四季彩回路

□Story4-1
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家に帰りたくない、切花は六限の今日最後の授業の合間にふと思った。特別嫌なことがあるわけでもなく、なんとなく、そんな気分なのだ。
何時もの通り警戒心を持つ先生を視界の端に、今日は帰らないから何をしようかと切花はノートの端に書き留めた。

放課後になるとまるで保護者のような水生を振り切って、もう暗くなった校内を思い思いに歩き回る。

「ここまで来るのは久しぶりね」

呟くと静かな校内に声が響いた。足音、息、わずかな音を拾って耳に伝わる。
普段は来ることのできない普通の教室棟の廊下を歩いて辺りを見回すと、水生や椿、陽平の教室を見つけた。
覗いてみると自分のいる教室とは違い、机が並び足の踏み場は机と机の間を横になって歩くくらい狭かった。だからこそ、覗くことしかできなかった。

管理棟に入ると懐中電灯の光が見えて、切花は慌てて隠れる。警備員が巡回をしているのだろう。柱の物陰に隠れたはいいものの、警備員の動きが見えなくなってしまい、近づく足音に目を瞑って切花は運に任せた。
懐中電灯の明かりが目の前に来た瞬間、ぐいと服を思い切り引っ張られ後ろによろけた。

「…っ、!?」
「誰かいるのか?」

警備員の警戒した声が響く。もうダメだと覚悟を決めると、目の前には一人の人が立っていた。

「警備員さん、巡回お疲れ様です。」
「あぁ、生徒会長さんでしたか。お勉強ご苦労様です。」
「いえいえ、下の戸締りはいつも通りで」
「わかりました。」

警備員は頭を一つ下げてその場を去った。
目の前にいたのはこの学校の生徒会長だった。
目の前に立っている生徒会長は切花の方に振り向く。少ない光に当てられてその人の顔が切花にはよく見えなかった。
生徒会長は警備員が何処かに行ったのを見計らうと小さめな声で「こっち」と言って歩き出す。着いていかなければならないような気がして切花は何も言わずついて行くことにした。
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