知ってるだろ?リクオがここへ来るって」
私がそう言うと私に抱きついていた馬頭丸、そして少し離れたところにいた牛頭丸はぴくりと反応する。
「何をしようとしてるんだい?まあ牛鬼、あんたは頭は悪くないから変なことをしようとしてるわけじゃあないだろうけどねえ」
「それを知ったところで貴様は我らをどうする」
「さあ?裏切り者であろうがなかろうが私にゃ関係ないね。怪我したくないから傍観しとくさ」
痛いのは嫌だからね。
「昔から変わらんな」
「それは父さんのことを言っているのかい?」
「お前もジンもだ」
フッと牛鬼は一瞬笑った。
牛鬼が何をしているかは分からないけど今日、奴良組は大きく動くだろう。
20140205