小説部屋2

□喧嘩するほど仲がいい
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《3月某日・某撮影スタジオ》


蓮「事務所や空さんのチャンネルには出たことあるけど…アイドルグループがやってるYouTubeチャンネルに出るのは初めてだね」

唯「薫はどうだ?」

薫「テンションハイだぜっ国民的アイドルグループの今を担ってるメンバーたちが出演するチャンネルだろ!?興奮しないわけないじゃんか‼」

唯「相変わらずテンション高いなぁ〜…けどチャラ男感はあまり出さないようにな。あそこにいる岡田奈々ちゃんはクソ真面目って言われるくらいの子だから…」

蓮「確かに…ある意味薫との相性は最悪かもね」

薫「この業界は真面目すぎると損しかないぜ、時にはずる賢く立ち回るのも生き抜いていく上でのスキルだ」

唯「いやそれはわかってはいるけどあの子はそういうとこが許せないタイプなんだよ、だからくれぐれも問題ごとだけは起こさないようにね?」

薫「まぁ善処はするよ」

蓮・唯「「(本当に大丈夫だろうか…)」」


この日…キンプロ8期生である蓮と唯…そして薫の3人は東京都内にある貸しスタジオにいた

そう…本日は最近YouTubeの活動を始めた村山彩希・岡田奈々・茂木忍・向井地魅音の4人が活動している”ゆうなぁもぎおん”チャンネルの撮影日なのである

今回の撮影内容はキンプロの若手組である8期生の3人を招いてのトーク企画、だが薫はAKBメンバーとはお初なため若干チャラ男なとこがある薫と妙なもめ事が起きないか…同期の蓮と唯は不安でいた

そんなことを考えていると撮影の準備ができたらしく、3人は彩希・奈々・忍・美音が待つソファーの方へと移動した


美「じゃあ始めますねっ…開始まで5…4…3…2…」

彩「ゆうっ」

奈「なぁっ」

忍「もぎっ」

美「おんっ」

彩・奈・忍・美「「「「ゆうなぁもぎおんチャンネルゥゥ〜〜ッ‼」」」」

蓮・唯・薫「「「いぇぇぇ〜〜〜〜いっ」」」

美「あれっ今日はなんか人が多いですね!」

忍「ほんとだっどこからお越しになったんですか?」

唯「いや君たちが呼んだんでしょっ呼ばれたから俺らここにいるんだよ‼」

彩「はいということでっ本日はゲストが来ております…ではお三方っ自己紹介をお願いします‼」

薫「…かおっ」

蓮「れんっ」

唯「ゆいっ」

薫・蓮・唯「「「どうもかおれんゆいと申しますぅぅ〜」」」

奈「いやいきなりパクらないで下さいよっそれ私たちオリジナルなんですから‼」

薫「えっ駄目なの?」

奈「駄目です‼」

薫「……まぁということで」

奈「無視されたぁ‼」

薫「改めましてキングダムプロダクション…略してキンプロの8期生っ二宮 薫です‼」

蓮「YouTubeをご覧を皆さん初めましてっキンプロ8期生の神谷 蓮です」

唯「どうもっ同じくキンプロ8期生の如月 唯でございます」

彩・奈・忍・美「「「「ようこそお越しくださいました‼」」」」

”パチパチパチパチッ”

美「いやぁ〜蓮くんに唯くんっお忙しい中来てくれてありがとう」

蓮「いえいえっ皆のお力になれるのであればこれくらいどうってことないよ」

奈「あぁ〜…相変わらず良い子だね蓮くんは♪」

唯「奈々ちゃんっもう妻子持ちなので!」

奈「うぐぅっ…」

薫「何々っ奈々ちゃん蓮のこと好きだったの!?どういう経緯でっどういうとこが好きになった切っ掛けだったの!?」

奈「しょっ初対面の人にそこまで言う必要はないですよ‼」

薫「いや普通に気になったから質問しただけで…」

奈「ノーコメントで!」

薫「……っ」

唯「(あぁ〜…やっぱこうなるよね)」

蓮「(雲行き怪しくなってきた…)」


撮影が開始されしょっぱなから持ち味のトーク力で場を広げようとする薫、だがやはり奈々との相性は悪くどこか歯切れが悪い感じになってしまった


美「そっそういえば薫くんとはお初でしたよね!」

薫「へぇっ…あぁ〜そうだねっ蓮や唯たちから話は聞いてはいたけど、こうやって実際に一緒のお仕事は初だね」

忍「どうですかっ初見で現AKB48のメンバーを見た感想は?」

薫「皆めっちゃ可愛いに尽きる‼だからこそ蓮と唯が羨ましく思うっこんなに可愛い子たちと一緒にお仕事できてるなんて…唯に至ってはHKT48だっけ?それの公式お兄ちゃんでしょっ同じ男として憧れるわぁ〜」

