絆創膏と高熱

□待たされた男
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「あれ、逢坂君。早いね」
予定の時間より少し早く着いた俺に、時間ぴったりで来る久島。
髪や眼鏡はそのままだが、服装自体のセンスは悪くないのか、大学内に比べて少々マシに見える。
少し小走りで来た彼が、すぐ目の前で躓くのはいつも通りだ。




そんな彼には、どうしても仲良くしたい女の人がいるから、それを手伝ってほしいと言われた。
言葉足らずだが、彼の言い分はまぁ、恋愛関係として仲良くなりたい女性がいる、ということなのだろう。
まぁ、結局は酒という言葉に惹かれた俺だが。



「え、ちょ」
「やっぱり度入ってねぇな」
近づいた久島から奪った眼鏡。
透かして見ても、ただのくもりガラスのようで、眼鏡としての機能はない。


「返してって、逢坂君」
久島よりも頭2つ分ほど背が高い俺に、彼が眼鏡を取り返そうと手を伸ばす。
が、俺は簡単にそれを返さず。
だけど、そんな彼と目があった瞬間に彼が勢いよく目を放す。



「あんた、もしかして」
その言葉にびくりと肩を揺らした彼は、目線をそらしたまま。
俺はそんな彼の頬を両手で挟んで自分のほうを向かせる。



「人と目、合わせれねぇのかよ」
驚いたような表情になった彼だが、すぐに目をつぶっては何度も頷く。

「ふーん」
「な、なに。逢坂君なんか怖いよ」
そのまま彼の頬をつぶしては、これからのことを考える。



「ちょっと来い」
彼の手を放して、電話を掛ける。
もちろん、眼鏡は返さないまま、足を進めて彼との距離をとった。




相手に手短に用件を伝えて、振り向くと下を向きながら多くの何度も人にぶつかっている彼。
俺は溜息を一つついて、彼に近づくとその腕を取るとそのまま早足で歩きだす。



「え、逢坂君。お店はこっちじゃなくて」
「いいから」
それからは彼の話も聞かぬまま、眼鏡がないせいか前が見れず大人しい彼を、そのまま上を引き連行した。




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