噂話

□お初にお目にかかります
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ふわり、と塀を乗り越え地面に降り立つ。
この場所に来るのは久しく懐かしい。残念ながら私自身がここに来るのは初めてであるが。

私は噂を流す妖怪。

だから情報というのは大事なものである。噂を流すにはその元となる情報が無くては。
そのため代々記憶が受け継がれ、私自身はここに来たことがなくても懐かしいと思ってしまう。


「何者だ!ここが何処だが分かっているのか!」

「奴良組だぞ、礼儀をわきまえろ!」


私が敷地に入ったことにより、近くにいた妖怪たちが騒ぎ出す。

そう、ここは奴良組だ。

二代目に息子が生まれたということでまだ祝宴の名残が残っているように見受けられる。


「ククッ、そんな騒ぐな。私は敵じゃあない。ただ、二代目に息子が生まれたと聞いてねえ…祝いに来ただけだ」

「そうか…っていやいや!お前、奴良組じゃないだろ!信用できるか!」

「おやおや、酷いねえ」


こっちは武器だって持っていない(正確に言うと護身用の短刀ぐらいは持っている)のに…。
悲しくなるよ。


「なんでい、やけに騒がしいな」

「総大将!!」


声の下方を見るとそこには奴良組の総大将、その人がそこにいた。

ああ、私の記憶と同じだ。私は彼と昔からの知り合いであったような気になる。それは父の記憶があるせいだけだが。


「こんにちは、ぬらりひょん」


そう言って自然な動作で礼をする。

顔をあげると驚いた顔をしたぬらりひょんがいた。


「おうおう、懐かしいじゃねえかジン…いや、違うなジンの子か?」

「ジン、そう私の父はジン。覚えていただいていたようで光栄だ」

「ジンはワシの百鬼夜行に誘ったんじゃが逃げられた。だから忘れられん。ところでお前さん名は?」

「サツキと申します。以後お見知りおきを」


そう言って再び礼をするとぬらりひょんはくつくつと笑い出した。


「そっくりじゃのう…その振る舞いといい喋り方といい」

「我々は記憶を受け継ぎますから。似るのでしょう」

「ジンは元気か?」

「ええ、今頃は母と山奥でのんびり暮らしているでしょう。あのバカップルめが」

「そうかそうか」


私の言い草にまたクツクツと笑うぬらりひょん。

そうそう、私の用事は彼ではない。





20140205
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