唯「あぁ〜…はははっ…そうかっ大変なことの方が多いぞ」

薫「んで蓮は川栄李奈さんっていう可愛い奥さんを貰って子どもまで出来て……ほんとう羨ましすぎる‼もう泣いちゃうくらい羨ましすぎるよ‼」

蓮「まぁ〜…ねぇ…僕の方も大変なことはあるよそれなりに」

忍「凄く勢いのある方なんですね…私たちも圧倒されてますよ」

彩「普段からそんな感じなんですか?」

薫「勿論っまずは自分を知ってもらうためにはさらけ出していかなきゃいけないと思ってまして!」

唯「ノリがこんな感じだから色んな人と仲良くなりやすいんだよね、だから芸能界でのパイプは8期生の中では一番かってくらい持ってるんだよ」

薫「この業界やっていくには周りを巻き込む勢いと…賢く立ち回れるずる賢さっこれに尽きると俺は思ってるんだよね♪」

奈「……なんか…それってどうなんですかね?」

薫「っ?」

蓮・唯「「(あっ…ヤバいッ)」」


薫の言動に先ほどから静かであった奈々が疑問に思った言葉を発し、その言葉を皮切りに周りの空気が冷たくなり蓮と唯も”やっちまった”と思わせるような顔つきになった


奈「さっきから見てると薫くんは周りのことを全然見てないし、相手が困ってるのに絡んで無理やり場を笑わせようとしていてっ…見てて不愉快だと思った」

薫「……」

奈「何より”ずる賢く立ち回る”っていうのも聞き捨てならない‼私たちもっ…AKBのみんなもっ…その姉妹グループもっ…蓮くんや唯くんも真面目に真剣に取り組んでいるのにっ…そんなこと言ったら真面目に頑張ってる人たちに失礼だよっそうは思わないの!?」

薫「………っ」

蓮「(ちょちょっ…奈々ちゃんヒートアップしすぎだよ!)」

唯「(み〜おん何とかならないこれ!?)」

美「(いやいやいやっこれを仲裁する力は私にはないって!)」


真剣な眼差しで薫の言動と発言に対し意見を述べた奈々、そんな修羅場を残りの5人はどうしたらいいかと悩みアタフタしていた……そんな中っ奈々の言葉を聞いていた薫が口を動かした


薫「……別に俺は真面目に頑張ってる人たちをバカにしてるわけじゃない。実直に取り組むことは大切だし努力を怠るのは応援してくれてる人に失礼だし自分自身をも軽蔑してることだ。ただ真面目に頑張れば全てが叶う訳じゃないっ世の中は残酷だし夢を見てるだけじゃ芸能界のような世界じゃ生きていけない…それは奈々ちゃん自身もわかってることだよね?」

奈「そっそれは…」

薫「自分を見てもらうには…卑怯だと言われてもその方法をとらないといけない時だってある。売れてしまうとその時の気持ちとか忘れがちだけど…俺はそれを忘れたくないっだからあの言葉は…苦労していた時の自分を労う意味でもあったんだ、だってその時の自分を忘れたら…辛く苦しんでた時に応援してくれた人たちのことを忘れてしまうことにもなるから」

奈「………」

薫「俺のことが嫌いだって言うならそれでも構わない…けど俺はっこの信念だけはどんなに偉い人に言われたって変えるつもりはないから」

奈「……っ」

美「……いっ一回カメラ止めましょうか?」

忍「そうしようそうしようっ」

薫「っ……蓮…唯…さっきはごめんっ」

蓮・唯「「……」」

薫「みんなもごめんね…不快な思いさせちゃって」

美「いっいや私たちは別に‼」

薫「……撮影は俺無しでやってくれ。俺がいると奈々ちゃんが笑顔になれないっぽいからさ……それじゃっ先に帰るね」


薫はそれだけ伝えると自身の荷物を持ち、残った6人に軽くお辞儀してスタジオを後にしたのだった


奈「………」

彩「かっ…薫さん放っておいていいんですかね?」

蓮「いま連れ戻しても場が改善するわけじゃないし…取り合えず後でマネジャーさんには連絡しておくよ」

唯「み〜おんっ撮影の予備日ってある?」

美「あっ一応あります」

唯「じゃあ撮影はその時にしようっ今日は取り合えずこのまま解散にしたほうがいい」

美「わっわかりました」

奈「……ごめんなさいっ私のせいで…」

唯「まぁ奈々ちゃんの性格じゃ薫の言動に疑問を持つのは仕方ないことだよね、けど誤解しないでほしいんだっあいつは見た目や言葉遣いこそチャラいけど…本当は誰よりも努力家で他人を思いやれる優しい奴なんだ」

奈「……っ」

蓮「薫はね…僕たち8期生の中じゃデビューが一番遅かったんだ。役者としての能力は僕たちと同じくらい高かったんだけど、当時の世間や上の人たちが僕と唯を推し過ぎて薫の存在が陰に隠れちゃって…」

唯「それこそ当時の薫は今の奈々ちゃんみたいにド真面目で努力家だったんだけど……どんなに頑張って努力しても誰も自分を見てくれない現実に心が病んでね、それくらいのタイミングだったかな〜…あいつが今のキャラにシフトしたの」

奈「それで…どうなったんですか?」

唯「最初は”騒がしい奴だな”くらいな感じで認知されたけど、そこから薫のキャラがテレビで受けて色んな番組に呼ばれるようになったんだ」

蓮「それが切っ掛けで過去に薫が出演したドラマや舞台が評価されて、役者としての仕事も増えて”主演ドラマや映画に出る‼”っていう目標を持てるまで元気になったんだ」

忍「そんな過去が…薫さんにあったんですね」

唯「普段はそれを悟られないようにキャラで誤魔化してるんだよ、あいつ同情とかお情けを貰うのが一番嫌いでね。現にここまで這い上がってこれたのはあいつ自身の努力と皆に自分を知ってもらいたいっていう気持ちだったんだよ」

奈「………っ」


蓮と唯の口から伝えられる薫の過去、それは同じくアイドルとして…芸能界で戦っている奈々たちの心にも強く響いていた

そして奈々は…そんな薫に対し生意気なことを言ってしまった自分を責め、目から大粒を涙を流すのだった


奈「私っ…薫さん…にっ……なんてっ…酷いことをっ……」

美「奈々さん…」

唯「これで薫のこと…少しはわかってくれたかな?」

蓮「価値観とかは人それぞれだから仕方ないと思うけど…少なくとも薫はみんなのことをバカにするような人間じゃないからっそこは理解してね」

奈「……っ」



 
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